プロローグ2
私には、幼馴染が居る。
付き合いで言えば、10年以上。
同じ小学校に入学し、同じ中学校に進学し、高校も同じだ。
幼馴染は、面倒見が良い。生粋のしっかり者のと言った感じで、何かだらしない所や、ズボラなところがあると、すぐに注意をしてくる。
口うるさいだけだと思う者もいるかもしれないが、そこにはちゃんと気遣いや優しさを感じられるし、それに叱られるのは、……何というか、変な言い方になるのだが、どこか心地が良いのだ。
しかし、幼馴染は誰にでも優しいと言う欠点がある。
幼馴染はモテると言う訳では無いが、一部の人達にはかなり人気が高いらしく、その人達は、口を揃えて"彼は優しいから"と言い、熱い視線を送る。
恐らく彼の優しさに触れてしまったのだろう。彼は優しく、心配性だ。
だが、それでは私が困る。彼が告白でもされたらどうするのか。
そんな危機感を持ち始めたのは、中学校に入ったぐらいの時だった。
噂で、幼馴染が告白されたと聞いた時は心臓が止まりそうになった事を覚えている。
結局、彼は断ったと聞いたが、このままではダメだと思い、私は必死に彼の目を惹くアイデアは無いかと思考を巡らせた。
「喉渇いたー。お茶持ってきてー」
「自分で持って来い。こっちは宿題やってんだ」
そして思い付いた方法が、幼馴染に、"わざと"だらし無い所を見せつける事だった。
先述の通り、幼馴染は面倒見が良く、心配性だ。ダメな人間が居たら放っておけないタイプ。そんな男。
私は、そんな幼馴染の優しさに、全力で甘える事にした。
こうすれば、彼は私を見てくれる。
こうすれば、彼は私を放っておけない。
10年以上も一緒にいるのだ。彼がどんな性格なのかを、私は知り尽くしている。
高校だって、無理に受験勉強をして彼と同じ高校に行った。
「えー?いいじゃん、ケチ。もってきてよー」
「自分で行けって」
「むーりー。私、こっから動けない」
そして結果は、成功。今も何かと理由を付けては幼馴染の家に転がり込み、こうしてだらし無い姿を見せている。
……サービスだ。パンツも見せてやろう。
「……はぁ……分かった。持って来てやるから、宿題の邪魔はするな」
そして、幼馴染は困った様な、それでいて仕方ないなと言う風な、困惑と慈愛の混ざった様な表情でそう言う。
これだ。この表情が、私は堪らなく好きなのだ。
「へへっ、やーりぃー!」
上機嫌で私がそう言うと、幼馴染は席を立ってリビングにお茶を取りに行く。
ポツンと一人残された部屋で。私はそんないつものやり取りに充実感と安心感を覚えて、顔を思い切り緩ませる。
ここまでつらつらと述べたが、大体分かって貰えるだろう。
私は、幼馴染の
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