第38話 凛
イライラする。ああ、イライラする!本っ当にイライラする!!
学校から通学路を通っての帰り道、アタシはイライラを地面にぶつける様に粗い足取りで歩く。
苛ついているのは、三笠に要らないお節介を焼かれたからだろうか?初対面の篠塚さんに怖がられたからだろうか?
……違う。苛ついているのは、自分自身にだ。
本当に不甲斐なさすぎる。
どうしてこうなるのか。
どうして素直に好意を受け取れないのか。
三笠はこんなにも親身になってくれてるのに。
篠塚さんは、こんなアタシにも一生懸命接しようとしてくれていたのに。
素直になれない自分が心底嫌になる。
そんなイライラを、篠塚さんにぶつけてしまった。彼女は泣きそうな顔になっていた。
また失敗した。どうせアタシはこんな人間だ。いまさら手を差し伸べられたって、素直にそれを受け取れない。
そんな気持ちから、彼女に対して最悪の態度を取ってしまった。
「ああ、もう!!イライラする!!!」
自分に言い聞かせる様に、周りも気にせずに帰り道でそう叫ぶ。何事かと、数人こっちに目線を向けたが、そんなものは今のアタシの目に入らない。
アタシは自分のやらかした事から逃げる様に、家に向かうのだった。
__________
「おかえり凛、……どうしたの?その顔」
「……何でもない。翔太迎えに行ってくる」
家の扉を開けると、お母さんに顔を見られ、アタシはそれを隠す様に横をすり抜ける。
今は何を話されても反発しそうだったので、理由を聞かれる前に部屋に逃げ込んだ。
部屋に入るとドサっと、学生バッグを乱雑に置き、鬱憤を晴らす様に自分のベッドに腰掛けた。
「……はぁー……」
そのまま寝転がり、仰向けでしばらく天井をボーッと見つめる。自分の部屋と言う落ち着ける空間な事もあってか、心もいくらか落ち着いて来た。
「……翔太、迎えに行くかぁ……」
その様な独り言を呟き、アタシはベッドから身を起こす。今日は、お母さんに翔太を保育園に迎えに行く様、頼まれた日だ。
弟の翔太はまだ保育園児だ。お母さんはまだ生まれたばかりの末っ子、
これから服を着替えるのも、面倒臭い。
なので制服のまま、部屋を出て玄関に向かう。すると、お母さんはまだ玄関に居て、こっちを心配そうに見て来た。
「……大丈夫?お母さんが翔太迎えに行こっか?」
心配そうにお母さんはそう聞いて来る。やはり帰った直後に表情を見られたのはマズかったか。
「ううん、大丈夫。アタシが迎えに行くよ。それと、何か買うものあったらスーパー寄ってくよ?」
アタシは笑顔を作ってお母さんにそう返す。
今でさえ育児に、夜ご飯の準備に大変なお母さんだ。ここで心配なんか掛けてはいけない。
「………そう?、なら頼むけど、……何かあったらちゃんと言うのよ?」
依然として、アタシが隠し事をしてると疑っているが、お母さんはそう言う。
ああ、駄目だ。また要らない心配を掛けちゃった。
「だから大丈夫だって。それより、何か足りないものとか無いの?」
しかし、アタシは強情に、しかしそれを表に出さずにそう言う。
これはアタシの問題だ。お母さんの悩みを増やすわけにはいかない。
「……そうねぇ、あ、醤油がもうすぐ切れそうだから買っといてくれるかしら?」
「うん、分かった。翔太を迎えに行くついでに買って来るよ」
靴を履きながらそれだけ言うと、アタシは再び玄関のドアを開ける。
少し暑くなって来た外の気温は、またしてもアタシを少しイラつかせた。
学校に登校し始めてから2週間。アタシの心はしんどくなるばかりだ。
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