第11話 ロボットと反抗期少年 序
第十一話 ロボットと反抗期少年
エディーとは少し仲良くなってきた時分のこと。事件は起きました。
「ああもうっ。なんでこんなことになっちゃうかなぁ」
エディーは頭を抱えていました。
「どうされました?」
「チャーリーのカバンにこんなものが」
エディーが持ってきたのはぐちゃぐちゃに汚れたノートでした。
「それはどういう内容なのでしょう」
「問題はそこじゃないよ。ほら、ここ。靴の跡がついてる。チャーリーはドジったとしてもノート踏みつけてそのままになんてしないよ」
「まさか……」
私が目配せするとエディーは頷きました。
「僕の取り越し苦労だといいけど」
「えぇ、そうですね」
しかし疑惑の種はそれ一つでは終わりませんでした。それから少しして、チャーリーが運動着のまま帰ってきたのです。チャーリーは何も言わずに部屋に行ってしまいました。私は後を追いチャーリーの部屋のドアをノックしました。
「チャーリー、入りますよ」
返事を待たずに部屋に入ると、ベッドの上で布団を被ったチャーリーが見えました。
「チャーリー、制服どうしたんですか?」
「汚れたからクリーニングに出した」
「お代は?」
「払ったよ」
「まあ、それじゃお小遣いなくなっちゃうでしょう。立て替えますよ」
「ん」
チャーリーはカバンからぐちゃぐちゃになった領収書を取り出しました。領収書じたいにおかしなところはありません。私はケイスケさんから一定額のお金の管理を任されています。その中からクリーニング代を出しました。お金を渡そうと部屋に戻ると、チャーリーは部屋着に着替えていました。
「その、明日は何着ていくんですか?」
「冬服で行くから平気」
「冬服って、もう暑いですよ」
私がしつこく詮索したので、チャーリーを怒らせてしまったようです。
「うるせえ、もう出てけポンコツ!」
ドアを鼻先で閉められてしまいました。
「これはまずいのではないでしょうか」
私の報告を聞いたエディーは真剣な表情で言いました。
「僕もそう思う」
***
次の日、チャーリーは何事もなかったかのように冬服で学校に向かいます。私はこっそりあとをつけました。もちろんエディーには相談してあります。
このあたりでチャーリーの通う魔法学校について説明しておきましょう。
王国にはもともと魔法使いと呼ばれる人々がいましたが、彼らはお互いに知識を共有することはなく、てんでバラバラに生活していました。しかし魔王との戦争にあたり、魔法使いの力を結集する必要性が高まります。そこで当時の国王が、魔法使い達の知恵を集め、強い魔法戦士を作るために設立したのが魔法学校です。
この世界に住む人間はみな多かれ少なかれ魔力を持っていますが、魔法戦士の軍隊を作るには魔力の多い人間を選抜して鍛える必要があります。
魔法学校を卒業した魔法使い達は魔王との戦いで偉大な功績をあげ、戦後の魔法学校は国を率いるエリート養成校となっています。誰でも入れる学校ではないので、貴族にとって子女を魔法学校に入学させることは、家の名誉をかけた戦いでもあります。塾に通わせたり家庭教師をつけたりする正攻法はもちろん、賄賂だの替え玉だの裏口入学させる親もあとを絶たないのだとか。
ケイスケさんはそのあたりに無頓着ですから、チャーリーは実力で魔法学校に入学した優秀な生徒といえるでしょう。戦後は魔法学校を出た生徒の就職先も多様化していますし、未来は明るい……はずなのですが。
その学校で何か起こっているのですから、放っておくわけにはいきません。
登校中のチャーリーに話しかけてくる人物がいました。
「ようチャーリー、元気してる?」
魔法学校の制服を着た少年です。年齢は十四歳から十五歳ぐらい。十四歳のチャーリーの、同級生もしくは先輩でしょう。チャーリーが着ている冬服、つまり黒のローブに円錐形に広いツバの帽子、ではなく、半袖シャツにハーフパンツ、ベレー帽という夏服を着ています。黒髪に切れ長の瞳なので、おそらく転移者の子どもでしょう。
「おはようケン」
とチャーリーは返します。友人のようです。
「お前なんで冬服なんだよ。特別クラスは礼拝でもやるわけ?」
「なんでもいいだろ」
「なんつー冷たい反応。まあいいや。お前最近付き合い悪いじゃん。今日こそ遊ぼうぜ」
「嫌だ」
「即答かよ」
「こないだお前らと遊びすぎて師匠に怒られたんだよ。期末考査も近いし。考査終わったら遊ぼうぜ」
「真面目かよ」
「真面目だよ」
口が悪いのは家庭内と変わりませんが、ケン少年とチャーリーは良好な友人関係にあるようです。私は少しだけ安心しました。チャーリーは学校で孤立しているわけではなさそうです。チャーリーのいう師匠とはチャーリーが通う道場の先生のことです。
しかしケン少年の言っていた特別クラスってなんでしょう?どうやらケン少年とチャーリーはクラスが違うようですが……。
「チャーリー今週の部活はくる?」
「それは行く」
「りょ。じゃあまたな」
二人は学校に入ると別れてしまいました。
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