第12話:他責習慣化が生む悲劇 ②

これは今の受験を目指す子供たちにも共通しているように感じるのだ。もちろん、同じ学校を受験する場合には相手をライバルとして捉える場合もあるが、一緒に受かるように手助けをする場合もある。


 そして、その子を含めた同じ目標を持った子供たちが同じ道を歩いて行くことで次第にお互いに仲間意識が生まれ、この頃から物事に対して損得勘定で動くことを覚え、学校生活や日常生活に活かしてしまうのだ。その結果、“自分は頭が良い”・“自分はあなたたちとは違う”という誤った意識が芽生えてしまうことによる蔑視行動に繋がることも懸念される。


 その他にも成績や順位の付く運動会などの校内行事やコンクールなどへの出品・運動会ポスターなど表彰歴として内申書に書けるものに対する熱量は他の人とは違っているように感じる。


 特に運動会やクラス対抗行事などでは自分の活躍も然る事ながら所属している組の成績などを気にする子も多く、少しでも良い成績で終わらせて志望校にアピールしたいような印象を感じる。


 このような心理が生まれる背景に“競争心”と“向上心”に加えて“他者比較”や“差別化”などの自分が他の人に比べて“どこが劣っているのか?”・“どこか優れているのか?”など人間観察の過程における優劣判断が影響しているケースが多い。そのため、幼少期から受験などの競争・競合社会で過ごし、生きてきた子供にとってはその社会基準が一般基準として認識されるため、その社会にいなかったもしくはこれまで交流がなかった子供に対して嫌悪感を抱きやすくなる。


 これは私の考える“他責思考”や“人材選別”の幼少期精神発達段階における社会的価値基準の基礎となっている可能性を表していると思う。


 なぜなら、以前にも書いたが、近年は文部科学省管轄外の教育における家庭教育観や通園している園の基本方針や目指す人物像、各園における園児指導の基本カリキュラムなど学習面における学習レベルの違いおよび多様化が顕著になり、自由教育が認められ始めている傾向がある。そのため、ある園ではアスリート養成を含めた運動に特化した教育、英語に特化した教育、協調性を育む教育など複数のカリキュラムを用意し、段階を踏んで指導しているケースも少なくない。そのため、学習環境や教育カリキュラムや導入カリキュラムによっては文部科学省管轄内である小学校入学時の個別学力に差がすでに出来ている状態になっている事もしばしばだ。そして、学年が上がる毎に個別学力の差が徐々に広がっていき、子供たちのいじめや価値観の相違などが顕著に表れ始める。すると、今度は価値観の異なる人に対して攻撃をしている姿をニュースやテレビで見ることで“価値観が違うなら攻撃しても構わない”という誤った認識を持つようになる。その結果、些細なことでもトラブルが発生するリスクが高くなっていくのだ。


 そして、このような事態を引き起こす最大要因となっているのが“社会的責任の所在”という点だろう。


 これは家庭や社会における人間関係構築の過程を日々観察していくうちに違和感を覚える事が増えていくことで“精神発達の二極化”が起きる。まず、“自分が悪いことをしても人に押しつけてしまうと自分の責任がなくなる”という考え方だ。これは、家庭内だと夫婦喧嘩などの身内の喧嘩でよく見られる傾向で、社会的に見ると事故や通行トラブルなど相手が必ず居ることが前提になる事例を指す。そして、そういう環境が日常化することで子供が誤認してそこで見たことを模倣し、自身が同じ状況になったときに実行してしまうのだ。これがいじめや派閥などの序列的価値観につながり、自分がやっていることに対する認識のズレに気が付くまでは止められなくなってしまう。


 そして、子供の頃からニュースなどで国会討論や予算委員会、コメンテーターと司会者のやりとりなどを見てきた子供にとってはその光景を“相手と意見交換をしているだけ”という認識で捉えているならいいが、“自分の意見を主張しなくてはいけない”という認識で捉えてしまうと今度は“喧嘩”や“人間関係のトラブル”が増えてくるなど負の側面が増えてしまう事になる。その結果、これらの認識のズレが子供たちの混乱の発端を作ってしまい、本心ではない行動が増えていってしまう。


 ただ、これらの行動が全くない事も問題視されてしまうが、進みすぎるのも子供たちの精神発達上は良くない。特に今は小学校~高校まで全ての段階で受験をする子供たち、幼児教育から大学までを同じ系列で過ごす子供が増加傾向にあり、以前と比べて精神発達速度や知識・理解の個人到達目標が高く設定されている場合もある。そのため、公立学校から私立学校へ進学する子にとっては授業のレベルを気にする子もいるし、交友関係や校内の人間関係を気にする子もいる。その理由として、前者は受験する志望校のレベルと今受けている授業のレベルが合っていないことで自分の方が先に進んでいるから余裕だと勘違いを起こす、テストの平均点が悪いと「○○のせいで成績下がったよ。どうするの?」とテスト1つでも他のクラスに負けただけで特定の人を責め始める子がいることなど“良い成績を取らないといけない”や“クラスのメンバーは全員ライバルだ”という考えの中で育ってきたため、こういう行動を取る子供の裏心理としては“自分の成果がそういう子たちに台無しにされた”など周囲からの印象が悪くなり、周囲から持たれるイメージが下がることで同じクラスの人と同じレベルに見られてしまうのではないか?という不安もあるだろう。その他にも1つのきっかけでいじめやいじりなどにつながることやそのような印象が付いてしまうと受験生全体のレベルが下がることに対して恐怖心を持っている事で相手を責めて自分のストレスが溜まらないように発散する傾向も十分に考えられる。

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