第21話:教育環境の変化 ⑥

 これらの心理が大人だけではなく、子供たちにも波及することで自分たちが正しいと思っている事に対して疑問を持ってしまうことや自分の価値観を社会的価値観に置き換えて考えてしまって、個性を失ってしまう可能性がある。


 その中でも私が気になるのは“社会生活に順応する為の生活指導”だ。


 その理由として、社会のルールを学ぶだけなら良いのだが、すでに決められているルールに対して厳格に囚われすぎて、ルールを守っていない人に対して“なんで守っていないの?”と攻撃してしまうことやルールを守らない人に対して“なぜ、守らないのか?”という疑問を持つのではなく、“何かあった時にはあの人が責任を持つべきだ”と自分が気を付けるのではなく、子供だからというだけで大人に責任を押しつけるような意見を持つ子供と“自分たちで気を付けないといけない”という自戒を持ってそのような人がいたとしても相手にしない子供に分かれていく。


 私も小学生の頃に赤信号を渡っていた友人を見て“あんなことをしてどうするのだろう?”という感情が芽生えた事もあった。


 今は大人から子供に教えることも以前に比べると増えており、その中で適切な情報選別が増えていくことも十分に考えられるのだ。しかし、低学年以下の子供たちは“自分の責任とは何か”という部分で十分な知識を持っていないため、友達を傷つけたとしてもやってしまった側は“なぜ、怒られているのか分からない”という状態になり、やられた側は“何もしていないのになぜやられたのか分からない”という双方が違った認識を持つことで、お互いに責任を押しつけ合う状態になってしまう。


 そして、学年があがってくると今度は派閥のような形で人間関係が構築され、他者共存が難しくなる事も想定される。


 現在は習い事であっても人間関係や上下関係といった社会で必要なスキルと教養を学ばなくてはいけないため、どの年齢であっても人間関係や上下関係が厳しくなっていく。


そのため、本人の学んだ習慣が学校に持ち込まれて、その事を子供が実行してしまうケースも少なくない。


 特に小学4年生以降になるとこれらが顕著になり、集団の細分化が始まる傾向にあると感じていて、この習慣がいじめ等を引き起こす因子とも言われている。


 では、この状況を打破するためにはどうするべきなのだろうか?


 私は幼少期から“上下関係が存在すること”を学ぶ機会を作ることが大事だと思う。


 その理由として、自分が知っている事を相手が知らないとなると、場合によっては「この子は無知だから利用してしまおう」という考えが集団心理として波及するような状況になる可能性が否定できない。


 そうなると、人間関係を壊してでも“その社会に順応できていないから”と言って相手を排除することや相手に責任を押しつけて自分だけが得しようという考え方をする子供も増えていく。


 私自身、小学生の頃から人間関係や上下関係に関してはかなり厳しい環境で育ったこともあり、外では厳格に守ったが、校内ではそういう事はあまりしなかった。


 その理由としていくつかあるが、第1に“上下関係を作っても大丈夫だと思える子がいなかった”ということだ。


 そもそも、小学校というのは6歳から12歳という幅広い年齢の子供たちが同じ校舎で学んでいること、縦割り班など集団で行動を共にすることが多いため、1度上下関係を作ってしまうと上級生との関係が恐くなる、低学年の子供たちの中にはそういう環境で過ごしていると極端に萎縮する子供も出てきてしまう懸念がある。


 そのため、私が5年生・6年生の頃は無理に上下関係を作らず、向こうが敬語を使う、上下関係を意識する発言などをしてきた場合、上下関係の基本的なやりとりで返してきた。


 しかし、今は私自身現場から離れて約10年経っていて、社会人になってからは教育現場などと携わる機会が減っている。


そこで、教員をしている友人などからさまざまな話を聞いてみると、“責任を立場が弱い子に向けて、逃げてしまう子が多い“や”人間関係が複雑化していて、指導するにしても一斉に対応できない“など子供たちの受け止め方や他責思考の変化については私が義務教育を受けてきた頃とはかなり急速に様変わりしてきている印象を強く受けた

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