第12話:人材選別の深刻化 ①

現在の日本では日を追う毎に失業者数が上下動を繰り返しており、安定した所得を得られている人が徐々に減っていっている。


 私はそれらの背景に“失業”や“企業の倒産”などの雇用機会の喪失もあるが、一方で、“人材選別”や“不当解雇”などの優越性を行使した雇用略奪も起きていると感じている。


 特に若い世代においてはまだ社会的地位も高くないため、十分なコントロールが出来ないうちに仕事を失うというリスクも高まっている。


 そして、企業にとって“優秀人材”が欲しいのであって、不都合な人材や採用したものの一定の成績を収められないなど自分たちに合わない人たちをどんどん切り捨てていき、自分たちの理想の形を作っていきたいと思うのだろう。


 しかしながら、そういう事が原因で人というのは人生が変わってしまうのだ。これは日本社会における人材確保の視点から見ても解決には程遠い状態になっていることは言うまでもない。そして、そういう事をされたことで“会社に裏切られた”・“会社を信用できない”と就職する事に対して恐怖心が芽生え、それらが繰り返されることでトラウマになるのだ。


 これは、幼少期からの子供への接し方も将来その子が成人したときに大きな意味を持ってくると思っているし、間違った接し方をしたことでせっかく持っている素敵な才能や個性を奪ってしまうことにも繋がる。


 では、どのようにすることがお互いにとって大事な事なのだろうか?


 第1に“雇用責任の明確化”という観点から考えてみたい。これは、いわゆる労働基準法上の正社員雇用の人たちに対して法的に保証されている“終身雇用”についての企業別の個別認識を確認し、適正な雇用を遂行する為に必要な認識を学ぶ場を設けるべきだと思っている。


 これは、日本があまり問題視してこなかった部分であり、これらの問題が以前から少数ではあったが、実際に発生していたことで見えない部分で定着を起こして、この社会情勢下で悪用もしくは乱用されているというケースが多く聞かれる。そして、このような不当解雇されたケースで最も多いのが“使えないから”・“会社の方針”などいわゆる優越性を利用し、個人に濡れ衣を着せる形で会社(企業・組織を含む)を去らせるというケースと辞めさせたい人をターゲットにして精神的に追い込み、その社員から「会社を去りたい」と自分の口で言わせて、自己都合退職にする事や退職にあたって内部告発を出来ないように口裏合わせをするなど働いていた人が不利になるケースも少なくない。


 そして、いずれのケースにおいてもキーワードになるのは“自己都合退職”と“誓約書を書かせるなどして徹底的に自由を奪う”という行為だ。これは、私自身も経験したことがあるし、こういう経験をした知り合いも少なくない。このような行為が横行している限りは“人材不足”も“採用活動の長期化“も言い訳にしか聞こえないのだ。


 そして、このような行為が横行していることで人材不足を助長し、このままいくと自分たちで自分たちの首を絞めることになり、新たな応募者も少なくなる。


 これらを避けるためにもお互いに得手・不得手を補いながら、社員を教育していく事が大切だと思うし、これらの問題を“個人の問題”ではなく“日本社会全体の問題”として考える必要があると思う。


 その他にも不当解雇などに遭った場合に助けを求められる場所を作ることや労働基準監督署などの諮問機関が当該企業の行為が違法だと判断した場合、その企業の勤務状態や出退勤記録などを適宜、監督署管内にあるサーバーで管理するなど不審な動きを早期に察知して、不当解雇で再就職が阻まれることがないように何らかの対策をしないとこのような問題が長期化していくことに繋がると思う。


 次に“採用活動の裁量化”という観点から見てみたい。


 これは、採用活動を優良企業に関しては採用活動を自由に行えるが、業績不振に伴う倒産やリストラが必要な状態にあるなど会社の経営危機などで存続に関わる場合ではない事由・理由以外で不当解雇や懲戒免職などを行った疑いのある企業や短期間で社員の退職や採用が繰り返されているなど人材の流動性が高い企業に関しては抜き打ちで雇用調査などを行い、適正な理由がある場合を除き、年内に採用活動できる回数を制限する、採用人数を制限するなど厳しい制裁を検討する必要があるような気がする。


 私がこう考える理由の1つに個別の“労働権”や“職業選択の自由”が蔑ろにされ、働きたくても働かせてもらえない人が増えていることだ。これは、あくまで私見だが、会社にも社員を選ぶ権利はある。しかし、その権利には“採用した”という責任があり、“自由に社員を選んで良い”というわけではない。


 最近よく聞かれる事例に“ピラミッド・チョイス”という言葉がぴったりのような現象が起きているものもある。


 ピラミッド・チョイスとは“社員をランク付けして、そこから人材の選別が始まる”ということだ。つまり、採用されても採用された企業で働く事は保証されておらず、取引先や自社の子会社などに出向という形で“人材不足の補填”として扱われるケースが多いのだ。


 これは、雇用情勢を揺るがすだけでなく、場合によっては労働基準法上の“労働条件の提示”や労働契約法上の“最低労働条件”に抵触する可能性もあるのだ。しかし、今の状況下ではそこまで管理が行き届いていないのが現状で、そのような企業に採用された求職者がハローワークや労働基準監督署などに“労働条件が提示されていたものと異なる”・“転勤なしと言われていたのに転勤ありと言われた”など企業(=会社)側の有利な条件でかつ求人票や求人サイトに掲載されていない、提示されていない条件を後付けする形で一方的に労働者(=採用者)側が不利な契約を結ばされそうになるなど企業側が強くなってしまい、その分のしわ寄せが採用者側に押し寄せているようなものだろう。


 だからこそ、人材を選別する動きは加速するし、自分たちの有利になる人が欲しいのはどの企業も同じだが、不当解雇や一定期間内の離職率などを換算して、その割合が高い企業に関しては抜き打ちで臨検するなどしてきちんと対処するべきだと思っている。


 このままこのような状態が継続していくことで本来は働ける人がどんどん働けなくなる可能性を増大させる事になり、これらの行為が人材不足や人手不足を助長させ、会社だけでなく、アルバイトやパートなどであっても不信感を持たれてしまう可能性があるのだ。


 次に“パーソナルワーカーの創設”だ。これは、企業などを不当解雇や雇い止めなどに遭い、自分で何かの仕事をしたいと思っている人をエリア単位で育て、その人材で共同運営企業のような形で運営会社を起業し、個々で活動するための基盤を整備することで企業に属さないものの、良い人材が発掘できる、良い人材を企業が興味を持つなどメリットはたくさんあるし、むしろ個人のほうが良いアイディアを社会に発信しやすいという側面もある。


 そして、この人たちが作った物は自動的に商標登録や著作権を保持できる(現在、商標登録されているものと重複した場合には別名で登録する)ように環境を整備することで企業にとっては面白いアイディアや何か良い製品はないか?と参考にするための情報を集め始める。そこで、パーソナルワーカーの人たちが出したアイディアで商品を作ることになった場合、そのアイディアの使用料や利益分配などもきちんと取り決めをして、企業が一方的に使用してしまうことやそのアイディアを横取りして商標登録や特許権の申請をする事で実際に作った人が損益を被らないようにすることも必要だろう。

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