第19話
「あ、これなんかいいわね」
左手で頭を支える形で寝そべる、涅槃のポーズで自分の能力を確認していた俺は良い物を見つけ、思わず声に出してしまった。
「お嬢様?どうかなさいましたか?」
現在モルモット姿で過ごしている弟達と遊んでいたミウが、俺の声に振り返った。
ただの独り言を、自分への用事と勘違いしまった様だ。
「独り言よ。気にしなくていいわ」
「はい」
俺には転生の際に、神様から多種多様な力が与えられている。
ミウの弟達の姿を変化させた様な特殊な魔法もその一つだ。
その数は膨大――とまでも言わないまでも結構な数であったため、現状では使えそうな名前の物だけを事前にピックアップして使っている感じだった。
で、だ……
母カレンが妊娠で騒ぎだすまで暇だった俺は、折角なので空いた時間を活用し自分の能力チェックを行う事にした。
チェック方法は、意識を自分の内側に向けるという簡単な物だ。
そうすると、自然と情報が頭に浮かんでくる。
これ何に使うんだ?と思う様な物もかなり多かったが、使えそうな物も結構あった。
その中に面白い物を発見し、思わず声を出してしまったという訳だ。
――それは拷問用の魔獣を召喚する魔法だった。
奇胎獣という魔獣を召喚する魔法で、女性の胎盤に寄生させるとその中で成長し、妊娠した様な状態になるという物だ。
そして10か月後、成長しきった魔獣はまるで赤ん坊の様に女性の子宮から生まれて来る。
当然、出て来るのは赤ん坊などではなくグロイ魔物だ。
某映画の、宇宙生物がお腹から出て来るアレがイメージに近いだろう。
まあ別に腹を突き破って出てきたりはしないが。
それ所か、母体には殆ど健康を害する様な悪影響が無い。
あくまでも、精神的ダメージを与えるための魔獣の様だ。
折角なので――想像妊娠ではなく、妊娠の演出としてこれをカレンの腹に仕込む事にしてみよう。
通常は宣言してから胎内に埋め込み、お腹の中で育っていく化け物を感じさせる事で、女性の精神に苦痛を与えるのが正しい使い方だ。
だが流石に宣告する訳にもいかないので、カレンには生まれて来てからのお楽しみだけでよしとしよう。
因みに、奇胎獣は薬で堕胎をさせる事は出来ない。
更に寄生先の女性の腹部の周りに魔法の防御膜をはるため、強力な魔法を使える者がいなければ、外科手術で取り除くことも出来ない様になっている
当然この世界にそんな巨力な魔法使いはいないので、出産は確定だ。
――まあ良い物も見つかったし、検索はこれぐらいにしておこう。
「さて、ポーションも用意しておきましょうか」
ミウの弟達にさっさと新生活の環境をつくってやらんとな。
まあ姉弟の戯れる姿を見る限り、結構エンジョイしている様にも見えるが、流石にずっとそのままという訳にはいかないだろう。
「そこの暇そうな4人。仕事を上げるわ。薬品用の瓶と、それを詰める木箱を買ってきなさい」
暇そうに壁際で案山子のポーズ――片足を上げて、両手を肩に水平に伸ばした格好――をしていた騎士と車の御者を含めた4人に命令を投げかける。
当然ポーズは俺の命令だ。
特に意味はない。
「いくつ程買って参れば宜しいでしょうか?」
御者が訪ねて来る。
ちゃんと数を確認する当たり、御者はそこそこしっかりしたお頭がある様だ。
「可能な限りよ。そこら中から買い集めなさい」
「畏まりました」
だが畏まった割に、騎士達は何故か動こうとしない。
なんだ?
「あの……お代の方は……」
「ああ……」
なんだ、代金が欲しかったのか。
しょうがない奴らだ。
「それはお前らの命より大切な物なのか?」
俺は笑顔でそう告げる。
こいつらは侯爵家に仕える騎士と御者だからな。
給金は相当貰っている筈。
当然、それは全部俺の為に吐き出して貰う。
当たり前だよな?
「い、いえ!今すぐに買って参ります!」
慌てて4人が出ていこうとするが、俺は奴らにもう一声かけて置く。
「私が満足できる数が集まらなかった場合、どうなるかは言うまでもないわよね?」
「「「は……はいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」」」
4人が悲鳴を上げて出ていく。
まあ少しでも長生きしたいのなら、精々頑張れ。
「さて、出かけてくるわ。誰か来たら例の物で知らせて頂戴」
ミウには錬金術で作ったアイテムを渡してある。
小さな指先サイズの柔らかなクッションの様な物で、強く握ると俺の指に嵌めてある魔法の指輪から音が出る様になっていた。
まあないとは思うが、誰かが俺を訪ねて来た時用だ。
流石に部屋に居ないと不味いからな。
「はい!」
ミウの元気な返事に笑顔で頷き、俺は転移魔法を発動させる。
移動先は人気のない山奥。
さーて、雑草を集めるとしよう。
「ああ、よく考えたら雑草取りも別にあいつらで良かったか。ま、いいや」
「働かざるもの食うべからず」という訳でもないが、雑草ぐらいは自分で集めてもいいだろう。
その方が確実に効率はいいだろうしな。
「ウィンドカッター!」
おれは魔法で刈り、無心で雑草を拾い集めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます