第4話
「どうぞ、召し上がれ♡」
ニコニコと笑みを浮かべながら、聖女が俺に言う。
テーブルの上には獲ってきた獲物が調理された物が並んでいる。聖女が作った物だ。切って焼いて塩を振っただけだが、まだ食い物に見える。
「……今日は、炭じゃないんだな」
「……オークさん、意地悪です。私だって学ぶんですから」
恨めしそうに俺を見て言う聖女。ここに来た最初の料理はものの見事な炭だったからなぁ……その次は表面は生なのに中が炭とか、どうすればできるんだと聞きたくなる出来。その時に比べれば随分な進歩だ。遠い目にもなりたくなる。
……別に生肉でも平気なんだが、聖女がやりたがるのだ。
『助けてくれた御礼です! 後私を売り込んで愛してもらう為です!』というのが動機らしいが。不純だなおい。
「で、毎度のことだが」
「なんでしょう?」
「何故調理となるとお前は服を脱ぐ?」
聖女の理解できない所なのだが、調理となると纏っていた服を脱いでエプロンだけになる。
「……興奮しません? こう、ムラムラと後ろからがばーっと襲いたくなるとか」
「ならん」
どうやら誘惑していたようである。いや、そんな事されても別になぁ。人間だし。
大きく溜息を吐くと、聖女がおろおろと慌てた様子を見せる。
「な、何か気に障る事を……?」
「……いや、調理中は危ないから服は着ろ」
そう言うと、聖女は口元を抑えてその場にへたり込む。目元は潤んで、今にも涙がこぼれそうだ。
「お、おい。どうした?」
「オークさん優しい……しゅき……」
良く見ると目が潤んで、瞳の奥に♡があった。
「……ああ、そうかい」
再度、俺は大きく溜息を吐いた。
――これが聖女とか、信じられないよなぁ。俺だって未だに信じきれてない。
まぁ証拠を見せられていたりするからそこは信じているが、こう、認めたくないというか。
「そういえば、血抜きを済ませてきたのですね?」
「ああ、泉に寄ってきた。今外に水袋もあるから、後で持ってくる……ああ、そうそう。聞いた話だが、何でも人間共は聖女を探しているらしいぞ?」
「嫌です」
「まだ何も言ってないが」
「私はもう聖女ではありません。オークさんの妻です。愛し愛され、この家を守り、子を産み育てていくんです!」
「ちょっと何言ってるかわかんない」
「なら今からわからせてあげましょう!」
「止めてお願い脱がないでください」
……本当なんでこうなった。
――――――――――
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