第6話

 家に到着して、メスを下ろしてから手ごろな桶を用意する。まぁ、人間のメス程度なら風呂桶代わりになるだろう。家にある水を沸かし、桶に溜める。


「えっと、何をなさっているのです?」

「とりあえず、風呂だ」

「あの、やはり犯すのですか? その、初めてなので優しく――」

「やめろ、そういう話はするな」


 思わず想像してしまい気分が悪くなる。不思議そうにメスは「はぁ……」と首を傾げている。


「いいから身体を清めてこい。その後は飯にする」

「……食べられるのですか? 殺すのであればできれば一思いに――」

「いいからとっとと風呂入ってこい」


 そう言って空き部屋に湯を入れた風呂桶を用意し、メスを部屋に放り込んだ。


「さて、人間が食う物は何かあったか……」


 その間に飯の用意だ。人間は確か生肉は食えないんだったか。まぁ、焼けば良いか。んで、貰った野菜とパンがあるか……まぁ、これ出せばいいか。人間食える筈だったし。後は……酒か。貰ったはいいが、飲まないしなぁ。まぁ、置いとけばいいか。


 ●


「あの、お湯頂きました……」


 戸惑った様子で部屋からメスが出てきた。血や肉片は流せたようで綺麗になっていたが、衣類は汚れたままだ。身体を拭く布はあったが、それも血で汚れている。


「あー、スマン。服になるような物が無くてな。今代わりになる布を出そう」

「いえ、汚したのは私なので――」


 そう言うと、メスは目を閉じ汚れた服に手を当てる。すると掌から淡い光が漏れ、見る見る内に汚れが消えていった。


「聖魔法?」

「御存知なのですか?」

「使えはしないがな」


 森の中にはユニコーンを始め、色んな奴がいる。そいつらから見せてもらっている為、ある程度の知識はある。

 良く見るとメスは教会の修道女シスターを思わせる格好だ。聖魔法を使えても不思議ではない。


「あの、これは?」


 テーブル上に並べた飯を見て、メスが首を傾げる。


「飯だが?」

「あの、私が美味しくいただかれるという話では?」

「何でそうなる?」


 何でか勘違いされるけど、別に好き好んで人間食う訳じゃないんだがなぁ。そんな美味いわけじゃないし。食料無くなったら仕方なく、という感じだ。


「腹は減ってないのか?」

「いえ……」


 そう言った直後、メスの腹から小さくくぅ、という音が鳴った。


「魔物の肉だが、人間が食っても問題は無いと思う。まぁ少しクセはあるだろうがな。野菜もパンも、普通に人間達も食っているのと同じ物だ。まぁ、警戒するのは仕方ないが」

「……いえ、ありがたくいただきます」


 そう言って、メスはおずおずと椅子代わりの丸太に座る。椅子はオーク仕様の為、メスには大きすぎる。


 ――そんな感じで、飯の後だ。


「なんでわらしらけこんなめにあうんでしゅかぁ~ッ!」


 メスは、泣きながら俺に絡んでいた。置いておいた酒を飲んだようである。


――――――――――

次回更新は多分来週になるかと思います。

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