第2話
職員室を出たら、自然と同じ方向に歩き出した。
「柳瀬君、今日、部活は?」
そして唐突に聞かれた。
『いや、今日は部休だよ』
「そう、実は私も部休なの。やっぱり次のホームルームに向けて、少し打合せしない?3時間しかないし、時間を無駄にしたくないのよ」
『あぁ、いいよ』
委員長みたいにはなりたくないからな。
教室に戻ると、もう誰もいなかった。
東堂が自分の席に向かって行ってしまったので、俺は大人しくついていった。
「さて、と、まずは、私たちのクラスがどういうことをするか、ある程度絞っておく必要があるわね。」
話が早い。それなら俺も考えていたところだ。
『つまり、展示か、模擬店か、発表?他にもあるかもだけど、その中のどれにするか、ってことだな。』
「そうね。私としては、発表は難しいと思うわ。」
わかってるね。俺もそう思っていた。
『だろうね、進学クラスだし。発表は練習時間が結構かかるからね。』
俺達のように指定校狙いの生徒はまだしも、一般受験組には少々厳しいものがある。
あぁ、そう言えば。
『一つ聞いてもいいかな?』
「うん、なに?」
『差し支えなければ教えてほしいんだけど、東堂さんは、大学ではなにを勉強したいの?』
東堂のような人なら、まず間違いなくはっきりと決まっているだろうと思った。
「建築学よ。ちなみに、大学は東光大志望よ」
『はぁ、建築。。』
気の抜けた声が出てしまった。笑
あまりにも意外だった。まさか建築学とは。。それに。。東光大って。。
「え?それがどうしたの?」
しまった。フリーズしてた。
『あぁ、ごめん、まぁ、せっかく実行委員やるんだし、俺たちが得意な、というか興味がある分野からなにか出てこないかなと思って。』
まさか建築学とは。。
「そう。でも建築学じゃ、いいアイディアは出てこないかもね。」
うん、とは言えない。。
「柳瀬君はどうなの?」
え?
『なにが?』
「大学よ。何を専攻するの?」
あぁ、そういうことか。
『あぁ、俺は、ちょっとマイナーなんだけど。スポーツ栄養学って、わかる?』
「あぁ、あのスポーツ選手に必要な栄養素の計算をして、食事のメニューを考えたりする、んだっけ?」
なんと!スポーツ栄養学を知ってるのか!
『すごいな。アレクサみたいだ』
本心だった。
「いや、そこまでじゃないけど。」
いやいや、スポーツ栄養学と聞いてそんなにすらすら答えられる人なんてそうそういないだろう。
『東堂って、色んなこと知ってるんだな。』
改めて真っ直ぐに目を見て言った。
ん?東堂って。。なんというか。。
「そんなことないけど。」
しまった、話が逸れた。
『ごめん、話が逸れた。俺の専攻も、あんまりいいアイディアは出ないかもな。』
「クラスの皆からもアイディアが欲しいところだけど、難しそうね。」
そうなんだよな。
『皆、意見を出したら全部自分がやらなきゃいけないと思ってるんだよな。多分。いいアイディアが出たら、そこに向けて皆でやればいいだけなんだけどな。そのための実行委員なんだし。』
東堂が急に目を丸くする。
「あなた、すごいわね」
『え?なにが?』
ていうか、目まんまるだぞ?やっぱり、東堂って、なんていうか。。
「いや、なんていうか、あんまり積極的に人に関わっていくような人じゃないと思ってたんだけど。意外と皆のこと、見て、考えてるのね。」
言われた途端に急に親近感を覚えた。
『それは、東堂もだろう?』
しまった、つい呼び捨てにしてしまった。。
「なんで?別に私は。。」
いや
『いや、俺が言ったことを理解してくれたなら、それは最初から東堂の中にあった考えだってことだろう?だとしたら、同じだけ皆のことを見て考えていたんじゃないのか?それに、そもそも実行委員を引き受けたのも、一般組を気遣ってのことじゃないのか?』
完全に当てずっぽうだが、もしかしたら俺と同じなんじゃないかと思った。
「それを言うなら、あなたも同じなんじゃない?結果、引き受けたわけだし。」
『まぁ、そうだね。』
俺達は意外と似ている?かもしれない。。
「あぁ、ごめん、また話が逸れた。えっと、なんだったかしら?」
『んん、皆から意見が出にくい理由について、かな。』
まぁ、これが一番厄介な訳だが。、
「ねぇ、それならいっそ、正直に言ったらどうかしら?」
『え?正直にって?』
「そのままよ。意見を出すイコール責任を伴うわけじゃないって話をするの。皆で自由に意見を出し合って、その中から話し合いや多数決で方針を決める。その後は役割分担を私たちでやって、なるべく平等になるようにするから、遠慮なく意見を出してって言うの。つまり、言った人がやる。じゃなくて、言うのも皆、やるのも皆。よ!」
そうか!たしかに!
