第19話:教育環境の変化 ③-1

以前はカリキュラムも今ほど多角化していなかったため、子供たちも学習選択をしやすい状態だったが、現在はカリキュラムが多角化していること、習わなくてはいけない内容が増えたことで子供たちの学習に対する姿勢が分散化している傾向がある。


 ただ、これだけカリキュラムを増やしたことで個人差が表れてしまい、出来る事と出来ない事、家庭で普通に出来る事とそうではないことがはっきりと分かれてしまっていることになり、そこから子供たちの“学ぶ権利”や“知る権利”などが奪われる可能性は十分に考えられるし、昨今の経済状況を考えると前日出来ていた事が早急に出来なくなる可能性も否定できない。


 そのため、子供たちの教育機会を維持できるようにしないと“なんで○○は出来て、僕・私は出来ないの?”と出来ない事にフォーカスしてしまい、そこからネガティブなイメージが払拭できず、自分の夢を諦めるもしくは我慢しなくてはいけないということになりかねない。


 そうなると、今度は出来る子たちに対して嫉妬などをしてしまうことやこれらが原因で家族不和などを引き起こし、子供が非行などに走る可能性も否定できない。


 では、これらの事態を避けるために必要な事は何だろうか?


 まず、“個別尊重型教育の定着”だ。


 これは年功序列や数的評価など昨今の個人評価における優劣判断が顕著に表れている事で子供たちが置かれている環境が常に他者比較や集団競争など自分軸ではなく他者軸でかつ既存の基準における個別評価に繋がる可能性がある。


 そのため、受験戦争など他者が絡む状況が増えていくことで自分を見失ってしまう懸念や子供たちが結果を出すことに対してフォーカスしすぎてしまうことで子供たちを逆に追い詰めてしまう懸念もあり、場合によっては“受験をするから偉い”や“受験をするから特別”などといった自分の環境に対するおごりや逆の立場の人にとっては他の人と同じ事が出来ないことは自分の責任ではなく、環境や相手のせいだという心理が芽生え、無関係の人に対して攻撃をすることや自分ができないことを第三者のせいにして自分の主張を誇示してしまうなど自分の立場を正当化し、その立場に関して頑なに守ろうとすることで自分の存在を主張したいと思うのだろう。


 そして、社会における競争が本人の心理に自責と他責を隣り合わせにさせてしまい、そこから自分のせいなのか?他人のせいなのか?の分別や基準に対する判断をすることが難しく、成長途上の人たちが上からの圧力に屈さなくてはいけない状態になるのだと感じた。


 これは私が学生の頃から強く感じてきたことだが、自分の意見を上に上げられないということは、その人が成長するために必要なチャンスなどを自然に奪っていることになる。


 これは小さいことかもしれないが、そういう小さな積み重ねがお互いを憎しみあう、責任をなすりつけ、転嫁し合う1つの社会構造を作り上げてしまうのだ。


 そして、この事が年々若年化していき、これらの課題が低年齢化する時期もまもなく訪れようとしている。


 この状況を変えるためにも何が必要かを考えていく必要がある。


 まず1つが“個々の考え方を個別見解として分析し、個別見解の不足点を周囲からの意見と総合させ、総合見解とする教育”だ。


 この教育を導入したいと思った理由が“社会における多様性と相互理解促進のために必要な知識を蓄え、双方の責任の所在を探るのではなく、自分ができることを伸ばしていくことの大切さを学ぶ”というこれまでの教育とは異なった視点を導入することで他責思考を起こすことは減っていくと思う。


 そして、“起きる事は全て自分が意図的に起こしているのではなく、周囲から成長するために必要な課題を与えられている”という考え方を習慣化することで“自分の考え方も間違っていないし、相手も間違っていない”というお互いに尊重し合うことの大切さを知る事で、どのような壁に当たったとしても、他者に矛先を向けるのではなく、他者から学ぶことで自分の知識不足を補い、新しい視点を得ることが出来る。


 他責思考というのは“年功序列がもたらす、他者いじめの一環”であり“社会がもたらした競争心理”であると考えている。


 だからこそ、このような考え方の起きない人材を育成するためには根本から教育法やカリキュラムなどを個別化し、共通教養の部分との分離を図らなくてはいけないと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る