第16話

「そういや最近多いんだよなぁ、冒険者」


 泉にて、水を汲んでいる際に遭遇した偶々会ったユニコーン変態処女厨と会話をしていると、ぽつりとそんな事を漏らした。


「冒険者? 浅いとこにはうじゃうじゃいるだろ、あんなの」

「いやいや、割と深い方まで潜ってくるんよ。それこそ俺ら魔物の住処の方まで」


 人間はこの森の奥まで入って来る事はそうそうない。浅い所でも人間にとっては十分価値のある素材は手に入るし、腕に覚えがあっても浅いとこより少し奥、といったところ。それ以上入ってくるのは強者相当腕に覚えがあるか、愚者自分の実力を過信しているかのどちらかだが、大体は後者馬鹿だ。


「ほら、この間言っただろ? お前らオークの群れに入った奴ら」

「ああ……そういや、ンな事あったなぁ……」


 確か聖女を目的に森に入って、迷った挙句群れに入って暴れた結果返り討ちにあったとかなんとか言ってたな。怪我をしたオークは居なかったみたいだが、メスが居たから繁殖の為に勇敢な若者が犠牲になったとか。


「ん? その話を出すってことは……」

「そう、奴ら聖女様が目的ってわけよ。聖女様の身柄を確保して、あわよくば自分達の仲間に、って意気込んでるんだわな」


 ニヤリとイヤらしい笑みを浮かべてユニコーンが言う。それに対して俺は溜息を吐く。


「そんなに冒険者共は多いのか?」

「んー、まぁ聞いた話じゃドワーフやエルフの奴らのとこに入り込んだり、フェンリルやケルベロスなんかも見かけたって言ってた。みんななんかしらやらかしてブッ殺されてるけどな。ああ、俺もこの間遭遇したわ。散歩してたらいきなり崇め奉ってきたんだけど『聖女様と結ばれますように』とかほざいたから尻に新しい穴増やしてやったわ。誰が俺の乙女処女をくれてやるかってんだ」


 げらげらと笑うユニコーンだが、正直笑ってられないんだがこっちは。

 ――ちなみに、聖女には絶対この泉には近寄らない様に言い聞かせている。


「たかが噂だろ……」

「いやいや、ここまで来たら噂じゃないんじゃね?」

「でも死んだとか言われて無かったか?」

「んー、でもどいつもこいつも生きてるのを確信してるようなんだよなぁ。もしかすると、何かしら生死が解る手立てとかあるのかもな」


 そんなものがあったら面倒だ。聖女に確認しておくか。


「あ、そうだ最近多いって話で思い出した」


 ふと、何か思い出したようにユニコーンが言った。


「面倒な話は御免だぞ」

「いやいや、重要な話重要な話」


 ユニコーンが真面目な表情になり、言った。


「最近増えてるらしいんだわ」

「冒険者だろ」

「違う違う。ゴブリン。繁殖のスピードが半端ないらしい。多分冒険者が入り込んでエサになったり苗床になってるのが原因なんじゃね? 近いうちにぶっ潰す必要がありそうなんだよな」


 何処までも冒険者は迷惑であった。

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