第6話:責任転嫁の弊害

日本というのは立場が上になると上になるだけ責任を取りたがらない。そして、どんどん下の立場の人間がそういう人の責任を転嫁していく事になるのだ。


 そのため、その責任を負わされた下の人たちは我慢することが習慣化され、“自分が我慢するとこの人は救われる”という我慢の美学がここに定着をする。


 これは一般社会でも同じ事が言えるし、学校などでも言える。


例えば、学校なら子供たちが悪いことをしたときに“○○君がやった”・“○○ちゃんがやった”のように別の児童がやったことにして逃げてしまうことで自分が守れたという成功体験が1つの経験として子供たちの価値観形成に利用される。その結果、人のせいにすることで自分は守られるという自己防衛本能が働く。その経験が積み重なっていくことで大人を欺き、自分が怒られないように立場の弱い人に罪を押しつけられるような構図が出来上がってしまう。


 これが会社だと親会社が子会社や下請けに対して何かトラブルや事故が起きたときに立場の弱い人たちに責任を押しつけることで自分は逃げられるということや事実を隠蔽し、別の人間の不祥事とすり替えてしまうなど自分を守ることが大切な事だと思ってきた事が影響している事は言うまでもない。


 仮に子供の時からこういう考え方をしてきた人たちにとってはこの考え方が当たり前のように定着してきたことで、大人になっても繰り返してしまうというのが多くの人たちの性だろう。


 つまり、子供たちが悪いことをしても別の人のせいにするのは親の姿を見ているか、子供たちが育ってきた周辺環境が子供たちの考え方に影響している事も十分に考えられる。そして、その考え方が子供たちに伝承されていき、その考え方を軸にして相手を判断するようになってしまうのだ。


 私はこのサイクルがいじめを起こすきっかけに発展する可能性があると思っている。


 そして、今の子たちは動画サイトや雑誌など情報量がこれまでよりも多く、さまざまな人が話している内容に触れることが出来るため、子供たちの得られる情報が多くなり、このような視覚情報が本人たちの価値観に大きな影響を与え、その価値観がそのまま根付いてしまうことでその価値観が正しい考え方ということになってしまい、他の子たちの意見をあまり受け入れない子も出てくるだけではなく、“モデルになるならこうしたほうがいい”という見出しだけで幻想を起こすことも少なくない。


 このように時代が進むと他責思考の基準も方法も変わってくる。そのため、これまでやっていたことがある日を境に他責思考としてみなされる可能性もあるのだ。


 このように他責思考は自分でその情報を見て、その情報を基に実行した結果を他人の責任として押しつける事と自分で考えたことなど自己判断の結果を他人に転嫁することに分けられて、前者の場合は他者の情報を基にしていて、それを自分に置き換えて考えて行動する必要があるのだが、見聞きした情報を自分できちんと見極めずにそのまま行動したことで全く違う結果になることや仮に相手が悪い場合であっても自分が知った情報を基に実行していることなど完全な相手の責任ということにするにはかなり強引であり、個人差を考慮するべきだったという判断をされると思う。


 しかしながら、日本というのは都合の悪いことを平気で隠すことや自分よりも立場が低い人に対する接し方がかなり変わってくるなど“利己的”な考え方をする人たちが多い。


 そのため、“この人が出来たなら自分にも出来るはずだ”と考える人が多い。そして、その人の真似をすると人気が上がるという勘違いや同じ世界を見られると幻想してしまう事になるのだろう。今はネットなどでそのような情報を手に入れて自分で実行することが出来るが、これは完全に自己責任だと思っているが、そういう人の中には自分が出来ない事で出来る人に攻撃する人や嫉妬心から誹謗中傷する人も少なくない。


 私は責任転嫁が減らない理由としていくつか挙げてみたい。


まず、“法律や規約などの不明瞭”だ。これは多くの人たちが疑問に思っている事の1つで、契約トラブルや支払いトラブルなどの金銭が絡み、いずれの過失や損失を双方に問える可能性がある問題、事故などの発生時に道路交通法などの法律を参照して過失割合を決める際に証拠映像を参照して決定するがこれもまた揉める要因になる。


 この世の中に揉めないことはほとんどなく、毎日が責任転嫁や他責思考が顕著に表れる可能性は少なからずある。ただ、どちらが悪いと言われてしまうと法律の壁が現れてしまうため、大きい組織もしくは権力等の強い方に勝ち目が傾くことも少なくない。そのため、仮に正当性があったとしても多くの場合は泣き寝入りを強いられる。