『いいかもしれない。みんな、受験のせいか、個人を意識しすぎてる気がする。意見を出しても、全部を自分でやらなくていいんだってちゃんと話せば、前向きになるやつも出てくるかもしれない。山本とか、委員長も、協力してくれるんじゃないかな?まぁ、』 『委員長はともかく、山本は頼りになりそうだし』
急に吹き出す東堂。
『なに笑ってんの?』
っていうか、東堂の笑顔って。
「なんでも、ない」
初めて見たかもしれない。つられて笑ってしまった。笑
「いいわ。最初のホームルームでちゃんと皆から意見を聞きましょう。それと、私達の考えと言うのもまとめておきましょう」
『OK。確かに、人に意見を求める前にある程度俺達の意見を言うべきだよな』
それができないから委員長は。。まぁ、いいか。
「じゃ、まず私達の意見は、発表は難しいということは決まりとして、展示か模擬店だと、どちらがいいんだろ。。」
『んー、さっきのことを踏まえると、無理矢理ではあるけど、展示なら東堂、模擬店なら俺の得意分野って、ことか。』
『なんか、うまいこと一緒にできないかな?』
「例えば?」
『いや、思いついてないけど』
ん?いや待てよ。。
『あぁ、そうか。模擬店だ!』
「いや模擬店て」
『そう!だから、メニューはみんなで考えるとして、その中に特別なドリンクを作るとか。9月だったらまだまだ暑いから、熱中症対策ドリンクとかをメニューに入れるんだよ。それなら、部活で使うからよく作ってるし。あ、自分用だけどな。それで、できるかはわからないけど、東堂には内装を作ってもらうんだよ。例えば、室内なのに野外っぽさを出すために屋根をつけるとか。壁を作ってその内側に調理場を作れば、目隠しにもなるし。』
これなら他のクラスとも結構差別化できるかも!!
「いいかもしれないわね。それなら、衣装班、調理班、制作班って分けやすいし。こちらとしても締め切りさえ守ってくれれば好きなようにやってもらってもいいかも。」
おぉ、それはかなり良いアイディアだ。
「じゃ、一旦まとめましょう。いいかしら?」
無言で頷く。
「私達としては、この文化祭においては、皆で意見を出し合って、皆で作り上げたい。(言ったら言った人がやるというわけではない。)だから、遠慮せずに意見を出してほしい。
それから、事前に私達で考えてみた一例としては、模擬店が良さそうだと思っている。特徴としては、熱中症対策のオリジナルドリンクと、本格派の内装。衣装や他のメニューは一切決めてないので、原案がこれでいいなら、皆の意見が聞きたい。と」
いい。
『かなりいいと思うな』
「これは、皆に言うのは、柳瀬の方がいいと思う。」
『え?なんで?』
とりあえず聞いてみた。
「なんとなく。柳瀬の方が、説得力のある言葉を選びそうだから。」
まぁ、発表するだけなら、そうかもな。
「それに、私は皆の意見が出るのを聞きながら、まとめに入っていたいのよ。」
それもそうか。
『まぁ、効率がいいのはその配役かもしれないな。俺は、それでいいよ』
「ありがとう。助かるわ」
やけに素直だ。。それに、
『いや、俺は別にいいよ。ちょっと意外だったけど』
「意外?」
これにも、無言で頷く。
『てっきり、自分が前に出るからサポートしてって言われるかと思ってたわ。いや、全然いいんだけどな。俺としても、どんな意見が出るかわからないような会議は、俺が前に出たほうがいいと思ってたから。逆に、今後、会議で決まったことを俺達だけで調査したり、詰めた話を皆にするのは東堂のほうがいいと思う。まとめた話をするのは、俺より全然うまいから』
多分。な。
「わかったわ。ひとまずこれで行きましょう。」
次のロングホームルームは6月一週目
『次のロングホームルームの直前に、もう一度打ち合わせをしよう。連絡先を聞いてもいいか?』
「うん、いいよ」
話もまとまったので、帰ろうとすると、当然東堂も帰る準備をし始めた。
なんとなく並んで教室を出て歩いていると。
『おぉ、肇』
恒星
「あ、夏織!」
これは山本だった
『早速、実行委員会か?』
恒星がどちらにともなく聞く
「うん」『あぁ』
思いっきり被ってしまったので2人とも黙った。
「夏織、お疲れ、柳瀬君も!二人ならうまくやっていけそうだね!」
な、に?あぁ、実行委員としてか。そうか、そりゃそうだ。
「う、うん、まぁ、なんとかね。」
何故か東堂と狼狽えたような答え方だった。
ここはあえて
『俺はともかく、東堂がいれば問題ないだろうな』
と落ち着いた風に答えた。
『いや、そんなことないだろ。肇は謙遜しすぎなんだよ。』
いやいや、自信があり過ぎるよりはいいだろう?
