第3話
不死なのに死んでしまうとは情けない。そんな冗談を言ってしまうくらいにあっけなくソフィーとアリスは死んでしまった。魔女が強いと言われている割には何の手応えもなくあっさりと殺すことが出来たのだ。俺の思っている不死とこの世界の不死は違う意味なのだろうか。
「逝姫に聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「なにかな?」
「不死ってさ、死なないこと以外に意味ってあるの?」
「あるわけないでしょ。不死って言ったら、殺すことも出来ないくらい無敵って意味なの。まあ、あいつら以上に強いんだったら殺すことも出来るかもしれないけど、そんなのは大魔王クラスの力でもないと無理ね。それに、あんたが殺した魔女って四人の魔女の中でも戦闘に特化した二人なんだからさ、この世界にやってきてまだ完全に適合していないあなたが勝とうなんて十年早いわよ。あれ、なんで魔女を殺せてるの?」
「なんでって言われても、金髪の方は俺の近くにやってきたんで攻撃してみたら死んでしまったし、銀髪の方は俺が殺した金髪の仇だとか言いながら攻撃してきたから殺したんだよね」
「ねえ、あなたってこの世界に来てまだ一時間も経ってないわよね?」
「正確な時間はわからないけどそうだと思うよ。それがどうかしたの?」
「どうかしたのって、あなたがいた世界は日常的に暴力もないし破壊活動だって無いじゃない。それなのに、どうして躊躇することもなく魔女を殺すことが出来るの?」
「どうしてって、俺が強いからじゃないか」
「強いって言ったって、あんたはまだ何の力も授けられていないのよ。それなのに、どうして、ねえ、どうしてなの?」
「そう言われてもね。俺はさ、逝姫も知ってると思うけど、何回か異世界に転生させられているんだよね。転移だった時もあるけどさ。それで、そっちの世界で何度かルシファーを倒したり共闘したり復活させたりしてたんだ。その名残なのかはわからないけど、この世界でもその時の経験と力を使えるみたいだね。でもさ、残念なことにその時に使っていた道具はどこにもないみたいなんだ。どうにかして取り戻す方法はないかな?」
「そんなの反則よ。今から私があなたに授ける力がどう考えても必要無いじゃない。軽くあなたの力をサーチしてみたけど、ほとんど最強クラスの能力で詠唱もなしで最高位の魔法も使えるってどういう事よ。しかも、自分の魔力は消費せずに相手の魔力を無理やり奪い取って使うっておかしいわ。おかしすぎるわ」
「そうしないと勝てない敵がいたんだよ。名前はどうしても思い出せないんだけど、万物創世の神とか言ってたかな」
「それは私達の神様なんですけど。あんたはいったいどんな世界を渡り歩いてきたのよ」
「別に俺も好きで私歩いていたわけじゃないんだけどね」
そんな事を話している間にも金髪のアリスと銀髪のソフィーは体を再生させて襲ってこようとしてたのだが、俺はあいつらが完全に復活する前に息の根を止めてやった。止めたところでまた蘇るのだろうが、それでも俺は襲われそうなので仕方なく殺すことにしていた。
「なんだか気は進まないけど、今からあなたに神の祝福を授けます。私が今のあなたに一番必要な力を授けるかあなた自身が一番欲しい力を手に入れるか選びなさい。さあ、やり直しはきかないので慎重に選ぶのです」
逝姫から提案された能力やスキルは正直に言ってしまえば必要のないモノばかりだった。物を爆弾に帰る能力は一見すると使えそうな気もするけれど、威力は使用者の能力に比例するという事なので、やり方を間違えてしまうとこの世界もろとも消し飛んでしまう恐れもありそうだ。透明になる能力は少しだけ惹かれたが、体が消えるだけの能力らしいので視力に頼らない相手には意味のないモノだろう。他にも空を飛べたり、武器を修理出来たり、投擲武器の命中率が恐ろしいほど上がるというものもあったのだが、そもそも俺は投擲武器を使うことは無いのだ。
結局、俺は貰える能力を考えるのにしばらくかかってしまい、不死の姉妹を何度も何度も殺していた。復活する前に殺しているので、正確に言うと殺人ではないのかもしれないけれど、俺は蘇ろうとする二人を何度も何度も屠っていた。
色々見ていて気になったモノがあったのだが、回復系の能力ももらえるようだ。俺は戦闘に特化しているので回復魔法が欲しいと思ってはいたのだ。しかし、そもそもダメージを受けるような相手と一対一で戦うこともなかった事もあって自分では回復系の魔法を覚えようとはせず、一緒に行動していたみさきにその辺りを任せていたこともあった。いや、みさきの方が攻撃に特化していた時期もあったような気はするのだが、そんな時でも俺は回復系の魔法を使うことは無かった。というよりも、俺の能力系統では回復魔法を使うことは出来ないところまで攻撃に特化してしまっていた。これが戦闘に特化しているのであれば回復も必要になってくるのだが、俺は戦うというよりも破壊したり一方的に相手を痛めつけることがメインだった。今もこうして二人の魔女を一方的に痛めつけているしな。
「この回復のやつってさ、俺でも使えるわけ?」
「使えないやつを提案するわけないでしょ。戦うのが好きで頭おかしくなってるんじゃないの?」
「いや、別に戦うのは好きじゃないんだよね。俺が聞いたのは理由があって、俺は自分の能力が攻撃に特化し過ぎてて回復系の魔法は覚えることが出来なかったんだ。だからさ、ここで選んで使えなかったら意味ないなって思ったんだけど」
「大丈夫よ。私が与えるのは魔法じゃないので代償も必要ないよ」
「じゃあ、この回復にしとくよ」
「回復量はあなたの能力に比例するからね」
俺はどれくらいの回復量があるのか試すためにちょうど目の前に転がっている二人の魔女を使うことにした。最初はどうやって回復させるのか戸惑っていたのだけれど、二時間ほど繰り返していると慣れてきて、体の半分だけ回復させることにも成功していた。まあ、普通の人間にこれを試したところで体が半分無いのでは生きていられないと思うのだがね。
とにかく、俺は攻撃する事だけではなく相手を回復させるという手段を手に入れたのだ。壊すのと治すのを同時に行えるというのは、尋問をする時につかえそうだなと思ってみた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます