第19話~終~ 吹かないならつくればいい 風だって
「クレア シノア」
「な~にチャド?」
「3人で【風の山】に行こうよ」
ある日チャドは唐突に言った
2人はあの実がまた食べれるかもしれない
断る理由はなかった
3人は集落の外に出た
3人は手を繋いだ
ふぅ~
黄色い風は3人を風の山まで運んだ
そのまま山頂に着いた
その時の風の山は黒い雲に覆われ
風が強く吹き 雨も強く降っていた
しかし何故かクレア達に影響はない
クレアがその場に居た先客を見つけた
マリアだ
直前にチャドはマリアに伝え
マリアを先にこの場所へ連れてきていた
マリアは荒れた空を見ながら呟いている
その横顔は泣いてるかのように見えた
「おや。来たんだね」
「お婆ちゃん?!こんなところでなにをしてるの?!」
「....昔の友達と話していたよ」
「?」
「いやいや、なんでもないよ。私もここに来てみたくなってねぇ、チャドに連れてきてもらったのさ」
「そっかぁ。でもなんか変なんだよ」
「いつもぽっかり穴があいている空には雲がいっぱいだし、雨も風も吹いている」
「前に来た時はこんなんじゃなかったんですよお婆様。ね?チャド」
「うん」
「そうかいそうかい」
マリアは、クレアとシノアの顔をなにか言いたげな顔をしながら見つめていた
「どうしたの?おばあちゃん??」
「...いや、なんでもないよ」
そう言うと、チャドの顔を見つめて、
「..そろそろかね」
チャドは答える
「....わかったよ」
ふぅ~
クレア シノアに向け黄色の風を吹いた
え?なに?!
黄色の風は光揺らめき
二人の瞼はだんだん閉じていった
ごめんよ クレア シノア
二人は緑色の地面にゆっくりと倒れた
これでいいんだ
末長く幸せに..ね
マリアとチャドは向き合った
さぁて どうなることやら、、
いくよ マリア
あぁ お願い チャイルド
地面に倒れた2人は、意識朦朧としながらも重たい瞼を必死で開けようとしていた
声は出ず身動きも出来ない
ただ見ることしか出来ず
黙って立っている二人を見てるしかできなかった
マリアは目をつぶっている
チャドがこっちを悲しげな顔で見ていた
両耳の紫色のイヤリングが揺れている
チャドはマリアの方を向いた
そして右手の拳を口元に持っていき
上を向けてひらいた
すると左手も同じ仕草で口元に
チャドの口の前で空に向けて開かれた両手
両手を水を 救う ような形にした
ふぅ~
両手から空へ つむじ風が舞い上がる
それはキラキラ光る粒子状の風になり
風の山全体に旋風と共に穏やかに降り注ぐ
光る粒子の風は橙にも金にも見えた
その風が渦を巻き
チャドとマリアだけを包み込む
その姿は気のせいか透けてきている
そのまま光は強くなり
クレアの意識は遠退いていった
クレアは目覚めた
風の山の上で
横のシノアはまだ目覚めてない
目の前には小さな赤ちゃん
クレアは抱き上げた
その下に光るなにかを見つけて
それを手に取った
紫色のイヤリングがひとつ
クレアは空に掲げ
表情を変えず
じっと見つめた
空は丸く晴れている
無風
左の腕の中にはとても小さな赤ちゃん
右手にはイヤリング
クレアはそれをそっとしまい
シノアを起こした
一つの山がある
その山は石や岩に覆われていて
草木などは一切生息せず、また虫や小動物などの生命体も見当たらない
その山の周辺はあふれんばかりの緑がひろがっている
他にも色々な山はあるが、この山だけが異質な雰囲気で存在している
そんな荒れた山
その山は雨や風などの気候の変化も全く見られない
周囲からその山を見れば、その山の上空だけは常に快晴
その山に近づくと何もかもが停止しているような感覚になり
時間の概念が無いのかとさえ感じてしまう
その荒れた山を遠くに望める
森の奥深くに人々が住む集落があった
そこに住む人々はその風の吹かない山
荒れた山をいつからかこう呼び出した
【風の山(カゼノヤマ)】
森深くにある集落
小さな輪が立ち並ぶ とある広い庭
黒髪で癖毛 瞳が赤色の女の子
銀髪でストレート 瞳が青色の女の子
この2人は同じ紫色の指輪をはめていた
その傍らには揺り籠で揺れている女の子
揺れている女の子は スヤスヤ寝ている
女の子の右耳には同じ紫色の石のイヤリング
とても穏やかな日常が 垣間見える
そこに 一陣の風 その風は太陽の光で
黄色に見える いや 感じれるかもしれない
温かく穏やかで 良い香りがする風
2人の女の子は寝ている女の子に目をやる
スヤスヤと寝ているその子を抱きかかえ
2人は風上の方に歩き出した
その先には料理をする為の石窯だろうか
その近くにあるテーブルには色とりどりなお菓子が並べられていた
「そろそろおやつにしましょう^-^」
大人びた女性が声をかける
「美味しそうないい匂いぃ~♪」
「ほんと♪良い香りだわ♪」
寝ている女の子を、テーブルの近くに用意された小さなベットに寝かせて椅子に座った
「最近とても上手に焼けるようになったのよ」
「私だって上手に焼けるもん!」
「そうかい そうかい^-^」
「そうだよ!私のだって美味しいよ♪」
「あら?姿が見えないわね?」
「あそこにいるわよ」
石窯の方からこちらに歩いてきた
手には焼きたてのクッキーを持って
その子の耳には
その男の子の左耳には
綺麗な紫色のイヤリングが輝いていた。
風のリグレット バラバラな薔薇 @barabaranabara
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