「そうよ。文化祭の出し物の案だって、柳瀬が出したアイディアばかりでしょ。」
東堂まで。急に褒めるなよ、恥ずかしい。。
それに、
『まとめたのは東堂だろう?』
東堂がいなかったらこんなに短い時間でまとまらなかっただろう。
『まぁ、ともあれうまくまとまったみたいでよかったじゃん。今年は部の発表は出ないんだし、思いっきりやれそうだな。』
恒星が、今度は東堂の方を見てそう言った。
「まぁ、そうね。うまくいくかわからないけど。」
二人はそのまま教室に入っていった。
俺達はそのまま玄関に向かう。
『お似合いだよな』
なんとなく口をついて出た。
『あの二人』
少しばかり、羨ましい。
「そうね。」
別に、恋愛なんて興味ないけど、今日の東堂との打ち合わせは楽しかった。
『今日はありがとう。久々にたくさん人と話したけど、楽しかった。東堂がすごい人だって良く分かった。さすが、恒星が認めるだけあるな。』
素直に言ってみることにした。本当に感謝している。
「わ、私もありがとう。。柳瀬が、思ったよりずっと頼りになりそうだって思ったわ。それに、楽しかった。これからもよろしくね。」
右手を差し出す東堂。俺よりもずっと華奢で、少し冷たい手をしていた。
よろしく頼むよ。
東堂。。
1人になって歩いていたら、自然と今日あった出来事を思い返していた。
これから、少なくとも文化祭が終わるまでは東堂と何度も打ち合わせをすることになるだろう。
俺は元々、男だ女だとうるさい方ではないけど、東堂は、信頼できる女性のように思えた。それに、なんというか、あのびっくりした表情や、笑顔は。。。
いやいやいやいや、ちょっと落ち着けよ、俺。
今の今までまるで恋愛にも女子にも興味がなかったのに、急に目覚めるなよ。気持ち悪いな。。
考えを逸らそう。
そう言えば、東堂って夏織っていうのか。
ということは、夏に産まれたのか?
いや待て、全然話が逸れてないじゃないか。。
まぁいいか、考えてしまうなら、おさまるまで考えた方がいい。。
今日はちょっと、初めて女子と沢山話をして、びっくりしているんだろう。
さて、落ち着いたら次のホームルームのイメージトレーニングだ。
俺達には後3回のホームルームしかない。
ちょっと集中していこうか。
さて、どうなることやら。
今日は実行委員を中心に行う、初めてホームルームだ。
『今日は、文化祭でのうちのクラスのだしものを決めたいと思っています。それから、皆から意見を求める前に、一つ言っておきたいことがあります。これは、実行委員会としてじゃなくて、クラスメイトとして。』
周りからの集中を集めるには、しっかりと前置きをした方がいい。
『今回は、俺たちの高校生活最後の文化祭になる。正直だるいと思っている人もいると思うし、受験でそれどころじゃない人もいると思う。でも、どうあってもこれが最後なんだ。俺が実行委員になったのはほとんど成り行きだけど、引き受けた以上はちゃんとやりたいんだ。だから、皆からのアイディアをちゃんと集めたい。なにも、アイディアを出したら、その人が全部やらなきゃいけないわけじゃない。出たアイディアを集めて、まとめて、割り振るのは俺たち実行委員が、なるべく平等になるようにやるから。受験や部活で大変な人も、できる限り素直にアイディアを出してほしい。あんまり協力できないから、とか、責任取れないから、とかそういうのはなしにして、遠慮なくアイディアを出してほしいんだ。全部は、かなえられないと思うけど。やっぱり最後だから、良い思い出にしたい。そのためにも、皆の意見やアイディアが、必要だと思うんだ。
当たり前のことを言ってとは思うけど、話し合いを始める前に、俺たちの考えをちゃんと伝えたかったので。以上。これからは実行委員として、話をしたいと思います。』
思ったことを素直に口にしただけだが、皆しっかり聞いて、受け止めてくれたようだ。
ありがとう。
『アイディアをくださいと言っても、中々出てきにくいと思うので、実行委員の二人から一つ出したいと思います。よろしいでしょうか?』
俺は、実行委員のアイディアである【特別メニューがある本格的な内装の飲食店】について説明した。