 私はこれまでさまざまなトラブルに巻き込まれてきた。お金が絡む問題、お金が絡むトラブル、仕事の問題、事故のトラブルなど数えるとキリが無い。ただ、私がこれらのトラブルを体験・経験したことで分かったことは“法律があるから問題ない”という認識の人が多いということだ。


 例えば、お金が絡むトラブルの場合、相手は「あなたのミスもしくは過失があった」と言うと「そんなことはない」と相手が反論したとしても「うちの会社(個人を含む)のルールとして使う規約やマニュアル上の問題はない」と突き返す。など絶対に過失を認めないというケースが多く、何度も繰り返されることで諦めてしまう人が多い。


 しかしながら、そういう人の多くは相手を優越性の観点から脅して泣き寝入りを獲得できると錯覚してしまっているケースが多い。そのため、同じようなミスや誤請求などが起きたとしても誠心誠意対応する会社に私が出会ったことは少ない。

 私はこういう経験をしてきて感じているのは“金融取引法”や“銀行法”、“特定商取引法”などの国民の資産保護可能な法律の厳格化が遅れているということ、各関連企業や機関がきちんと連携していないことだ。


 現在の法律の運用方式では犯罪などの違法行為などが深刻化もしくは連鎖的に拡大していくという構図しか見えてこない。そのため、トラブルが起きたときに問題からすり抜けてしまう事に繋がるのだ。


 このような他責思考を可能な限り排除するためには積極的な多角的な連携を図れるように法整備を進めることと高額振込に対して金融機関の認証を受けた企業以外への送金を即時ではなく、翌営業日以降にするなど犯罪発生やトラブル発生を避ける必要があると思う。そして、カードを利用した不正利用や詐欺行為が発生した場合には信販会社が犯罪収益防止法に基づく調査を行い、不審な場合には取引保留と金融庁や消費者庁などに請求元の登記情報の照会等を行うことを義務づけることや10万円以上の取引に対しては契約証明書もしくは決済時に本人からのサイン、実印などが入った領収書の控えなどを提出させることでこのようなトラブルは減っていくだろう。


 これは事故の場合も同様で双方車両の映像を提出させるだけではなく後続車や交差点内に設置されている防犯カメラなどからも情報提供を呼びかけるなどきちんと争点になりそうな所を徹底的に調べることで双方が更なるトラブルになる事を避けることが出来ると思っている。


 日本という社会は社会的信用を落とさないために発生したトラブルを早急に片付けてしまいたいと考える人や企業(会社)などが多く、私の時もそうだったが、細かく質問すると相手が嫌がるということもあった。


 そして、きちんと解明されないまま“あなたが折れてください”と言わんばかりに圧力をかけてくることや一方的に請求するなど権利を主張する人や企業(会社)がかなり多い印象がある。


 しかしながら、犯罪を抑止できる最後の砦は本人ではなく、金融機関などの公機関が異変に気付くことであり、犯罪データベースや送金記録などを照会出来る権利を有していることから最初のフィルターを抜けてしまってもいくらでも食い止めることは出来る。


 これをやらないのは“自分たちの責任を負いたくない”・“この取引をしたのは名義人なのだから黙っておかないと面倒くさいことになる”という完全なる他責思考が影響した利己的な価値観が人や組織を動かしてしまっているということになるのだ。


 こういう考え方が減らない限りどのような事件が起きたとしても誰が悪い“という論争合戦が始まってしまうことは避けられないし、場合によっては裁判や周囲を巻き込んだ大がかりな問題が起きる事も避けられないだろう。

 こういう小さな問題をどのように他責せずに解決出来るかを考えていく時期に差し掛かっていると思っているし、これから複雑化する問題もこれまで以上に増えていくと私は推測していて、これらの問題にも他人事ではなく、自分事として考えていく事が大事であり、自分には関係ないから考えないという考え方をすることを避けていかないといけない。


 そして、このようなトラブルを減らせるように必要な法整備や法改正、問題を監視する第三者機関の創設、各組織の重要部門の定期的な監査体制の構築など問題の深刻度で必要な対応を柔軟に検討できるように多角的な働きかけを全体でしていく必要があると思う。

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