第2話

「とりあえず掃除はじめますか」

姫子からのキスで色々考えちゃうけど体を動かせば意識することもなくなるだろう。

「まずは……」

床一面に脱ぎ捨ててある服を洗濯しようかな。

カッターシャツに下着、ネグリジェと呼ばれるような服など沢山ある。

カッターシャツとかのシワとか手遅れじゃない?

出来るだけ綺麗にしたいけど一週間とか放置されてたらクリーニングに出してギリいけるかだと思うけど……。

とりあえず選別したいから籠とかないかな?

廊下に出てお風呂場を探す。

リビング以外に部屋は四つあるらしい。

一つはトイレ。

二つ目は姫子の自室。

三つ目は空き部屋。

四つ目はお風呂場となっている。

洗濯が終わったら他の部屋も掃除をしにいこう。

埃っぽかったからね。

「あ!籠あるじゃん!」

お風呂には新品そうな籠が三つほど積み上げられている。

「全然使ってなさそう。あの人の性格からして自分から買わなさそうだし会社の景品とかでもらったのかな?」

洗濯しない人が洗濯籠なんていらないからね……。

「ま、今からわたしが使うんだから丁度よかったけど」

籠を持ち上げてリビングへと運ぶ。

とりあえず水洗い、乾燥、その他って感じで分けていこう。

「にしても服多すぎない?洗うくらいなら買うって感じ」

まさか一日過ぎてくごとに一枚服が増えるなんてことがあるのか?

あの人ならあり得る。

だって金銭感覚がバグってたもんね。

一日で五万円とか生活費払うとか……うう。

考えただけでクラクラしそう。

「よし。仕分け完了。あとは順番に洗濯してけばいいよね」

うわ……重過ぎ。

一つでお米二袋分くらいありそう……。

部活とかに入っていない影響で筋力には自信がない。

家事とかしてれば自然に少しはつくもののこんだけ重いものが持てるかは別。

食材を買ってもこれだけ重くなることはない。

「んしょっ……ふぅ」

お風呂場に持っていき洗濯機を開ける。

洗濯機もでかいな……。

ここにあるもの全てが高級品だと思う。

なんかの社長さんなのかな?

「洗剤は……。あ、これこれ」

流石に洗剤は家庭でよく使われているものだ。

「ここに入れて……。よし!回しちゃお」

起動と書いてあるボタンを押す。

他のやつは今日中にはできないと思うからまとめて隅に置いておこ。

「次はリビングの掃除かな。キッチンで夕食作っておきたいから綺麗にしないとね」

何作ろっかなー?


「ふぅ。ちょっと刺激が強かったかしらね」

夢亜ちゃん可愛いすぎるよ。

夢亜ちゃんのお母さん——咲洲香澄先輩の子供だから覚悟はしていたがまさかあんなに可愛いなんてね。

「少しやり過ぎちゃった」

今度からは気をつけないと。

それにしても仕事飽きたわ。

資料を読んでハンコを押す。

たまに秘書の立花香織が来てくれるけど取引相手との会議とかで疲れてしまう。

「はぁ……。社長あからさまに嫌そうな顔しないでくださいよ。まだ一時間しか経ってないんですよ?」

「だって〜。会議とかあったら時間なんて関係ないのよ。ただただ疲れるのよ。わたしの笑顔はあんなおっさんたちに振る舞うためにあるんじゃないのよ。香織ちゃん遊びましょう?」