『まぁ、これは飽くまで原案の一つだと思ってください。皆の意見が揃った結果、全然違うものになっても、俺達は最後までやり抜くので。』
「はい」
出た委員長
「そこまで決めておいて他にアイディアありますかって言われても、正直言いにくいと思います」
言うと思った。委員長ねぇ、君は話し合いを上手く進行するための基本がまるでわかっていないようだ。
まぁいい、この手の発言についてもしっかり準備している。
『それについては』
『悪い!ちょっといいか?』
前田君?なんだ、急に。これは想定外だ。
『委員長の言いたいこともわからなくはないんだけどさ、皆この二人が考えてくれた原案以上の物って用意してるか?いや、嫌みじゃないよ?俺はさ、正直この二人ほど文化祭のこと考えてなかったんだわ。だけどさ、この二人がこんなに考えてくれてんだわ。今まであんまりクラスに関わってこなかったこの二人がね!俺は、個人的にはさっきの柳瀬の演説、結構感動したんだわ。だからさ、それ以上にやりたいアイディアがあるなら聞くけど、正直ないってんなら、ここは詰まんない意地張ってないで、この二人についていこうや!ちなみに、俺結構料理得意だからさ、調理班に入れてくれてもいいぜ!どうよ?』
委員長黙る。まぁ、当然だな。にしても前田、やるなぁ。一気に話の流れを作ってしまった。
『委員長、前田君、ありがとうございます。どちらも貴重な意見です。アイディアを出す前に、なにか言いたいことがある人はいますか?』
いない。
『では、意見がある人は、改めてお願いします。』
お、これは
『山本さん、どうぞ』
「私も前田君の意見、というか実行委員の二人の原案に賛成です。」
いいね!と前田。委員長はふてくされている。東堂からアイコンタクトがあった。
軽くうなずく。
『委員長、何かありますか?』
「いえ、意見はさっき言ったとおりですけど、アイディアはないので。」
『ありがとうございます。意見が言いにくくなってしまう人を心配していってくれたんですね』
一応はフォローしておく。実行委員だしな。
そろそろ、頃合かな、と思っていたら東堂からもう一度アイコンタクトがあった。
『では、このクラスの出し物は、実行委員の原案を元に進めてもよろしいでしょうか?賛成の方は挙手をお願い致します。』
手を挙げながら、前田が大声で
『よろしく頼むで!肇!!』
なんで関西弁なんだよ。笑
全員一致。先生すら手を挙げている。
よかった。
さて、ここからだな。
『では、今日はそれぞれの班の班長のみ決めたいと思います。その後、どの班に所属したいか希望を提出していただきます。全員の希望は叶えられないですが、なるべく考慮しますので。』
結果。衣装班班長山本さぎり。ウェイター班班長山井(委員長)調理班班長前田。制作班長兼副店長東堂。そして店長兼調理班副班長が、俺だ。
ホームルームの後は班長会議。先生も同席してくれた。
『すごかったな、肇!お手柄だったぞ!ホント、お前に任せてよかったよ!』
といいながら俺の背中をバシバシ叩く。
やめてくれ、痛い。
『俺はさ、肇はできるやつだと思ってたんだよな!』
お調子者だが、こういうやつは頼りになる。気がする。。
『ありがとうございます。前田君も、ありがとう』
見かねた東堂が仕切り直してくれた。
「さて、ひとまずクラス全員の希望がここにあるわ。班決めをしなきゃ。」
山本が答える。
「そうだね。まず、班長の皆が、欲しい人あげたらどう?本人の希望と一致していれば、決まりでいいんじゃない?」
たしかに。
「そうね、それがいいわ。」
『俺は、調理は副班長だから、人選は基本的には前田君に任せる』
いいながら前田の方を見ると
『水臭いなぁ、浩司でいいぞ!』
いきなりか笑
「柳瀬一人で大丈夫なの?誰か一人くらい、同じものを作れたほうがいいんじゃない?」
相変わらず東堂は俺を苗字で呼ぶ。まぁそれはさておき
『確かにな。それなら、同じ剣道部の主将がほしいかな。本人の希望も、うん。調理班だ』
「じゃぁ決まりね。さぎりは?誰かほしい?」
「そうだなぁ。。去年から同じクラスの何人か、ほしいかも。」
なるほど。
『同じ部活のやつほしいけど、料理できる女子も欲しいわ。下心じゃないからな?』
前田、ちょっとあからさまじゃないか?鼻の下伸びてるぞ?
