第12話 時は過ぎ
「チャド!あの木の実とれる?」
「うん。任せて」
左手の手のひらにふぅ~っと息を吹きかける
風が舞いおこり、その風は高い木の枝にぶら下がっている木の実をフワッと持ち上げゆっくりと手元に運んできた
「ありがと♪」
クレアは満足そうにその実を持ち上げて眺めた。その回りでは数人の友達がいつもの光景のように気にせず遊んでいた
「クレア あんまりチャドに頼ったら駄目じゃない」
「僕は全然気にしてないよシノア」
「もぉあなたの風を便利道具だと思ってるもの
「そんなことないよ~♪ただ手伝ってもらっただけだもん♪」
チャドと風の山で出会ってからはや数ヶ月
もうすぐ1年経つのではないか?と思われるくらいに時は過ぎた。
そのかんに、チャドは集落の人達と打ち解けていた。チャドがつくる風も皆見慣れた様子でそれが日常となっていた。
チャドは日にちの間をあけず、ちょくちょくクレア達に会いに来ていた。時にはシノアの家にも泊まったり
クレア シノア チャド
この三人の仲はかなり深まっていた。
「ねぇ。1つ聞いてもいい?」
「なんだい?」
「風をつくる時っていつも左手よね?」
「そうだね」
「でも、私達がはじめて見た時って右手じゃなかったかしら?」
「あ!そう言えばいつもチャドは黄色の風を出してるね!はじめは赤い風だったような、、」
「そうだね。どちらの手からも風はつくれるよ」
「そうよね。でもあの時以来赤い風を見てない気がするの」
「うんうん!そういやそうだね」
「......」
「なにか理由があるのかしら?」
「...右手の風は..あまり使いたくないんだ」
「どうして?」
「......。ごめん。どうしても使いたくないんだよ」
「、、そう。ごめんね。言いたくないこと聞いちゃったわね」
「ごめんねチャド!ただ気になっただけだから!気にしないでね」
「うん」
今日は久しぶりにクレアの家にいつもの3人でお泊まり会
「お母さん~今日お泊まり会するね♪」
「またいつもの2人だね?よぉ~し!お料理頑張りますか♪」
カルアは当たり前かの様にシノアとチャドの好みの料理を覚えていた。もう毎週のように二人が泊まりに来るものだから手なれたものだ
みんなで楽しく食事をし終え、お風呂の時間
前にチャドを先にお風呂に入らせ、あとからクレアとシノアが乱入した事があった。チャドは驚き湯船の中に隠れるようにずっと入っていた
毎度の事のようにその両脇に入り、三人で湯船の中。その頃には普通に、
「私も全然大きくならないなぁ」
「うん」
「一緒に大きくなるために頑張ろ♪」
「うん」
チャドは壊れたおもちゃのように何を話してもうん、うん、としか答えなくなっていた。
クレアとシノアがお風呂から先にあがって、着替えている時も、ずっとうん。うん。とぶつぶつのぼせながら呟いていた。。
それからチャドは警戒して先にお風呂に入りたがらない
「もぉチャドはうぶなんだから♪」
「こらこらクレア いじめちゃだめじゃない。チャド~私達先に入ってくるね♪」
「ごゆっくり~」
二人はお風呂場に行き、楽しそうな笑い声が聞こえてくる
部屋でチャドが寝転んでいると、
コンコン
部屋の扉をノックする音が聞こえる
ノックのあとゆっくりドアが開き、こう聞こえた。
「チャド?いるかい?」
二人の後にチャドもお風呂に入り、ピンクのフリフリなパジャマに着替えた。チャドもいつしかこのパジャマを気に入っていた
部屋で布団に入りいつものように座談会
すると、今日は疲れたのだろうか?
クレア シノアはいつの間にか寝落ちしてしまっていた
実はチャドがこっそり左の掌に息を吹きかけ、眠気を誘うように誘導していた。それを知らず二人はゆっくりと夢の中に落ちていった
二人が寝静まったのを確認したチャドは、ゆっくりと布団から出てクレアの部屋を出た
音を立てないように忍び足であるき
ある部屋のドアの前で立ち止まった
コンコン
「お入りなさい」
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