第13話
魔の森と呼ばれる森の近く。規模は大きくは無いが、人が暮らす村が存在している。一部商店や宿場があるが、畑と民家の方が割合が多い村であり農村の部類に入る。農民が畑を耕すような長閑な光景が日常である村だ。
1人の農民が、畑を耕していた。顔に年齢を重ねた皺が目立つ男で、鍬を何度か土に振りおろし、出来た農地を見て息を吐く。
そんな農民に、影が降りた。急に周囲が暗くなり、何事かと農民が振り返り、見上げる。
――そこに、そびえ立つ巨体が居た。腰にボロ布のような腰巻を巻いているだけで、顔は豚を思わせる醜い生物――魔物の一種である、オークであった。
人間にとって、魔物とは驚異的な存在だ。特にオークは『遭遇したらまず逃げる事を考えろ』と言われる程である。
オークを前にして、農民は悲鳴を上げる――
「あ、どうもオークさん」
「よう」
――どころか、会釈して親しげに笑みを浮かべる。それに対してオークの方も軽く手を挙げる挨拶をする。
「今日はどうしました?」
「ああ、肉を獲ったから持ってきた」
「いつもありがとうございます。ああ、うちで出来た野菜持っていきます?」
「助かる。後で寄ればいいか?」
「ええ、用意しておきますね……ああ、村長なら家に居る筈ですよ」
――魔の森近くの農村。世にあまり知られていないが、魔の森の魔物と交易のある村であった。それくらい逞しくなければ、
◆
「それじゃ、また後で」
農民のオスにそう言って、
魔の森近くにある人の村だが、ここの人間共は
例外もいるが、ここの人間達は魔物達と普通に接しておりある程度は交流がある。森で手に入る物は人間にとって価値のある物も多く、代わりに人の方でないと手に入らない物とを交換するような事をやっている。ドワーフ種なんかは農具の手入れの代わりに酒とか貰っているとか。
俺も森で手に入る肉なんかを提供する代わりに、野菜やパンといった物を交換したりしている。
少し歩いて村の中央辺りに存在する、他の家よりも少し大きい建物に辿りつく。この村の長の家だ。
「おお、オークさんじゃないですか」
家の外に居た髪や髭が白いオスが俺を見て言う。このオスがこの村の長だ。
「森で獲れた肉を持ってきた」
「助かります――今日はおひとりで?」
周りを見て村長が言う。一応、この村の奴らは聖女の事を知っている。
「今日は置いてきた」
「そうですか。聖女様は子供達が会いたがっていたので」
「……その聖女の事で、今日はちょっとな」
「成程。話はうちで聞きましょうか」
村長はそう言うと、家へ俺を招いた。
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