第15話 嵐の後に
マリアは時折涙を流しながら、それでも最後まで話終えた
「...そのあとは、どうなったの?」
「あぁそうだね」
「目の前が黄色い光に覆われた瞬間までのゼノアに関する記憶が抜け落ちていたんだよ」
「そのあとはハッキリ覚えている」
「気がつくと風の山の下に倒れていたわ。目が覚めるとそこには小さな赤ちゃんがいたの」
「それが、、カルア?クレアのお母さん?」
「そう、カルアだよ」
「その時の私は何が起きたのかさっぱりわからなかった。ただ目の前の子供は確かに私の子供だとは確信していたね」
「カルアを抱き上げ、見上げるとそこには風の山があった。なんだか不気味に思えてねぇ、、逃げるように家に帰ったのさ」
「そうなんだ...」
マリアはチャドの顔をじっと見つめた
「あなたの髪の色 黒色と銀色が混ざったような綺麗な色ね」
チャドは黙ったまま自分の髪を触りはじめた
「...やはり私の知ってるあのチャイルドではなさそうね」
「...うん。違うよ。でも僕の名前もチャイルドなんだ。長いから咄嗟に略してチャドってクレア達に言っちゃったけど、、」
「そうかい。それじゃあチャドはクレアとシノアのチャイルドなんだね?」
「うん。そうだよ」
チャドは真っ直ぐマリアの目を見つめ、ハッキリと答えた
「そうかい。どおりでクレアとシノアの髪の色が混じって見えるんだね」
チャドは少し照れ臭そうに
うん。と言った
「マリア、、いままでゼノアにの事忘れてたんでしょ?いつ思い出したの?」
「クレアに風の山に行きたいって言われた時かねぇ。その時からだんだんと思い出してきたんだよ」
「そうなんだ。」
「それじゃあ、カルアも今はクレアが産まれた時の記憶が無くなってるの?」
「断言できないが、、そうだろうねぇ」
「カルアだけじゃなく集落のみんな、そんな感じなんだろうね」
「そうなんだ、、」
「チャド。あなたも使命があるんだろ?」
「うん」
「、、どうにもならないのかい?」
「、、、うん」
「、、そう。」
「全部話したうえでもう一度聞くけど...」
「....そろそろなのかい?」
「チャドが消えてしまう。それにクレアとシノアの残り時間も」
「....うん。でもすぐにじゃないよ!まだ、、だと思う」
「そうなのかぃ」
「僕にはなにも出来ないよ。それが僕の産まれてきた意味だから」
「そうなんだろうね。」
「チャド、私はね。ゼノアを思い出してからずっと後悔してるんだよ」
「なぜあの時私が消えなかったんだろう。なぜ私を選んでと言えなかったんだろう。ってね」
「正直赤い風が憎いよ」
「.....」
「いやいや、ごめんねチャド。あなたが憎いんじゃないのよ。その変えられない運命の赤い風だけが憎いのよ」
「あなたのつくる黄色い風は素敵よ。みんな笑顔になるし幸せにもなるわ。右手の赤い風も使いたくないようだしね」
「うん。出来るなら右手なんて使いたくないよ。僕も嫌いなんだ。この赤い風」
「そうかい。辛いんだね。チャドも」
「うん」
「どれだけ残された時間はあるんだろ?」
「ん~僕にもぼんやりとしかわからないんだ。でもまだ時間はあるのと思う」
「そうかい。それを聞けてよかったわ」
「チャド。1つお願いを聞いてくれるかしら?」
「なんだい?」
「3人で風の山に行く時がきたら、、私に先に教えてくれないかい?」
「え?」
「大丈夫、誰にも言わないからね」
「う~ん」
「、、いいよ。わかった。マリアには教えるね。色々僕でも知らなかった話を話してくれたしね」
「ありがとうね チャド」
「また今度二人で話せるかい?」
「うん。わかったよ」
「ありがとう」
「さて、長くなってしまったね」
「部屋に帰ってゆっくりおやすみ」
「うん。話せてよかったよ」
「おやすみ マリア」
「はい おやすみなさい」
チャドはクレアの部屋に静かに戻った
「さて、、どうしたもんかね、、、」
「あなたならどうしたかしら?ゼノア...」
マリアは庭に出て、そこから遠くに見える月明かりに照らされて輝いて見える風の山を、うらめしそうに見ながら
もうこの世にはいない
愛しのゼノアに問いかけた
部屋に戻り、マリアの話を思い出す
グーグーと寝息をたてている二人
チャドはなにも言わずその二人の髪をそっと優しく撫でる
...わかってはいたけど、マリアの話を聞いたら怖くなっちゃった....
クレア..シノア..
どちらが居なくなってしまって、それを思い出した時、残された方はどんなに悲しむのだろう.. ...
そんなの嫌だよ..2人にはずっと一緒に居てほしいよ. . .
僕の我が儘だけど.. .
できる事なら.. . .
僕も一緒に居たいよ.....
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