第12話

 過去に色々を思い出して、現在に思考を戻す。

 まだ湯気が残る温かそうな飯に、服を脱ぎかけている聖女メス


「とりあえず、飯だ」


 服を脱ぐのを止めると「着たままの方が良いのでしょうか」とか言っていたが、とりあえず無視スルー

 テーブルに着くと、見た目はまともな食材が並んでいた。本当、最初の内は酷かったが最近は食えるようになってきた。まぁ、そもそもがこんな家事なんてやったことが無いそうだ。


「ところで、さっき話した事だが――」


 さっき――なんか随分前のようにも感じるが、人間が聖女を探しているという話についてだ。


「嫌です」

「……話が進まんから言うぞ。まぁこの間冒険者がこの森に入って、そういう事を言っていたらしいな」

「その冒険者の方々は?」

うちオークの群れに入ったらしい」

「それはそれは……御愁傷様です」


 その冒険者達の事を言っているのか、それともオーク達の事を言っているのか。多分オークの方だな。


「あわよくば私をパーティに引き込もうという魂胆だったのではないでしょうか? 想像ですが、男性は私の身体目当てなのもあるかと」


 皿の野菜を突きながら、うんざりした表情で聖女が言う。良くわかっていらっしゃる。


「昔からあった話です。勇者パーティに居た頃から」


 やさぐれた表情で聖女が言う。

 過去、魔王討伐の為の勇者パーティに所属いたそうだが、色々引き抜きのような事を言われたりしたようだ。確かにコイツの扱える神聖魔法は有能だから、喉から手が出る程欲しいだろう。


「それ割と建前ですよ。イヤらしい目で見られることの方が多かったですから。酷い時は女性にもそういう目で見られましたからね」


 遠い目で何処かを見る聖女。本当色々あったようだ。


「そういうこともあるので、私はもう人の所に戻る気はありません。魔王討伐なんて、その気は元からありませんし」

「……別に何も言ってないが」

「私がその気があるといったら、冒険者の方に連れて行ってもらうつもりだったのでしょう?」


「わかりますよ」と笑みを浮かべながら聖女が言う。そんなに驚いたのが顔に出ていたのか。


「いやいや、何時までも人間がオークと居たら駄目だろ?」

「妻が夫の元を離れる方がいけないのでは?」

「だから誰が夫婦だ誰が」

「オークさんと私が」


 そう言って聖女は笑う。こうなっては何を言っても聞かないので、俺も何も言わない。


「あ、認めてくれたのですか? 私を妻と」

「認めちゃいない」

「ならどうしたら認めてくれるのですか!? やはりここは純潔を捧げるしか――」

「お前俺らオークの性質知ってるだろうが!」

「愛があれば何とかなります! ほら、なんだかんだ私達上手くやっていますし! 案外平気かもしれません! さぁ、私を抱いてください!」

「無理だって言ってるだろうが!」


 と、まぁ。最近は毎日こんな感じだ。

 ――本当、騒々しいので帰ってくれないかなぁ。

 そんな事を思って、俺の溜息は今日も増えていく。


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