第74話 幕間2 洋介
「あれ?、先にお肉炒めるんだっけ?」
「違う違う、先にタマネギだよ」
3日後、三笠家のキッチンでは叶恵がエプロンを着けて料理をしている。たかがカレーで気合が入り過ぎだとも思うが、叶恵に聞いたら『こう言うのは形から入るの』との事らしい。
料理と言っても、レシピが分からないと言う事で、隣で俺がレクチャーしている形だ。
「その次にじゃがいもとニンジン。タマネギは茶色にしなるまで炒めれば良いぞ?」
「おー、なんだか主婦みたいですなぁー?」
鍋の上でタマネギを炒めながら他人事の様な感想を述べる叶恵。
……将来嫁に行く時の為にも料理は覚えてた方がいいと思うのだが……
「はい、次はジャガイモさんとニンジンさんー」
そして、叶恵は鼻歌を歌いながら手際よくジャガイモとニンジンを入れていく。
筋は悪くない。元々要領は良い方だし、基本は知っている様だ。
ただ、自分で作ろうと言うやる気が無いだけなのである。
「そんだけ手際いいなら、他のも覚えろよ」
「何それ、褒めてんの?
やれば出来るのに、何故かやらないのがこの和泉叶恵と言う幼馴染だ。
面倒くさがりも、ここまで来るとアッパレである。それとも他に何か理由でもあるのか。
「……いや、将来嫁に行った時、それじゃ困るだろ?」
「そん時は、料理ができる旦那を見つけるわ」
ああ言えばこう言うとはこの事か、ニシシとこちらを向いて笑って、叶恵はそう言い放った。
これは、まだまだ自分で料理する気にはならなさそうだな。
「隠し味は何入れるー?」
「ウチはいつもトマトとコンソメを入れてるぞ?」
「お、いいねー。じゃあそれ入れちゃおっか?」
その後は、そんなやり取りをしながら二人で料理を作る。
普段全く料理しない癖にここまで手際が良いのは、ある意味才能なのだろう。
……もう叶恵一人でも出来るっぽいし、俺はサラダでも作っておくか。
___________
「お待たせしましたー」
「おおー」
目の前に出された盛り付けされた皿を見て、俺は感嘆の声を漏らす。
見た目は完璧だ。後は味だが、基本は出来ていたので味は保証出来るだろう。
カレー特有の美味しそうな匂いが鼻をくすぐり、どうにも食欲をそそる。
「見た目は完璧だな」
「味も完璧だし」
殆ど俺のアドバイスで作った様なものだが、胸を張って自信満々な様子の叶恵。
まあ、上手く行ったらそうなるのは分かる。俺もハンバーグが上手く作れた時は内心自慢げだし。
「じゃあ、食べよっか?」
「そうだな、いただきます」
手を合わせ、スプーンで一口掬い上げる。2、3度息を吹きかけ、米と一緒にそれを口に入れた。
「………!!か、辛っら!!」
一口入れると、遅れて凄まじい辛さが口の中を襲った。俺は慌てて用意してあった水を飲む。
そうだ、うっかりしていて忘れていた。
「そう?、こんなもんじゃない?」
対して、叶恵はなんともないかの様にカレーをどんどん頬張る。
そうだこいつ、相当の辛党だった。
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