第25話 洋介


 「すみません、かな、……和泉居ますか?」


 「和泉さん?ちょっと待ってて。呼んでくるから」


 6組の女子生徒に頼み、叶恵にこっちに来る様にと伝言を頼む。

 昼休み、俺は叶恵のいる6組の教室に来ていた。あれから横山さんは返って来る事無く、どうも谷川さんの言ってた事が気になったので一年生の頃、同じく横山さんと同クラスだった叶恵に事情を聞いてみる事にした。


 「おーす。何?洋介?」


 「おーす。叶恵、突然だけど、横山凛って生徒知ってる?」


 「あー、凛ちゃん?……知ってるけど、何で?」


 「ちょっと、担任に頼まれてな___」


 そして俺は、ここまでに至る経緯を話し始めた。




 「なるほどー、相変わらずお人好しですなー」


 経緯を話すと、叶恵は納得した様にポンと手のひらを叩く。


 「そんなんじゃねーよ。クラス委員の仕事だ。……色々噂されてるみたいだけど、何か知ってるか?」


 「うーん、これと言って。一年生の頃は結構なかよかったけど、良い子だったよ?……不登校気味になってからは、あまり話さなくなったけど」


 「そうか……」


 やはりと言うか、叶恵に聞いても出て来たのは、谷川さんと同じ様なものだった。

 恐らく横山さんは誰にも相談しておらず、自分の中で溜め込んでいるのだろう。……それが何故かは分からないが。

 だとすると、ここからは自分でなんとかするしかないか……


 「てか、随分とご執心じゃん。何?凛ちゃんそんなタイプ?」


 すると、不貞腐れた様な口調で叶恵はそう聞いて来た。


 「何不貞腐れてんだ。ちげえーよ。前まではもっと明るく良い子だったって言うから、何か理由でもあるんじゃないかと思ったんだよ」


 「………ふーん」


 俺の言葉が信じられないのか、ジトっとした目を叶恵は向ける。

 そんなに不機嫌になる事も無かろうに。


 「まあ、いいや。取り敢えず私は何も知らないかな?連絡先でも知ってたら、間を取り持ってあげても良かったんだけど……」


 不服そうな顔から一転。肩をすくめて、苦笑いになりながら叶恵はそう言う。

 まあ、知らないのならば仕方がない。また別の方法でも探そう。


 「いや、こっちこそいきなり悪かったな。じゃあ」


 「ああ、ちょっと待って洋介」


 聞く事も聞いたので自分の教室に戻ろうとすると、叶恵に呼び止められた。


 「何?」


 「………凛ちゃん、その、……危ない人とも付き合いがあるって噂だから、注意してよ」


 心配そうな顔つきでそう言う叶恵。それは谷川さんからも聞いた事のない情報だった。


 「……了解。まあ、お前を巻き込んだりはしないよ」


 「いや、そうじゃ無くて……はぁ、もう良いよ……」


 すると、叶恵はまた拗ねた様な顔になり、吐き捨てる様にそう言う。

 何かを言いかけていた様だが、それが何かは知り得なかった、

 

 「じゃあ、また。今日は家来るのか?」


 「いや、今日は部活で遅くなりそうだからいいや」

 

 「りょーかい」


 そんなやり取りをすると、今度こそ俺は自分の教室へ戻って行った。

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