第7話

 僕の肩越しに特徴あるハスキー声が聞こえた。

「何をさっきから、くだらないことで熱くなっているんだか。」

 見ると、くだらないと言いつつも好奇心溢れる表情で廣澤薫が笑っている。

「廣澤!くだらないとはなんだ。お前の名前だって画数でいえばかなりのヘビー級じゃないか。」

 遠藤がそう言うと、廣澤は勝ち誇ったように言い放った。

「おあいにく様。私は正式な書類以外は簡略文字を使いますので。ちゃんと書けば苗字だけで31画ですけれども広も沢も簡略すればたったの12画、フルネーム28画ですのよ。おほほほ。」

 学年でも成績トップクラスの彼女はサラサラの黒髪をなびかせて笑っている。

 遠藤は拳を机に叩きつけながら言った。

「く、くそう。簡略文字を適宜使い分けるとは・・・!」

 林原も納得顔で席に着いた。

「俺らにはない問題回避策を身に着けているとは、さすが廣澤だな。」

 遠藤は僕の方を向いたまま、まだ悔しがっている。

「く・・・悔しいが、さすが、としか言えんな・・・俺にもこの画数多い問題の解決策があればいいのだがなぁ・・・。」

 そんな遠藤の背後にふと人影が現れた。

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