第6章

「ただいまー」

「おかえりなさい——ってお母さんどうしたの?」

「な、なんでもないわよ」

わたし——咲洲夢亜が玄関に行くと姫子にもたれかかるお母さんがいる。

「体調悪い?」

「いいえ。それより早く座りたいわ。力が出ないのよ」

やっぱり体調が悪いんじゃ……。

姫子とのことで気が抜けただけかもしれないけど。

「仲良くなったんですね」

「まあね」

姫子に小声で言う。

「あ、姫子ちゃん。これ洗ってくれない?ちょっと臭うかも」

「?」

姫子から渡されたのは女性用の服。

何度かみたことがあるからお母さんのだと思う。

「うわ、通り雨にでもあたりましたか?びちょびちょですよ」

「ちょ、ちょっとトラブルがあっただけよ」

慌てた様子でお母さんが言ってくる。

「ちょっと臭います。お母さんイカでも食べたの?臭いんだけど」

「ご、ごめんなさい」

何故か謝られた。

「あとこれ」

「?」

姫子が追加で下着も渡してくる。

純白だけどシミが多く湿っている。

「ちょっと濡れてるじゃないですか。あとなんか……」

ネバネバする……。

………あ、まじか。

「これ、お母さんの……汁?」

あんまり親とこういう会話したくないんだけど仕方ないよね。

「………そうね」

「……」

……とりあえず早く洗濯機回そ。

あと手を洗いたい。

人のやつ触ったの初めてだからどう対処すればいいのかわからない。

いつもならトイレに流すけど……。

でも、パンツ履いてやらないからなー。

パンツ脱いでからやるよね普通。

ネットでパンツの中に手を入れてする人もいるけどうーん……。

とゆーかそんなことどうでもいいわ。

「わたし、洗濯機回してきます。姫子さんは後で話を聞かせてもらいます。………お母さんは晩御飯の支度しといてください。手は洗ってください。……お願いしますね」

「はーい」

「はい……」

二人の返事を聞いてから洗面所に向かう。

「どうすりゃいいのこれ?」

汁まみれになった衣服と下着。

このまま洗ってもいけないと思うしとりあえず水洗いだけしとこ。

洗面器に水を溜めて洗剤を流す。

その中に服をつけて布同士を擦り合う。

「あー何やってんだわたし」

親の後処理するなんてわたし以外の高校生やる?

やらないよね。

あとでお小遣いを請求しよう。

「よし、これでいいかな」

洗ったものを洗濯機に入れて電源スタート。

「姫子さんに話聞くか……」

二人のホテル事情は聞きたくないからそのほかを徹底的に聞こう。

それ以外は聞きたくない!

リビングに行くとキッチンで二人がいちゃついている。

「……」

「ちょ、やめなさいよ姫子」

あんたがやめろよ。

「大丈夫。夢亜ちゃんにはバレないわよ」

バレたらはボケ。

「姫子……」

「香澄……」

二人がわたしの前でキスしようとしている。

どうしよっかな……。

ここで止めるのもいいけどそれはなんか悪い。

あ、あれしちゃお。

わたしはポケットからスマホを取り出して二人の姿を撮る。

「!!」

「!?」

「この写真、待ち受けにでもしようかなー」

二人がキスしている写真を見せる。

「話、聞かせてもらえますか?」

わたしはにっこり笑って姫子に向かって手招きする。

元々話を聞くつもりでここにきたからね。

「はい……」

「あ、そうだ」

わたしは振り返ってお母さんに言う。

「姫子さんのこととっちゃいますからね。ね?姫子さん?」

「は、はあ!?」

姫子にウインクしてリビングから出る。

「ま、待って夢亜ちゃん」

「なんですか?」

慌てた様子で姫子がわたしのことを止める。

「え?夢亜ちゃんわたしと何する気?」

「はあ……?」

何する気ってこの人……。

「別に何もやりませんよ。ちょっとからかっただけです。あ、でも」

わたしは姫子のスカートに手を入れて

「これくらいはしちゃいますね」

「!!」

姫子のパンツの中に手を入れて敏感な部分に指を入れる。

「姫子さんって攻めしかやったことないから守りに疎いんじゃないの?」

わたしは指を入れたまま左右に揺らす。

「あ、やめ……んん!」

姫子の足がガクガクと震えてその場に崩れ落ちる。

「ふふ。さぁお母さんのとこに戻りましょ?ほら立ってください」

「ゆ、夢亜ちゃんの意地悪……」

スカートに大きなシミができて恥ずかしそうにする姫子。

「大丈夫ですよ。バレませんよ〜」

「それフラグでしょ!?さっき学んだわ!」

「それは残念。でも着替えたらバレちゃいますよ?それとカフェに着て行ったGパンどこにやったんですか?洗濯したいんですけど」

渡されたのはお母さんの服だけで姫子の服は一つもなかった。

「ああ、それなら——」

「?」

姫子が気まずそうに言う。

「香澄が家宝にするって家に置いてきたのよ。このスカートも香澄のだし」

「ああ、なるほど」

ここにくる前に一回家に行ったんだ。

……何やってんのかと人たち。

怒るとか以前に失望の方が強い気がする。

何か家宝にするって。

子供じゃないんだから……。

大体同じ家に住んでいるわたしのこと考えてよ!

洗わずに臭いとか充満してたらどうするの!

ああームカつく。

「ゆ、夢亜ちゃん……?」

姫子がわたしの顔を覗く。

「……やっぱり着替えずに戻りましょう?」

わたしは笑ってリビングに戻る。

姫子も渋々といった感じで後をついてくる。

「お母さん、ご飯できた?」

「ええ。姫子どうしたの?スカートが濡れてるじゃない。水でもこぼしたの?」

「な、なんでもないのよ。なんでも……」

リビングに入って早々にバレてしまい戸惑う姫子。

「そ、それよりもご飯にしましょう?」

「はーい。じゃあ夢亜、お皿出してくれる?」

「わかったー」

わたしは戸棚にお皿を取りに行く。

「夢亜にやられたの?」

通り過ぎる瞬間、お母さんが姫子にそう言った。

「うん」

姫子も頷いている。

「姫子さーん。こっちにきて手伝ってくださいよ」

これ以上話されると困るから姫子を呼ぶ。

「はいはーい」

姫子は笑顔でこちらにくる。

「これ、持っててくれませんか。そうしないとお皿取り出せないんですよ」

「わかったわ」

姫子に食器を持たせてわたしは少ししゃがむ。

「?」

「お母さんと密会するなんてダメじゃないですか。悪い子にはお仕置きしちゃいます」

「!?」

「おかあさーん」

「はーい」

まずいっと言った顔姫子が動揺する。

でも、手には食器があって何もできない様子。

「姫子さんもらっちゃうね?」

「「!?」」

わたしは姫子のスカート中に顔を入れてパンツの中を舐める。

「……んぅ!」

姫子の足が揺れて顔に熱いものがかかる。

「ちょっと夢亜!」

外からお母さんの声が聞こえる。

「わたしのファーストキスは高いんだから」

わたしは一人で呟いた。

姫子の一番はお母さんでもわたしの一番は姫子なんだから。

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家政婦JKと乱雑OL クラウン メアリー @Takeru339

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