「ダメです。仕事してください。家政婦さんまで呼んだんですよね?仕事のためじゃないんですか?」

「それもあるけど……。うわー!もうやめた!」

「ちょっと社長!」

わたしは香織ちゃんに抱きつく。

ふうー女の子っていい匂い。

「やめてください。怒りますよ?」

「うー」

香織ちゃんがわたしのことを剥がす。

もっと抱きつきたいのにー。

「わたしのことは忘れちゃったの?香織?」

「きゅ、急に呼び捨てはやめてください。あと、忘れてはいませんよ姫子様。また……いえ。なんでもないです。仕事しましょう。今日はあと二回会議がありますからね」

「ふふ。楽しみにしておくね。口内炎には気をつけてね」

「会議が楽しみなんて社長も変わりましたね」

次は舌以外にもいろいろ噛んじゃお。

久しぶりしたくなっちゃうなー。

「あの子とも会いたいけどね……」

でももうあの子とは会えない。

わたしがあの時を壊したから。

「社長!何ぼーっとしてるんですか!」

あ〜可愛い子猫ちゃんがわたしのこと呼んでるわ。

「ごめんね香織。今日はこれだけで許してくれるかしら?」

わたしは香織の口にキスをする。

「んっ。しかたないですね。今日は我慢してあげますよ」

香織は恥ずかしそうに頰を染める。

「ふふ、可愛い子。彼氏がいるんじゃないの?」

「あなたがわたしの一番なんですよ社長。あなたの一番はわたしじゃなくてもです」

わたしはもう一度香織にキスする。

「んー!仕事のやる気が出てきたわ。ありがとう香織ちゃん。資料持ってきて」

「はい!」

香織は社長室を出て資料をとりにいく。

「ふふ」

わたしは窓の外をみる。

「夢亜ちゃん頑張ってるかな……」

わたしも頑張らないとね。

「社長、資料持ってきましたよ。それと一時間後には会議がありますのでそちらにも目を通しておいてください。今日は午後はの出勤でしたからたくさん溜まってますよ」

「はーい」

久しぶりに仕事をするのも悪くないわね。


「ただいまー。疲れたわ……」

「おかえりなさい姫子さん。ご飯とお風呂どっちにしますか?」

「夢亜ちゃんにするー」

「その選択肢はありませんから」

わたし(咲洲夢亜)は姫子に呆れてしまう。

全くこの人は……。

昼間といい人との距離が近すぎると思う。

「姫子さん、ご飯でいいですか?わたし、よそったら帰りますからね。お風呂は沸かしてあるから好きな時間に入ってください」

「ありがとね夢亜ちゃん。遅いから送ってこうか?」

「そこまでしなくていいですよ。それより次はいつこればいいですか?」

洗濯とかまだ残ってるからやりたいんだけど。

あとは部屋の掃除もしたい。

「明日も来て欲しいわ。夢亜ちゃんの料理が食べたいの。夕飯お願いできる?」

「わかりました。何か食べたいものとかありますか?」

「んー夢亜ちゃんの得意料理がいいな」

わたしの得意料理ねー。

「わかりました。定番ですがカレーでもいいですか?」

「うん。今日のお給料は明日でもいいかな?」

「大丈夫ですよ。あ、料理が冷めてしまいます」

わたしはリビングに向かってコンロの火をつける。

「廊下といい綺麗になってるわ。ほんとに時給千円でいいの?勿体無いわよ」

わたしの後に続いて姫子もリビングに。

「十分ですよ。姫子さんはお箸出してください。どこにあるかわかんなくて」

「はーい」

ご飯とお味噌汁をよそう。

「今日のメインはカニクリームコロッケです。野菜も食べてくださいね」

大皿に千切りにしたキャベツとカニクリームコロッケをのせる。

「わぁ!すごいよ夢亜ちゃん!家でも作れるんだ」

「レシピを見れば誰でも作れますよ。今度作ってみますか?」

「え!いいの?夢亜ちゃんと一緒に料理したい!」

喜んでいる姫子が犬に見える。

耳と尻尾が生えてたらさぞかし可愛いだろう。

「そのときはまたカニクリームコロッケを作りましょう。あ、そろそろ帰りますね」

エプロンを脱いで鞄にしまう。

「今日はありがとね。学校とかは大丈夫?」

「今は冬休みなので問題ないですよ」

「いいわねー冬休み。わたしの会社はクリスマスパーティーが終わってからだわ」

「え!いいじゃないですか。パーティーとか行ったことないから少し憧れます」

「そう?それなら参加してみる?ドレスならオーダーメイドで作ってもらうから。明日測らせて」

「ええ!?わたしなんか呼んでも大丈夫なんですか?」

「大丈夫よ。連れは何人いてもいいんだから」

そんな他愛もない話をしてわたしは姫子のマンションから帰る。

明日も頑張らなくちゃね。









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