第21話
「三日か……」
三日坊主という言葉が頭に浮かぶ。
え?何の事かって?
ゴーカツの奴が、俺との契約を破るまでの時間だ。
まあ部下の手を迷わず切り落とすようなアイツが律義に契約を守るとは思っていなかったが、三日は中々のスピード感である。
まあこっちとしても話が早くて助かるんで、別にいいけどな。
「ちょっと出かけてきますわ」
俺は作業の手を止め、侍女のミウにそう伝えた。
作業ってのは勿論、聖水の製作だ。
この三日頑張って作りまくったので、現在そのストックは1万近い――瓶や箱も錬金術で用意し、魔法で作った亜空間に放り込んである。
「ないとは思うけれど、誰かが来たらあれで知らせて頂戴ね」
「はい」
ミウには何かあった時、それを知らせる様のマジックアイテムを渡してある。
まあ騎士達に付けているペインデビルから知る事も出来るのだが、ずっと見張ってるのも面倒だし――基本奴らの様子はリアルタイムではなく、一日の終わりに圧縮データで超高速確認している。
「じゃあ行って来るわね」
姿を変え、ゴーカツの居場所近辺の様子を魔法で確認。
奴がいるのは首都に居を構える店の事務所の様で、第三者と接触している訳でもないようなのでそのまま事務所へと転移してやる。
「——っ!?」
「なんだっ!?」
「うわっ!?」
突然事務所のど真ん中に現れた俺を見て、ゴーカツやその手下が狼狽える。
ふははははは!
地獄からの使者様の登場だ!
ま……そんな下品な口上はしないけど。
「お、お前は……メシェア!?どうやって此処に!?」
「転移魔法ですよ」
「て、転移魔法だと!?」
「ええ。実は俺、超が付く天才魔法使いなんです。で、その超絶天才魔法使いが転移魔法を使ってまで態々貴方に会いに来た理由……もちろん理解してますよね?」
「…………で?まさかその文句を付けに態々乗り込んで来たってのか?」
それまで慌てふためいていたゴーカツだったが、俺が脅しを入れた瞬間目つきが変わる。
必要なタイミングで即座に持ち直せる辺り、悪徳商会のトップだけあって場慣れしている様だ。
「転移魔法を使えるってのは確かに凄いが……魔法使いが一人で乗り込むのは少し無謀じゃねぇか?ええ、メシェアさんよぉ」
通常、魔法使いは魔法を詠唱させさえしなければ大した脅威にはならない。
なので奴の言う通り、こういった狭い場所での大立ち回りを一人でやるのには不向きだ。
だから奴は余裕を見せて凄んでる訳だが……
それはチートのない、この世界の魔法使いならばの話である。
残念ながらそれは俺に当てはまりはしない。
「美味しい取引相手だと思ったんだがな……」
ゴーカツが一瞬視線をゴンザに向けると、ゴンザが腰にはいてある剣へと手をかけた。
「ここで逃がすと、後々面倒な事になるのは目に見えている。テメーにはここで消えて貰う。恨むのなら、自分の迂闊さを恨むんだな」
ゴーカツが指を鳴らす。
と同時にゴンザが抜刀し、俺に斬りかかって来た。
――俺はその剣を人差し指と親指で摘まんで止める。
「は……」
「え……」
そしてその刃を指先の力だけでへし折ってやった。
言うまでもないとは思うが、俺のチートは魔法だけではない。
肉体の方も超絶出鱈目な強化を受けている。
なのでそこらのごろつきの攻撃如き、俺には通用しないのだ。
「じゃあ罰ゲームと行こうか」
俺は固まる奴らに、笑顔でそう告げる。
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