第33話 凛
最近、三笠とよく話をする。小休憩、昼休み、はたまた放課後まで。
必ずと言っていいほど、アイツから話し掛けられるし、アタシとしても三笠と会話をするのは楽しい。
雰囲気で、三笠がアタシとクラスメイトの溝を修復してくれようとしているのは、直ぐに分かった。会話の所々に、何か委員会に入らないかだの、どこかの部活に入らないかなどと、勧めてくれた。
恐らく、何処かの集団に属せれば、アタシが変わると思っている様だ。
「………横山」
「……ッチ、はい」
しかし、どうにもならない。朝の点呼で担任に呼ばれるも、いつも通り態度の悪い返事をしてしまう。
分かっている。これはアタシが変われば解決する問題だ。しかし、それにしては"不良"でいる期間が長すぎた。
もう引き返せないところまで来ている。不良から脱却しようにも、"どうせ今更"などのマイナスな感情が勝ってしまうのだ。
私の態度が悪いと、三笠は悲しそうな顔をする。本当に心の底からクラスに馴染んで欲しいと思っているのだろう。
私だって変わりたい。いや、正確には戻りたい。
だが、周りの反応は、アタシに冷たくなるばかりだ。それを見てアタシはさらに態度が悪くなる。そんな悪循環に陥っていた。
「……大丈夫?横山さん。顔色少し悪いけど……」
「え?、あ、ああ。全然へーき」
朝のHRが終わり、難しい事を考えていたのがバレたのか、不安げな顔でそう聞いて来る三笠。
アタシは慌てて笑顔を作り、そう返す。
……正直、孤立するのがこんなにも心に来るとは思わなかった。
最初は三笠も居るし、大丈夫だろうと登校を続けていたのだが、それでもやはりクラスメイトからの視線と言うのは気になる。
三笠は自然体で接してくれるが、その他の人間はまるで臭い物に近付かんとするばかりに、アタシを避ける。
その事実が、アタシがこのクラスで浮いた存在なのだと、実感させられた。
逆に三笠もアタシを無視してくれて、完全に一人になった方がこんな思いをしなずに済んだのかも知れない。
アタシがクラスの中でそう言う存在なんだと、ある意味割り切る事が出来る。
しかし、こうも優しくされると、期待してしまうのだ。
"また、あの時の様にクラスの中心に立てるのではないか"と。
「……へーきじゃ無さそうだけど……」
「大丈夫だって。今まで2週間、毎日登校してんだから、この雰囲気にもすぐ慣れるよ」
心配そうにそう聞いて来る三笠に対し、精一杯の意地を張って、笑顔でアタシはそう返す。
正直、三笠に優しくされるのは心地が良いい。アタシが奇異の目に晒されながらも学校に登校する理由はそれだ。
しかし、その度にクラスメイトの視線というのはキツくなっている様に感じる。
直接何か言われたり、されたりした訳では無いが、うんざりしているのは事実だった。
「……もう授業始まるから行くけど、溜め込んでも良い事無いよ?」
「わーってるって。アタシはこれでもメンタル強いっての」
ああ、やっぱコイツは優しい。名残惜しそうに席に戻る三笠を見ながら、アタシはそんな事を思う。
しかし、それと同時に、心のモヤモヤは大きくなるばかりだった。
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