第14話 無慈悲な選択


「どっちがいい?」



「え?」



「マリアかゼノア。僕はどちらか一人を選ばなくちゃいけないんだ」



「どうゆうことなの?!選んでどうするの?!」



「そうだね。なにもマリアとゼノアにはなにも解らないよね」



「最後だから、、全部話してあげるよ」



そう言うとチャイルドは全てに答えた




「僕のつくる風はね」



「左手の風は誰かを助けたり、癒したり、なにかをつくるための風なんだ」



「右手の風はね、攻撃したり、傷をつけたり、命を奪うための風なんだ。だから右手の風はね、今まで使いたくなかったんだよ」



「君達はこの実を食べた。そして僕が産まれて君達の前に来た」



「でも僕はまだサナギのようなもの。成虫に成るためには最後の儀式が必要なんだ」



「その儀式はね」




【この実を食べた1人の命を奪う】




「それが僕の逃れられない使命」




「それが終われば僕は消えていなくなる」




「そして僕が消えたあとに、、僕じゃない、、、」





「君達2人の子供が産まれるんだ」





「、、、そんなのって、、」



「うん。納得も理解もできないよね。こんな無慈悲な事をしなくちゃならないなんて」



「でもね、それが僕が産まれた理由でもあるんだ。僕の意思じゃないんだよ。どうにもならない定めと言うか運命なんだよ」



「神様がいるのならなんて残酷なんだろう」



「どうにもならないの?!他に選択肢は無いの!?」



「無いね。僕は産まれた時からその使命だけは忘れたくても忘れられなかった。どうしようもないんだ」



「もし、、、」




「もし、、どちらか選ばなかったらどうなるの?」




「その時は2人両方の命が奪われる」



「そんな、、、」



「選択する時間は限られている。その期限が今日なんだよ」



マリアは理解しようとしたが、理解できる訳がない!どうにかならないかと頭をフル回転させていた



「....ねぇ。チャイルド」



「なんだいゼノア?」



「もし...私が死んだらお母さんは悲しむのかな?」



「いや、大丈夫だよ。この右手の風で命を奪われた人に関する記憶は忘れ去られる」



「永遠に??」



「ん~.....いや、永遠にでは無いみたいだ。でも思い出したとしても何十年も先みたい」



「ごめんね。僕もはじめから植え付けられた記憶しかないからよくわかんないよ」



「そっかぁ。じゃあひとまずは誰も悲しむ事はないのね」



そう言いながらゼノアは悲しげに微笑む



「それだけは確かかな。時の保証はできないけど」



「ゼノアっ!!なにを聞いているの!!?」



マリアは声を荒げゼノアの両肩を掴んだ



ゼノアはその両手をつかみ、自分の頭へといざなった



「マリア。私の髪好き?」



そう言うとゼノアは優しく微笑んだ



「え!?だ、大好きよ!」



「どんなところが?」



「この真っ黒で美しい色もだし、癖毛で猫毛なところ!!とにかく全部よ!!」



「そう。嬉しいわ♪^-^」



そう言うとゼノアもマリアの髪を撫ではじめた



「私もマリアの髪、大好きよ。ううん。髪だけじゃない。全部よ」



「愛してるわ マリア」



そう言うとゼノアは



マリアの口にそっとキスをした



「え??えっ?!なに?!?」


 


「ふふっ♪こうやって自分から口を重ねるのは初めてね♪」



「あ、前に1度だけあったわね」



「あの時の幸福感は.. .ずっと忘れられないわ^-^」




「あの果実を二人で食べた時のね^-^♪」




そう言うと近くに置いてある果実を見つめ



ゼノアは微笑んでいた



「え?!覚えていたの?!私だけかと思っていた!!?」



マリアはあの口と口が触れ合った衝撃と、重ね合わさった時の快感を思い出した



なによりそれはマリアだけが感じてるものだとばかり思っていた。そしてそれをゼノアも共感してくれていて、尚且つ覚えていてくれたなんて



その瞬間マリアはゼノアに抱きつき、ワアワア泣いてしまっていた



「あらあら、泣き虫さんね。マリアは」



色々言いたかった



沢山気持ちを伝えたかった



でも気持ちが溢れ言葉に出来ず



マリアはただ泣く事しか出来なくなっていた




「チャイルド ここまで来て」



ゼノアは小声で言った



チャイルドは2人に近寄る



「なんだい?」



「私でお願い」



「いいんだね?」



「うん。お願い。早く」




「この子が気づく前に、、」




「..わかった」



マリアはゼノアにもう離さないとしっかりと抱きつき、ゼノアの胸元でワアワア泣いていた



ゼノアは小さな声でチャイルドを自分の元に呼び、チャイルドの耳元で囁いた




それを聞いたチャイルドは二人から離れた



右手を1度大きく天に掲げ、そしてゆっくりと自分の口元でひらいた




ふぅ~




右手からつくられた風は突風となり二人に吹き付ける



「?!」



「え?!ゼノアァッ!!?」




突風で体を揺さぶられ、我に返ったマリアは顔を上げた。すると抱きしめていたゼノア全体が赤っぽくなっていた



「まっ、まさか!?チャイルドォォ!!!」



「ゼノアの意思を尊重しただけさ」



そう言うとチャイルドは赤い風に覆われ、そして最後には黄色い風に変わると共に



チャイルドは忽然と姿を消した




「ゼノアっ!なんで?!そんな勝手に?」



マリアは泣くのを必死に抑えなんとか声にする



「ごめんねマリア。あなたを愛しているからよ」



「わ、わたしだっておなじよっ!!愛してるわ!!!!」



「ふふっ♪嬉しいわ^-^」



そう言うとマリアの顔を撫でた。その手は少し冷たくなっていた



「なんで?!わたしもいくよ!?!チャイルド!!早く私にも赤い風を!!!」



「もうチャイルドはいないわ」



「なんでよ、、私でもよかったじゃない、、、!」



「ダメよマリア...」



「マリアがいない世界では私は生きていけないわ..」



「私だってそうよ!!ゼノアのいない世界なんて考えられないよ!!」



「大丈夫よ。さっきチャイルドが言ってたでしょ?私の事はすぐに忘れてしまうって」



「そんなの、、そんなの自分勝手過ぎるよ、、、」



「ごめんねマリア。私の最後のわがまま」



「うっ、、うっ、、、」



「私とマリアの子供 きっと可愛いんだろうな、、、」



それを聞いた途端 マリアは号泣した



「私達の子供の顔が見れないのだけは残念だわ」



「でも大丈夫。マリアがいてくれるもの」



「二人でず~~っと、幸せに....ね」




「ゼノアっ、、ずっと、、ずっと!、、愛しているわ!!」



マリアがそう言い終わると



ゼノアの体は



黄色い風にゆっくりと覆われてゆき 




最後には目映い黄色い光を放ち




ゼノアの姿は消えてしまった






永遠に愛しているわ 大好きなマリア 


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