第28話:社会が教えられること ⑤

今は大人と子供がフラットな関係性を構築し、お互いに情報を共有することで社会的適性が育まれ、人に責任を押しつける事や他者否定を極力減らしていくことが可能になるのだと私は思っている。


 しかしながら、現代社会における従来の価値観を崩せない状況が大人だけではなく、子供たちにも波及しており、価値観の多極化や社会基準による自尊心や自己肯定感の低下も以前に比べると顕著になってきたように感じる。


 特に子供たちの場合は親から直接影響を受けているケースやメディアや学校の先生、メディアなど親以外から間接的に影響を受けているケースなど1つの価値観を形成するために複数の価値観や情報などから取捨選択をすることで形成しているように感じる。


 そして、今は以前と比べると情報量が膨大になっており、1つの情報であっても多くの人が“正しい”と思っている情報を選択しないと“デマを流すな”や“お前の意見は間違っている”など本人が責任を持って話をしていても聞く耳を持つことは少ない印象がある。


 そのため、仮に正しい情報であっても間違っている情報であっても判断基準は“みんな”や“○○が言っている”と言った“信頼性が高い人が言っているから安心だ。”という集団心理が情報判断をする際の協調性や自己判断を躊躇する要因として考えられる部分なのだ。


 私はこれらの集団心理には他責思考に加えて責任回避や責任転嫁など自分の発信に対して逃げ道を作り、万が一責められたとしても自分だけが助かるようにコントロール出来るように備えておくという別の心理が同時に働いているように感じるのだ。


 もちろん、発信元が間違った情報を流しているとすでに知っていて、第三者に嘘の情報を流すことは犯罪行為と同等の行為であり、昨今のSNSを利用したトラブルやデマや憶測の不特定多数への拡散行為など犯罪として書類送検や起訴をされている人も多く居るのが事実だ。


 ただ、現時点では大人が中心になっているが、今後デジタル化が急速に普及することで子供たちも同じような状態になりかねないと思うし、大人よりもネットリテラシーや社会のルール、日本の細かい法律の未認知など今までやっていた行為に対して注意や指導などを受けてこなかったことで興味・関心だけで判断する事や行動してしまう、不可視化を狙ったいじめなどの温床として活用されるおそれがあるなどSNSを利用できる年齢になったとしても社会的な課題は残ると考えている。


 また、現在は発信などをする際のプライバシー保護などが不十分な事も多く、一見すると問題のない写真であっても第三者が写り込んでいることや動画などでも無加工になっていることでその人の行動履歴が分かってしまうという事を想定しておかなくてはいけないし、撮影者側も可能な限り第三者に配慮した撮影をすることが求められる。


 しかしながら、今でもデジタルトラブルがかなりの頻度で発生しており、芸能人や有名動画配信者・有名インフルエンサーなども無関係の場所で撮影した写真からストーカー行為をされてしまう、自宅の住所などの居場所を特定されてしまうなど情報発信の在り方について常に板挟み状態になっていることもしばしばだ。


 そして、現在はデジタル技術が日々向上しており、これらの技術向上がこれらの犯罪行為などに転用されることも増えている。


 しかしながら、これらの対策を個人に課している現状を考えると、投稿を自己責任として考える社会の価値観は理解出来るが、トラブルなどが起きた際に巻き込まれた人や無関係な人にまで波及していくことで“あいつが勝手に拡散させた”や“見ず知らずの人から拡散されて、被害が拡大した”など他責思考が起因となって誹謗中傷が誹謗中傷を呼ぶ負の連鎖が起きる可能性が高まってしまう。


 もちろん、これらのトラブルが発生することは十分に予見できると判断する事は出来るが、問題は情報セキュリティなどに対する脆弱性をどのように改善するかだ。


 そもそも、芸能人・有名人の多くは顔出しをしている人が多く、顔出しをしていない人よりも誹謗中傷を受けるリスクが高く、週刊誌などに追われるリスクがある。


 そのため、誹謗中傷に対してきちんとした対策をしているようには感じないのだ。


 もちろん、事務所などがアカウントを管理するなど最低限の対策は取られているが、問題は誹謗中傷を受けたときにどのように対応することが必要かを個人に対して十分周知されておらず、認知も遅れている事から子供たちや認知されたいと思って一生懸命に発信をしている人たちが被害を受けやすくなっているのが現状だ。

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