第13話 確認と昔話

コンコン




「お入りなさい」



チャドはゆっくりと扉をあけ、部屋の中に入り扉をしめた



「よく来たね」



その部屋の中にはお婆ちゃんがいた



「どうしたの?僕だけに話って」



チャドが部屋でお風呂の順番待ちをしてる時に訪ねてきたのはお婆ちゃんだった。チャドに


「あなたにだけ話したい事があるから、夜中に一人で私の部屋に来なさい」とだけ言い残して行ってしまったのだ



「いやな~に、、、」


お婆ちゃんはなにか言葉を選んでいるかのように考えていた


「私の名前を知ってるかい?」


「?」


「いや、お婆ちゃんとしか、、」


「そうかい。私の名前はマリア。聞いた事あるかい?」


「はじめて聞いたよ」


「そうかいそうかい」


そう言うとマリアはまた考え込み、言葉をひねり出した


「単刀直入に言うと、、、」



「....そろそろなのかい?」


チャドはドキっとした


「おや、その様子じゃそうみたいだね」


「なんのこと?よくわからないよ」


チャドは動揺を隠せずにいた


「そうかい」


チャドは黙っていた。と言うかなにも言い出す言葉が見つからなかった。その重苦しい雰囲気の中、マリアは口をひらいた



「そうだねぇ....」



「私の若い頃の話でもしようかね」




そう言うとマリアは静かに語りだした

 



マリアの若い頃の話を、、。





マリアにも大勢友達がいた



その中でもクレアにとってシノアみたいな常に一緒にいる1人の親友がいた



名前はゼノア



髪は黒色で全体的に癖毛



雨の日などは頭中からピョンピョンと毛が飛び出たりしていた




マリアの住む、現在のクレアも住む集落から遠くに見える



風の山



若かりしマリアとゼノアにとっても、当然かのように興味の対象になっていた



周囲の大人達からは当たり前のように、風の山は危ないから行ったら駄目だと言い聞かされていた



しかし 若さは罪



興味の方が勝り マリアはゼノアと共に



風の山に行ったのだ



そこからは、そう



クレアとシノアが経験した事とほぼ同じ体験をマリアもしていた



風の山の山頂で



ゼノアとマリアで



あの不思議な果実を食べた



すると、気がつけば傍に人が立っていた





「あれはお前じゃないのかい?」




「チャイルド?」





「...........」




「まあ、話はまだ終わらないよ」





マリアとゼノアの前にあらわれた人影はこう言った



「僕の名前はチャイルド。君の名前は?」




こうしてマリアは出会い、3人で遊ぶようになった




「そういやチャイルドも風の山の向こうに住んでると言っていたかねぇ」




チャイルドも風をつくれた



チャドと同じく両手から。しかしいつも左手しか使わなかった



「右手はね 使うのが怖いんだ」



チャイルドがそう言ったのを思い出すかのようにマリアは話す




こうして



マリア ゼノア チャイルド



この3人は幾つかの日々を共に過ごす事になった




「おやおや。ここまではどこかで聞いた話ににそっくりじゃないかい?」



マリアはチャドに問いかける



「....そうだね」



と、チャドは声を振り絞る



「ここからが大事なんだよね.....」





マリア達3人が共に過ごすようになってから早数ヶ月、もうすぐ1年と思われるくらい時が経過していた



その頃になるとチャイルドは、じっと右手を見つめる事が増えていった



すると、ある時チャイルドは言った



「マリア ゼノア」



「久しぶりに風の山に遊びに行こうよ」




当時のマリアはなんの疑いもなく、またチャイルドが自分からどこかに遊びに行きたいと言うのは初めてだったので喜んで承諾した




3人で風の山に向かった



それまでは快晴だったのだか、風の山に着いた途端に雨が降りだした



風の山に...雨?



マリアはなにか疑問に思いながらも風の山を登りだした



登るに連れだんだん雨が強まり、風も吹いてきた。危ないから帰ろうよ!とチャイルドに言うと、



大丈夫だよ。体は濡れてないし風も特に感じないだろ?



そう言われて気付いたのだが、体は濡れておらず風にも押されない。山頂に着いた頃には


嵐になっていた



風が吹かないはずの山が今は



嵐の山  



しかし不思議な事にマリア達にはまったく影響はなく、普通に行動できていた



山頂に着き歩いていると窪みが見えた



それをゆっくりと降りていき、中心に近づくと、前と同じように緑色の盆上の上にたどり着いた



その中心には



あの果実が置いてあった




「着いたね」



「この果実が食べたかったの?」



「いや、この実は今食べても意味がないよ」



「「??」」



「美味しくないってこと?」



「いや、味も香りも極上だとおもうよ」



確かに前と同じ香りが漂っている



「じゃあ意味がないってどうゆうこと?」



「それは、僕が今ここにいるからって事」



「わからないよ?!ちゃんと説明してよ!」



「そうだね。うん。」



「マリアとゼノア。2人でこの実を食べたんだよね?」



「そうだよ??」



「二人でこの実を食べたから、僕はここに来る事ができたんだ」



「つまり、産まれたって事」



「えっ??!」



「だから僕が存在してる状態でこの実を食べても次の僕は産まれてこないんだよ。僕は1人しかいないからね」



「だから意味がないって事」




「「???」」



「でもね僕が産まれて、それで終わりじゃないんだ」




「最後にしなくちゃならないことがある。だからここ、風の山に来たんだよ」



チャイルドは右手を見つめながら淡々と話した





「何をするの?」






「マリア。ゼノア。」





「どっちがいい?」



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