「っていうか、夏織は?誰かほしい人は?」
こう言ったのは山本。俺も気になっていた。
「私は別に、組み立てだけやってくれる男子が数人いればいいわ。設計は基本私だから。うん、何人か希望もいるみたい。女の子も二人いるわね。この7人、もらっていいかしら?」
全員で顔を突き合わせる。ふと隣見ると、東堂の顔が近い。いや、近過ぎる。。同じタイミングでびっくりするなよ、恥ずかしいな。。
『うん、このメンバーで、いいんじゃないかな?』
なんとかこれだけ言った。
ということで、制作班は東堂を入れて8人。男5人女3人。バランスいいな。
「やっぱり調理班が一番必要になるよね。」
そうだな。委員長にしてはまともなことを言う。
『そうだね。残りの人数を考えると、調理はドリンクも含めて8人、ウェイター8人、制作8人、衣装6人。かな。』
「そうね。制作と衣装の人は、当日は調理とウェイターのバックアップね。」
初日からいいスタートだ。
『よし、じゃ今日はこのくらいにしよう。部活があるやつも、今からならまだ行けるだろう。俺もサッカー部に顔を出そうかな。じゃ、部活ないやつは早く帰るんだぞ?それから、肇、夏織、これからもよろしくな!』
俺はともかく、東堂まで名前。。先生、案外お調子者ですね。
「私も部活に行くわ。柳瀬もでしょう?」
『うん。大会近いから、そろそろ本腰入れないと。次のホームルームでは、模擬店を具体的にどんな形にするか、決めるんだよな。悪い、俺後2週間後に大会だから、それまではそっちに集中するよ。もちろん、アイディアだけは練ってみるから。』
次のホームルームは、一ヶ月後だ。
時間はある。
「うん、頑張って!私も、考えてみるわ」
応援ありがとう。それから。。
『ありがとう。あ、あと、さ』
思った時には呼び止めていた。でも、ちゃんと言いたいんだ。
「ん?なに?」
『今日はありがとう。東堂が見守ってくれてたから、心強かった。』
「い、いやいや、それは私のセリフよ!皆も言ってたでしょ?柳瀬だからできたのよ。私が言ってたら、あんなにうまくいってないわ」
そんなことはない。それに
『いや、俺が上手くやれたのは、東堂のおかげなんだ。ホント。もし、俺が失敗しても、東堂なら、絶対カバーしてくれるって思ってたから、思ってたことを、しっかり言えたんだ。だから、このありがとうは、受け取ってほしい。』
東堂は嬉しそうに、そして恥ずかしそうに聞いていたけど、清々しい顔をしていた。
言っている俺も清々しい気分だ。
「う、うん、わかった。どう、いたしまして」
それともう一つ。今思いついた笑
『大会、再来週の日曜なんだ、もしよかったら、見に来てほしい。もしこられなくても、終わったら連絡するよ。文化祭のこともあるから。』
恥ずかしそうに笑っている。かわいいな。
ん?
「わ、わかった。その、空いてたら、行くわ。あと、私も、アイディアが浮かんだら、連絡するわ。えっと、忙しかったら、返事は、別に良いから。」
かわいいと素直に思ってしまった。。恥ずかしい。。
『大丈夫だよ。学校では会えるんだし。』
東堂。。今なら誰もいない!チャンスだ!
「そうね。じゃ、もういきましょう!また明日ね。」
『うん、また明日!じゃぁな、夏織!』
走り出した!何がチャンスなんだよ俺!?
なんでわざわざこんな恥ずかしいことをしてるんだ!!
部活を終えて冷静になると、なんとも自分らしからぬ1日だったと少し反省した。
勢いで女子を名前で呼ぶなど。。しかもかわいいだと?
いや、それは仕方ないか。。
夏織は、とても尊敬できるし、信頼もしているし。。。
かわいい。
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