第22話:教育環境の変化 ⑦
これを私は“少子化の弊害”のように感じている。
その理由として、私が小学生の頃は5人が私立、残りが公立とはっきりと進学傾向が分かれており、他の学校でも卒業生の1割程度が私立中学校もしくは私立中高一貫校に進学していたが、今は同じ学校から平均3割程度(ノッチ調べ)に増えて、塾に通っている子供たちも地域差もあるが、確実に増加傾向にある。
この影響により公立校の統廃合などが急速に進む地域も出てくるため、生徒数の増加に伴い、子供たちも多様化していき、いじめもこれまでの事例や発生ケースが当てはまらない事例が増えていくなど教員負担も重くなっていく。
そして、子供たち価値観の多様化が進むことで授業に対する考え方も多様化するため、自分のイメージと少しでもズレが生じると、“○○のせいでこうなった”・“○○がこういうことをやったから”など子供たちの価値観や学習観の違いで衝突しやすくなる。
次に“子供たちの社会進出の低年齢化の進行”が挙げられる。
これは、近年子供たちの将来に対する見方が以前と比べるとかなり多様化しており、ある子はSNSでモデル活動をしている、ある子は動画投稿をしているなど生まれた時からデジタル化の進んだ社会で暮らしてきたこともあり、ネットという社会で自分を発信したいと思っている子が多い。
ただ、私が危惧しているのはこういう競争があらぬトラブルや心理を引き起こすことがあるということだ。
私が見た例では有名な事務所に所属している子役やモデル、アイドル本人もしくはファンなどがフリーなどで活動しているモデルや子役、アイドルに対して誹謗中傷を行う、一般の子供たちが人気の人との写真がきっかけで“あなたのせいで○○ちゃんの人気が落ちました。責任を取ってください”・“○○ちゃんと写真を撮って売名行為してどうするのですか?”などSNS投稿が許可されているにもかかわらず、SNS投稿がきっかけで炎上するなど多くの矛盾が生じている。
そのため、何かあったときには本人を傷つけたくないというファン心理が働き、相手を攻撃して、ライバルや関係を絶たせるような行為をするのだ。
そして、本人の人気が上がると、今度は「私の方があなたより人気なのだから、気安く関わらないで」などトラブルを避けるために何かあったとしてもその力を使ってトラブルや問題の発生を避けることを幼少期から覚えてしまう、人気になると周囲から特別扱いをされるようになり、“自分は特別だ”という優越感や“自分は何をしてもいい”という勘違いをすることも多い。
そのような考え方を持たれてしまうと、人間関係などのパワーバランスが崩れていく傾向にある。
そして、大人たちも問題を起こしたくないがゆえに「○○さんと問題起こさないでね。」や「○○さんにやられても我慢してね」など本人を守るような働きかけをすることもあり、普通に生活をしている子供たちにとっては他責思考を生みやすい、情緒不安定になりやすい環境が出来てしまうのだ。
そのため、今でも“12歳の壁”など特定の状況における選択肢が難しくなっているケースも少なくない。
例えば、12歳の壁は社会的には公共施設などの料金が区切られる最小値と最大値になっている場合が増えていき、大人と同じ扱いをされることもある。また、生活面では身長や体重など個々の身体の変化が顕著になり、体格差など個人の成長曲線に差が出てくる時期でもある。
そうなると、起きやすいのが“責任の押し付け合い”だ。特にこの年齢になると上に立つことに対して積極的になる子とそうでない子が存在することになるため、上に立ってやらなくてはいけないことを避けられるなら避けたいと思う子も増えている。
ただ、気を付けなくてはいけない点もいくつかある。
例えば、“大人が子供たちに対して公平なチャンスを与えていない場合”を挙げてみる。
これは私も経験したことなのだが、最高学年になると必ずと言って良いほど、学校の児童生徒の一番上に立たなくてはいけない場面が増えてくる。特に、班長や委員長など学校生活をする上で重要な役割には先生たちが「この子なら任せられる」という子を推薦して任命するケースが多かった。しかし、上に立つ子供を大人(先生を含む)の視点で決めてしまうため、子供たちの視点と大人の視点のズレが起きてしまうことや指名された子供たちの中には「自分は上に立ってやりたくないのに」と言って、別の子にリーダーをやらせて名前だけ名乗るという状況も生まれていた。
この状況が生まれたきっかけもリーダーや班長になった子いわく“内申書に書いてもらえるから”という自分の進路に有利になることだったため、本当はやりたくない仕事を内申書に書いてもらうためだけに受けて、実際はやりたくないからといって同じグループもしくは班の同級生に押しつけていたと知って複雑な思いをしたことがある。
今はどうなっているのかは分からないが、状況を見ていると私が小学生の頃とはあまり変わらないような印象を持つことも少なくないため、変化している部分と変化していない部分が存在しているような気がする。
ただ、現在は初回受験が中学校という子供が多く、中学校受験は小学校の成績が合否に左右することになり、良い成績を取らないといけないと思い、ちょっとでも足を引っ張る子がいると、攻撃的になる事もある。
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