第15話

――魔の森から少し離れた場所に街があった。人の脚で数日かかる程度の距離で、宿や装備を整える店の他に冒険者ギルドといった施設があり、この街を拠点とするのが森を探索する冒険者達の常識となっている。

 実はもっと近く森のすぐそばに村があるのだが、そっちは存在を知られていない上常識の範囲外魔物と交流してるようなヤベーとこだったりする。


 閑話休題それはおいといて


 日も暮れ暗くなり街の店が殆ど閉まる中、冒険者ギルドは繁盛していた。正確には併設してある酒場の方が、だが。

 森を探索し、一仕事を終えた冒険者達があっという間に酒場で呑兵衛と早変わりだ。

 何かしら成果があった得たあぶく銭でパーッと騒ぐ者、何の成果も得られなかった反省会といいつつとりあえず飲む者と様々だが、共通しているのは『森であった事』を話題酒の肴にしている事だろう。


「入ってすぐのところに薬草の群生地があって――」

「もっと奥まで行けるかと思ったが――」

「あの先の方で魔獣を見た――」


 そんな冒険者呑兵衛達の会話に、静かに耳を傾けている者達がいた。4人でテーブルを囲い、全員頭まですっぽりとローブを被るという、目立たない見るからに怪しい格好をしているが周囲は『よくある事そんな事より酒だ』と一切気にしていない。

 出された料理と酒を摘まみつつ、会話もせずにただ周囲の声に耳を傾けているだけ。


「――そういや、最近アイツら見ねぇな」

「アイツらって誰だ?」

「ほらいただろ? 『行方不明の聖女様を探す』って言ってた奴ら」

「ああ居た居た! 見つけて仲間にするって騒いでた奴らだろ!」


 あるグループの会話を耳にし、ローブ集団の料理を摘まむ手が止まる。


「言われてみりゃ見ないよな。死んだか?」

「死んだんだろ。アイツら深層奥の方まで行ってたらしいからな」

「マジかよ。そりゃ死んだわ」


 魔の森は深い。奥に行けばいくほど、驚異的な魔物の生息地となっている。大体の冒険者は入ってすぐの浅い層の周囲を、腕に覚えがあっても中層辺りで探索を留める。そこでも十分稼げるからだ。深層をわざわざ狙うのは命知らずの馬鹿として扱われる。


「なんでわざわざ深層なんかを?」

「あー、俺アイツらから聞いたんだけど、聖女様ってあの魔の森で行方不明になったらしいぞ?」

「それデマじゃなかったか?」

「いやいや、森の方で見かけたんだと。アイツら聖女様のいた国出身だから、聖女様見た事あって間違いないとか」

「それが正しくても、あの森じゃ生きてられないだろ。そもそもあの国滅んだっていうし、聖女様も何処か旅してるとかいうんじゃねーの?」

「ま、そっちの方が信用できるわな」


 そう言って大声で笑うと、酒を入れてグループ内の会話が変わる。


「――聞いたか?」


 ローブを被っていた一人の男が、口を開いた。


「ああ、やはり魔の森か……」

「『聖女様が魔の森に捨てられた』というのは本当だったというのか……」

「なんて愚かな……滅んで当然だ」


 テーブルを囲っているローブを被った者達が口々に溜息交じりに呟く。


「しかしこれは好機とも言える――我が国の勇者チームに聖女様を引き入れる」

「あの滅んだ国の勇者は勇者ではなく愚者だった」

「王も教会も同類だったとも聞いているぞ」

「力づくで物にしようとしていたんだろう……そんな事で聖女様の心を得られるはずがないだろう――我が国の教会では未だ聖女様の死は確認されていないという。ならば魔の森の奥にいると考えても良いだろう」


 最初に口を開いた男が言うと、他の者が頷く。


「あの勇者――いや、愚者に美しき聖女様は相応しくない。この俺、真の勇者こそ、彼女に相応しい」


 男――別国の勇者が口の端を歪め、笑みを浮かべた。



「――うわ」

「ん? どうした?」

「あ、オークさん。いえ、なんかその、寒気というか悪寒というか……何かいやーなぞわわって感じが」

「なんだ風邪か? 聖女も風邪引くんだな」

「そりゃ引きますよ。自分で何とかできちゃうんですけど」

「まぁ無理はするな。飯は粥とかのがいいか? 食えなかったら無理しないで言えよ?」

「……優しい……しゅき……」

「はいはい」


◇◇◇◇◇

恥ずかしながら戻ってまいりました。

色々矛盾点とかあるかもしれませんが許して下さい何でもはしませんので。

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