第14話

 持ってきた獲物を担ぎつつ、案内されたのは家――の後ろにある倉庫。大体話がある時、俺はここへ招かれる。家の方はほら、オークの大きさとか、な……

 食料を主に置いてある倉庫は入り口も大きく、俺も問題無く入る事が出来る。中に入ると、肉の置かれた区画に持ってきた獲物を置く。


「それで、聖女様に関してですか?」

「ああ。つい先日森に冒険者が入ったらしいんだがな」


 俺がそこまで言うと、村長は「ああ」と心当たりがあるように声を上げた。


「そう言えば、そんなのがいましたなぁ。この村の宿や店を利用していましたが……聖女様が目的、と?」

「俺も聞いた話だからわからんが」

「で、その冒険者たちは?」

「群れに迷い込んだらしい」

「なら一安心ですな」


 笑みを浮かべて村長が言う。


「中々素行の悪い奴らでしてね、色々とトラブルを起こしていたんですよ。店で物を無理矢理奪おうとしたり、村の若いのに手を出そうとしたり」

「若いの……メスを襲う気でいたのか?」

「いえいえ、冒険者の女の方が、村の子供を、ね」


 何その冒険者。


「男の方も店の商品をタダ同然で持っていこうとしたり、田舎の村だと甘く見ていたのでしょう。まぁ返り討ちにされたようですが。相手が道具屋ですからね。それにしても、我々をどうにかできないのに、聖女様をどうにかなど出来るわけがないでしょうにあの連中程度では」


 そう言って村長が笑う。

 この村の人間共は、森の近くに住んでいるせいかなんというか、ちょっとした魔物であれば倒せるくらいには逞しい奴らが揃っている。今村長が言った道具屋というのも、確かそこそこの年齢のメスが主人なのだが、ひよっこオークくらいならぶん殴ってどうにかできるくらいには強い。オーク側に襲う理由がまず無いが。


「しかし、今回は偶々村に訪れた輩ですからなぁ。この村ではなく、近くの街を拠点とする者が多いんですよ、冒険者は」


 この村より少し離れた場所に、街が存在する。そこはこの村とは違い、人が多く発展しているらしい。俺達魔物が現れたら大騒ぎになる程度には、普通の街だ。冒険者なんかのギルドも存在するとか。ちなみにこの村にはそういった物は一切ない。むしろ冒険者なんかは宿代なんかを高く設定したりして、食い物にしているようだ。恐ろしい奴らである。


「アイツらだけじゃない可能性は高いようだ。聖女の話が何処からか噂になっているようでな」

「なるほど……となると、村を訪れた冒険者には、それとなくデマを流しておきますか」

「ああ、それと村に冒険者がいるときは教えてくれると助かる。聖女を連れているかもしれないからな」


 まぁいざとなったら口を封じてしまえば良いのだが。


「承知しました。森側の方からいらっしゃると思うので、誰かしらは居て御報せできるようにしておきましょう……それにしても、随分と懐かれたようですなぁ」

「……出来る事なら帰って欲しいんだがなぁ」


 溜息と共に言うと、村長は「良いではないですか」とか笑ってくる。他人毎だと思って。


「まぁ、何事も無ければいいんだがな」

「そうですなぁ、何事も無ければいいんですがねぇ」


 そう、互いに口に出す。

 ――不思議と、何か起こりそうな変なフラグがたった予感がした。

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