第18話:なぜ人は挫折するのか ①

“挫折”というのは誰にも起こりうる事なのだが、人によって挫折をしたときに感じる深刻さの度合いが異なるため、第三者から見たときに周囲は“そんなことを深刻に考えなくてもいい”と自分の基準で相手に言葉を投げかけてしまうことが多い。


 しかし、それは“自分の価値観”を相手に押しつけているだけに過ぎないのだ。


 私は人が挫折するときにはある傾向があると思っている。これは年代によっても挫折の程度や頻度は変わってくるし、その人が育ってきた状況でも変わる。


 まず、第1に“幼少期からの理想像の構築”が挙げられる。


 これは、現代における親の子育て論と教育論、子供本人の人生観などそれぞれが持っている価値観を総合して考えることで、親からすると“こういう子供になって欲しい”という親の理想が、子供からすると“こういう大人になりたい”という自分の理想と人生設計を考えるきっかけになる。


 そのため、その人生設計に必要な挫折はその理想を掴むために必要な体験であり、その経験がその理想にたどり着くためには必要な事だということになる。


 しかし、成長するにつれて挫折することが当たり前になる事で、今まで経験したことがない挫折を味わったときに立ち直れなくなってしまうことや塾などの自分自身と同じ目標に向かっている人がいる集団に入ると周囲と他者比較をする習慣がついてしまい、以前のように挫折することが恐くなる子供も多くなる。


 そして、塾などでは子供たちの成績を順位やクラス分けをするなどその子の学力を“数字”で評価し、クラスという“選別行為”で追い詰めることになる。


 これは何を意味しているかというと“成績で子供たちを選別し、必要な数字を求めてお互いに競争させる”というどこか今の日本における“競争社会”や“実力社会”の構築とこれらを用いた“学歴社会”の序章を作っているような印象を持つ。


 そして、相手が求める力量を持つ人だけを集まった人の中から選び、そうではない人には現実を突きつけて挫折させてしまう。


 私はこれを“アカデミック・パーソナル・チョイス”と呼んでいる。


 このような行為が今まで行われてきたことで本来の労働力を減らし、自分たちの理想に近づけるために自分たちが求めている能力の人を囲い込む事が“効率性”や“生産性”を考えた時に正しいと思えているのだ。


 そのため、企業などで人手不足や大量離職が起きたときもその減数に対して必要な人材が入って来ない事が定常化していくことで既存の労働力が疲弊してしまうことも十分に考えられる。


 そして、今の社会において“効率性”や“生産性”を重視することは会社を成長させる事にも繋がるという企業における価値観も定常化しており、これからの時代にこの価値観が適切な方向に導くかはどれだけ社員など同じ職場で働いている人たちを大切し、どれだけ大切に育てようとするかにかかっていると思う。


 その理由として、昨今の社会情勢の変化により、①失職もしくは解雇・②不当解雇などの法令違反行為経験者の増加・③働くことに対する価値観の多様化などの個人の労働に対するイメージが以前とは全く異なった方向に進んでいるケースや昨今の社会情勢の変化により、企業などに属している場合は就業規則もしくは就労規則などに抵触しない範囲で新たに副職・副業やダブルワークなど本職・本業以外のことを始めるなど個人の働き方も多様化しており、求職者があらかじめ選択肢を増やした状態で会社などに入ってくるケースもある。


 特に①と②は本人たちの置かれている状況や状態にもよるが、相手によっては企業に対する不信感が残っていることや不採用数の増加に伴う自己肯定感の低下など社会復帰や復職するにあたっては不安要素を抱えている場合も多く、長期間の順応期間を設定することや相互関係を構築したのち、そこから研修などを行うなど採用した相手によっては研修の前段階を置いてから研修をスタートさせる、最初に相手から信頼を得るために積極的に交流するなどして“自分たちは君に危害は加えない”という意思表示をして相手を安心させなくてはいけない部分もある。


 そのため、多くの企業においては“即戦力”を求める傾向にあるため、このような休職者を含めた不当解雇やパワーハラスメントなどのハラスメント行為を受けた経験のある休職者や長期離職者などを避ける傾向にある。


 そのため、1度このような体験・経験をした人が社会から弾かれてしまい、“再度働きたい”と思っても再就職のために必死に行っている就職活動などが長期化する傾向にあることで、就職活動中にもかかわらず労働意欲が低下してしまうケースが目立っていることや何度受けても受からないことから自殺未遂や自傷行為など自分で自分を追い詰めてしまう人が増加しているのだ。


 私はこの状況が多くの人が挫折しやすい環境を無意識に作ってしまい、その挫折した人が復帰するチャンスを潰しているのではないかと思っている。


 私自身も数百社単位で応募したが、書類落ちや1次面接落ちなど結果は芳しくなかったし、何度挑戦しても実は結ばず、メンタルをやられて長期間働けなくなる経験をして、その結果として住んでいた家であるアパートを失った経験がある。


 私はこの時、「もう人生が終わった」と思った。なぜなら、仕事も理由不明で失職、就職活動をするも見通しが立たず、家賃は借金をして支払い続けるなど自分が生きている事の意味を理解出来ないほど精神的に追い詰められていたからだ。


その後、まずは治療に専念し、完治したあとは他の人に同じ思い、経験をして欲しくないという思いで新しい一歩を踏み出していきたいと考えている。


 これは企業でも同じ事が言えると思っていて、新入社員が入ってもすぐに辞めてしまうのは相手が悪いのではなく、自分たちに問題がなかったのかを考える必要があると思う。


その理由として、新入社員を含めた勤続年数の若い人が挙げるのは“人間関係”や“業務におけるミスマッチ”などきちんとした関係性を構築出来ていなかったことや求人広告などを就職サイトや転職サイト等に提示した条件や内容と実際の条件と内容が違っていること、採用後の説明会や研修で求める能力などを高く設定されているなど求職者側と企業などの組織における採用者側の認識のズレが人材の流動性を上げてしまい、その事がのちに人材集中ではないが、特定の企業や業種に集中してしまう現象が起きてしまうのだ。


その他にも社内の空気や人間関係に問題がなかったか?コンプライアンスなどに抵触する行為はなかったか?など組織全体と自分自身の行動を見直すことで原因や課題が表面化し、業務改善や風通しの良い職場作りがスムーズに行える。



この意識が1人1人の成長を支え、それぞれの社会における役割を全うできる未来と社会に変わる。

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