第13話:人材選別の深刻化 ②
今の日本では“弱肉強食”状態になり、万が一個人で先に申請を出したとしても大手企業などが優先されているのではないか?と疑われるケースや大手企業側から商標権の侵害や知的財産権の侵害などと言われて個人が取り下げ、最終的には企業側が獲得するケースも多く、この状況では個人で戦うのはかなりきつい。
その一方で、企業と個人が寄り添うことはほとんどなく、現状では企業の一人勝ち状態になっている事がほとんどだ。そのため、仮に私が考えている構想案などを個人で特許申請や商標登録申請を出したとしてもすんなりとはいかないだろう。つまり、商標登録を承認するのも結局は“利権”や“利益”が絡んでいるのだ。そのため、有名企業が利権を独占し、全てではないが、個人が考えたものを会社側に帰属させる形で個人が得られるはずの利益を会社が独占して、その中の一部を社員に還元する。
これは、言ってしまうと“職権乱用”や“優越性の乱用”に繋がっていると思うし、その部分が広がると広がるだけ個人は追い詰められていく。
そして、企業は“利益性の高い社員”を囲い込むことで自分たちのブランドバリューを維持したいと考えているのも事実だろう。
しかし、現在は中学3年生・高校3年生・大学4年生で個別の就職に対する意識が異なり、特に大学4年生で企業に就職する子たちのほとんどが“企業への就職”よりも“企業や独立”を前提とした路線に傾きつつある。この背景にあるのが、“年功序列”や“労働搾取”など自分の能力を活かして、待遇なども相対的な待遇や場所を求める傾向にある。その他にも“仕事とプライベート時間のバランス”や“休日出勤を含めた時間外労働の処遇”など自分の働きに対して正当に評価をされているのか?という点を重視する傾向にある。
そのため、企業が求める“優秀人材”は市場に出てくる前に起業などにより就職しないケースも多い。そして、優秀な人材ほど組織に対して固執せず、どちらかというと“自分が求められる場所”で“自分に見合った報酬で働きたい”という考えを持っている人が多いため、若い社員ほど仮に就職したとしても長くは働かず、一定の目標が見えてきた時点で退職し、自分の描いているキャンバスの完成を見据えて動いて行くことになる。
そして、現在は働く形がたくさんある。例えば、幼少期から子役やキッズモデルをしていてそのままカリスマモデルになる子、小学生で起業し、高年商の企業を作り上げてしまう子、SNSなどに投稿してその踊りやビジュアルが可愛いというだけでフォロワーが増え、企業から広告掲載や商品紹介依頼など活動の幅が広がり、そこから芸能界デビューする子など以前よりも職業の選択肢が広がり、会社に就職するよりも早くから自分の才能が社会全体に貢献することが出来ている子供はかなりの自信に繋がり、その夢を更に追い求めることが多くなる。
現在は新卒の就職率も以前の水準と変わらないと言われている。しかし、この数字に隠れてしまっている人、就職をしたくても内定がもらえずに焦っている人もいるということは言うまでもない。そして、第二新卒や解雇・雇い止めに伴う再就職希望者などまで幅を広げると状況はかなり深刻になり、就職できたという人のほとんどは企業側の方針とマッチしたということになり、いわば“人材選別競争”に勝ったということになる。
では、“人材選別競争“に負けてしまった人に対するフォローをどうするのか?という課題が残る。今の日本では”働かない人は悪“のような風潮が流れていて、失業した人がインタビューを受けると”自作自演“や”自業自得“という声が聞こえてくるのだ。もちろん、本人たちは嫌で仕事をしていないのではなく、やりたい仕事に応募しても採用に繋がらない事が多いという事が就職意欲の低下を生む原因だと私は思っている。
そして、企業側も採用したいが、応募者が異業種経験はあっても募集職種は未経験や業界未経験など企業にとっては“即戦力”が欲しいが、このような人を採用することで人材育成に時間が掛かってしまうなら最初から業務内容をある程度熟知している経験者を採用したいというのが本音だろう。
しかしながら、引き抜きや人材流動性が高い業界・職種においては業務の特殊性などから考えると引き抜きなどで経験者を採用したいだろうし、退職補填なら退職者と同等か匹敵する人材を引き抜くもしくは紹介などで採用するなどしないと社内の業務効率が滞ってしまう可能性が高くなることになる。
一方で、人手不足が深刻な会社ほど採用基準が低く、採用率に対して離職率が高くなるなど採用活動の矛盾が生じてしまっているケースも少なくない。これを私は“人材ミルフィーユ法”と呼んでいる。
これは採用活動の際に多めに人材を確保し、大量離職をしたとしても人数が減っていないようにカモフラージュする方法で、いわゆる“大量採用・大量離職”を体現したような形になる。
私はこのようなことが常態化する事や短期間で社員の流動化が進む場合には何らかの措置を執らなくてはいけないと思っている。なぜなら、このような採用活動が横行することで健全な雇用が壊され、場合によってはこの事が原因で労働人口を減少させてしまう可能性があるからだ。
実際に短期間で仕事を変える“ショートワーカー”のほとんどがこの状況に置かれているということが分かった。そして、この“ショートワーカー”が“就業不能”に陥るのも時間の問題だと思っている。
これらの背景の1つに“労働機会の増加に伴う労働環境の悪化”が挙げられる。これは“雇用はたくさんあるが、千差万別状態になり、働き始めたはいいが、求人票に書いていないことが業務内とみなされるケース、求人票に書いてある給与よりも安価でかつ記載されていた諸手当が一部もしくは全て支払われないなど働いている側の”裏切られた“という気持ちと”また同じ事を繰り返してしまった“という後悔で次第に自分を追い詰め、仕事と自分自身の力量とのミスマッチが深刻になるとなるだけ、”その仕事よりも何か他の仕事のほうが向いているのでは?と自分の仕事に対する意識が別の方向を向いていく”という混乱状態になってしまう可能性は否定できない。
これは日本の悪い例というわけではないが、人材の流動性や雇用動向を見極める上では最も恐れられている部分でもあり、その部分が広く露呈することで起きてはいけない事が多発してしまう可能性があるのだ。
その1つが“特定業種に対する風評被害”だ。これは、以前からもかなり問題視されてきたが、“未だに改善されていない”・“相変わらず退職・離職者が一定の水準で推移している”など求職者側から見ると良いイメージは持てないし、ハローワークや求人情報誌や求人情報広告などで同じ会社が長期間求人を出していることでその会社だけでなく、同じ業種・職種に対する深刻な風評被害が起きてしまう可能性があるのだ。その理由として多くの人が求人の長期掲載=ブラック企業、長期掲載する事によってその企業に対してマイナスの印象を持たれたことによるイメージダウンや個人で書き込めるような企業の口コミサイトや大手の求人情報を扱う会社などのチャートで評価されている平均値やコメントなどを参考にして応募するかどうかを決める人も少なくない。
そのため、1つの問題発生がその企業だけではなく、同業他社や同業関連企業にまで波及することもある。その結果、人が集まらずに倒産や解散などに繋がることもしばしばだ。
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