第15話:人材選別の深刻化 ③-1

私はこれらを是正するためにも必要なのは適正労働賃金法の新設ではないだろうか?この法律は“各労働形態における適正賃金を基にした基本給の算出および各業種・職種に対する労働係数に基づいた割増賃金や諸手当の支払い義務”など労働者に対する適正な労働環境の整備や労働賃金の適正化を推進する条項を盛り込んだものである。


 この法律は現行の最低賃金法ではカバー出来ない範囲をカバーする法律で、見方によっては“労働者救済法”ともいえる。


 この法律では特定業種における賃金格差を是正するため、一定水準以下の賃金支払いの禁止や不当な契約の禁止などこれまで黙認されてきた部分にメスを入れる。そして、この法律の関連法として“適正契約推進法”を新設し、労働契約書締結前に必ず労働基準監督署の承認をもらうもしくは国家資格として新たに“労務管理官”を創設し、労務管理官の承認を得ることで不当契約や不当賃金での雇用、不当解雇や不当謹慎などの優越性を悪用もしくは乱用した越権行為などを減らす事に寄与できると考える。


 そして、この法律は適用範囲が広く、これまであまり法的には保護されてこなかった人たちも対象となるため、アルバイトやパートの長期・短期、しいてはデイリーワーカーやウィークリーワーカー、マンスリーワーカーなど短期間で働く人に対しても労働権の行使や適正賃金支払いの義務が課されるため、労働者の権利と企業側の権利がほぼ同率もしくは双方で不利益を被らない比率となるため、労務管理などをしやすい労働環境になる。そして、適正に労務管理が行われているかを確認するため、決められた期間内に社員の明細表とタイムカードなどの勤怠記録を労働基準監督署へ転送することになる。そして、転送されたデータを労働基準監督署で精査し、データ内で不当な賃金操作や改ざん、勤怠記録の改ざんなど法令違反に当たる可能性がある場合には発覚した時点で未払い分の支払い命令や未払い給与の支払い不可に関する理由書の提出などの厳重注意以上の処分を受けることになるため、会社としてもごまかすことは出来ない。


 そして、この法律では契約時間を最低限遵守することが求められるため、契約時に双方で締結した労働時間などの時間内賃金は私的都合での早退以外は全額支払いを保証し、時間外賃金は労働基準法の残業手当比率に基づいて支払うことになる。その理由としてネット上の声に“「今日は仕事が早く終わりそうだからあなたたちは早く帰って良い」と言われた。”や“アルバイトだから、パートだからその日の仕事が終わると用なしみたいに扱われた”など不当な扱いを受けるケースや“その時間は目安だから契約違反にはならない”・“あなたたちはバイトだから時間を守る必要はないし、必要な時に必要なだけ使う権利がこっちにはある”という店舗や上司などの優越性が悪用されているケースもあった。


 このように労働基準法では正規雇用と非正規雇用では法的に保証しなくてはいけない義務の範囲が異なり、待遇も正規雇用と非正規雇用では雲泥の差が出てしまっている事で所得格差や社会的信用、家庭イメージなどが起因となる“アンエンプロイド・ハラスメント”(非正規雇用社員もしくは従業員に対しての不当な行為を正当化し、法的に保証されている職権を乱用すること。)や“ソーシャル・ハラスメント”(社会全体から一個人もしくは同じ境遇の人たちに向けて偏見や差別など社会的に許されない行為を行うこと。)・“コミュニティ・ハラスメント”(その人が住んでいる地域や地区など生活圏の近隣住人から不当な扱いやいじめなどを年功序列制度のように一定のグループなどから受けること)など一般的に起こすべきではないハラスメントが起きやすい環境と起因を社会全体が作ってしまっているのだ。


 このように、雇用区分や雇用形態などで差別を受ける、不当な扱いをされる、使い捨てのように扱われ、差別や偏見の温床になってしまっているなど労働問題の格差を是正する必要がある課題が山積だ。


 そのような不当な扱いを禁止できるように何らかの法整備ないし、法改正が必要になってくる。そのためには社会全体が政府などに対して問題を定義する必要があるが、多くの人たちは自分の現状で満足してしまい、“他の人がどうなろうと関係はない”というスタンスを取る。しかし、いざ自分たちが同じ立場になったとき、今まで無関心だった人たちが血相を変えて動いてくる。つまり、自己利益のために人は動くということになるのだ。


 これから求められるのは格差の少ない社会と多様性が認められていく社会ではないだろうか?しかしながら、現在の日本においては“良い人材”は欲しいが、“そうではない人材”は早く辞めて欲しいと思うことが定常化しているように感じてしまい、統計などからその疑いも否定できない。


その理由として、人材流動率といういわゆる“固定人材”が転職や退職・独立などその組織から離れる割合を出している統計だが、この統計がここ数年で上昇傾向にあるように感じる。そして、昇給率も微増と微減を繰り返しているように感じる。


 多くの人たちは“自分は働けていて当たり前”という感覚を持つが、それは“当たり前”ではなく“働くことが可能な環境”だということであり、今の生活が当たり前ではなくなる日がいつかは来てしまうこともある。だからこそ、今の環境が当たり前とは思わないで欲しい。そして、そのような人たちは周囲にいる働けなくなってしまった人が再び輝き、“社会貢献出来ている”という喜びと共に働くための雇用の受け皿を増やすことや1人の個性が輝く場所を作るために動いていってほしい。


 それが1人1人の社会における多様性と社会全体の社会性の構築・共存体験に繋がっていくことで1人1人が1つの方向に向かって進んでいけると私は思う。

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