第11話:他責習慣化が生む悲劇 ①

今の日本においてよく聞く言葉に“即戦力”や“ヘッドハンティング”などがある。これは新卒の場合は大学などで特定の分野でかつその会社が必要としている技術や知識を学んでいる人もしくは学生時代に全国大会などで優秀な成績や実績を収めた人、第二新卒や中途採用の場合は同業他社で育てた人材で優秀な実績を持っている人をその会社から引き抜いて自分の会社の社員として働いてもらうという社会のシステムだ。


 このようなシステムは芸能界やフリーランスなど多岐にわたって似たようなシステムが採用されているが、この制度は私からすると他責思考を象徴する行為の1つではないか?と思うのだ。


 その理由として①“自社で育てるよりも他社で育ててもらった人材を引き抜いた方が効率いい”と考えているのではないか?②多くの企業において新卒者などの離職率の上昇による人手不足が顕著になり、現在の業務効率を維持するためにもすでに同様の業務を経験している経験者を採用することによって効率の低下を防ぐなど“人材育成効率”や“業務効率”を重視してきた結果、“人材を自分たちで育てるのではなく、誰かに育ててもらっていい状態の人を狙う“という価値観が浸透していったのだと思う。


 確かに、採用してみて良い人材ではなかったのなら“卒業した大学できちんと教育されていない”・“前の会社きちんと教育されていない”もしくは“前の会社の教育が悪かった”・“この社員を育てた担当者の顔を見たい”などとその人の能力だけではなく、周囲の能力までを疑い始めることもしばしばだろう。しかし、良い人材がいると知ってその人を引き抜こうとしていた事実には変わらないし、何ならその人をヘッドハンティングしたことで業界内における力関係が


 そして、会社内でも“なんでこんなことも出来ない”や“さっき頼んでおいた書類やってくれたか?”など自分の仕事を他人にやらせることや自分の力量と相手の力量を同等と判断したことで問題が起きたときに相手に責任を押しつけて濡れ衣を着せるような行為に発展する事も私の経験上あった。


 私の場合はほとんどが後者でかつ相手が“上司の評価が高い人”や“先輩社員”ということもあってなかなか声を上げることは難しかった記憶がある。


 なぜ、こういう習慣がついてしまうのか?それは幼少期まで遡ると分かりやすいだろう。


 人間というのは精神発達が進むと自分以外の人が考えている事を理解する事が出来るようになり、そこで新しい発見を得ながら成長していく。そこで、多くの子供たちが何か悪いことをしたときに“相手が悪い”や“○○くん・○○ちゃんがやった”などと自分の責任を第三者に転嫁することを覚えてしまう。これが修正されずに成長すると自分の中でその事を正当化してしまい、“何か起きたときには○○のせいにしてしまえばいい”という発想が生まれ、その事がいじめや社内のパワーバランスなどに作用していくことになる。


 しかも、日本の場合はこども園などの未就学教育の段階で指導方針の一本化を進めていないため、小学校に入学したときにそれぞれの出身カラーが色濃くなってしまい、全体の意思疎通がある程度出来るようになるまで時間が掛かってしまうのだ。


 もちろん、こども園などは文部科学省の管轄ではなく厚生労働省の管轄のため、教育内容に対して拘束はない。しかし、小学校以降は文部科学省の管轄となるため、ある程度のカリキュラムに則って学習を進めていくことになる。


 そのため、これまで通っていたところで習ってきたことが正しいと思っている子供たちが小学校入学を機に変わってしまう可能性も否定できない。


 特に、小学校受験や中学校受験など将来的には受験を念頭に置いている家庭の子供にとって学校は“将来を与えてくれる場所”として捉えている子供が多く、きちんと学校に行って勉強して、“良い成績を取ることで明るい未来が得られる“と意気込む子が多い。ただ、子供によっては数字を気にするため、成績が悪い子や授業が進まないなどの自身に不利に働くようなことが起こるとその子を追い詰めたり、授業を聞かずに自分で勝手に勉強したりする子も出てくる。そして、何かのトラブルに巻き込まれる、トラブルを起こすなどの進路に対して影響が出るようなことは避けなくてはいけないのだが、そういう事が起きたときも自己正当性を主張するなどして相手に責任を押しつけて逃げる子供も少なからずいる。自分が小学生の時もそういう子はいた記憶がある。


そして、大学生の時に授業補助などで学校に行ったこともあるが、そこでも受験をする子とそうではない子では授業に対する取り組み方が違っていた事を思い出した。


その他にもその子たちには周囲に友人などがたくさんいる印象が強く、こういう力を持っている人が受験を目指すのかと思っていた。私の同級生の場合は何か起きたとしてもかばってもらえるような力を持っている子も少なからずいるし、家柄などでこの子と問題を起こしてはいけないという地域特有の人間関係から来る場合もあったのだと思う。

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