第67話 叶恵
朝、学校に来るといつもと違う雰囲気の教室に、これからテストが始まるんだなと、実感する。
勉強に関しては洋介にこれでもかと言うくらい教えてもらったので、赤点と言う事は無いだろう。
しかし、緊張はしていないが、洋介に教えてもらった手前、ふざけた点数を取ることは出来ない。
「おはー、叶恵」
すると、いつもの様に優花里ちゃんに声を掛けられた。
「おはよー、優花里ちゃん」
私も軽く挨拶を返す。優花里ちゃんも緊張していない様子だ。
優花里ちゃんも成績は良い方なので、この様に余裕があるのだろう。
「今回は大丈夫そう?」
「うん、洋介にもみっちり教えて貰ったし」
自信満々に私がそう言うと、優花里ちゃんは怪しむ様な顔をして来た。
「本当ー?前もそう言って、ほぼ赤点ギリギリだったじゃない」
「あ、赤点取んなきゃセーフだから」
私の中では赤点でなければセーフなのだ。特にテストで良い点数を取っても、良い事は無いと私は思ってるし。
「まあ、叶恵がそれで良いなら構わないけど……それで、あっちの進捗は?」
すると、優花里ちゃんは興味津々と言った表情に変わり、そんな事を聞いて来る。
「あっち?」
「トボけんじゃ無いわよ、三笠くんよ、三笠くん。横山さんにちょっとでも差を付けれたの?」
「さ、差を付けるって………」
まるで喧嘩か戦いをするかの様にそう言う優花里ちゃんだが、私としてはそんな感覚では無い。
テスト勉強初日こそライバル心を持って我先にと洋介に構ってもらうために質問合戦をしたが、それも初日だけで、数日も経つと普通に友達として仲良くなってしまった。
「……普通に凛ちゃんと仲良くなっちゃった」
私が白状する様にそう言うと、優花里ちゃんは呆れた様な顔になった。
「はぁ!?何よそれ……こりゃ、三笠くんのお人好しが移ったかしら?」
優花里ちゃんの指摘に、私も苦笑いになってしまう。そりゃあ、この反応も正しいだろう。恋敵である凛ちゃんと、普通に仲良くなってしまったのだ。
「それで?、これからどうすんの?」
「……どうしよっか?」
ここから先、本当にどうしようか?凛ちゃんは洋介の事が好きだ。その事実は私も困るし全力で阻止しなければならない。
しかし、このテスト期間、私と横山凛は1人の友人として仲良くなってしまった。
どう言う訳か、何故か気が合ってしまったのだ。これが性格が合わないとなると、私も容赦無く凛ちゃんを恋敵として敵視出来ただろう。
今の私は、洋介の恋心と凛ちゃんの友情を天秤に掛けてる形。
勿論、今は洋介の方に傾いているが、このまま友達として接すると、どうなるか私にも分からなかった。
「……自分の優柔不断さを呪いなさいな。ともかく、選ぶのは叶恵なんだから、よく考えなさいよ?」
「……耳が痛いであります」
自分の優柔不断さが本当に憎たらしい。テスト直前、私は別の意味で落ち込んでいた。
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