第9話 来訪者
「チャド 遊びに来てくれるのかなぁ」
「だれなのそれ?」
「私とクレアの友達よ」
広場の大きな木にあるブランコに乗りながらクレアはそう言い、その横で座りながら数人で花の冠を作りながらシノアが答える
「へぇ。よその子?どこで知り合ったの?」
「内緒よ♪ねぇクレア」
「うん、内緒~♪」
「ケチ~」
ほのぼのと笑い声が聞こえる広場。のどかな日常だ。すると誰かが言った
「ねぇねぇ!誰かくるよ?」
みんなが声の指す方を見ると、そこには見覚えのある姿があった
今日は太陽が一段と輝き、髪の毛がグレーと言うより銀色っぽく見えた
「チャド!!」
クレアはブランコを大きく揺らしそのまま大きくジャンプしながら降りて、チャドに向かって大きく両手を降った
それに気付き、チャドはゆっくりとクレア達のいる場所に近づいてきた
「あの子がチャド?!」
「紹介してよ♪」
乙女達が久しぶりに見る外部の人を見つけたもんだから色めき立つ。チャドからすればみんなこっちを見ながらなにか言ってはしゃいでるとわかる。チャドはさらにゆっくり歩き始めた
「こらこら!チャドが怖がってるじゃないの!まず紹介しなきゃ!」
だって~ も~ え~ なんかよくない?
等々声が聞こえる中チャドが到着。チャドの両脇にクレアとシノアが立ち、
「この子がチャドよ^-^遠くから遊びに来てくれたの♪」
「みんな仲良くしてあげてね♪」
「「「ハァ~イ どこから来たの? 何歳? 好きな食べ物は?何色が好き?木の実食べる?どんな歌が好きぃぃ??」」」
怒濤の質問責め。チャドはアワアワと困りながらあたふたしていた
「ハイハイハイハイ!!みんな!私達3人はこれから外に遊びに行ってくるわね!」
ワタシモイク!ワタシモ!アダスモ!
「今日は久しぶりにチャドに会ったの!また今度ね」
ェ~ オウボウダァ~ ケチ~ ナンデヨ~ ケッ
「みんな!今日はゆっくりチャドと遊びたいの!ごめんねぇ」
そう言うと両側からがっちりチャドの手を握りそそくさと三人は逃げだしたのであった
集落の外にある少しひらけた森の中。そこには鳥達が沢山いて常に鳥達の歌が聞こえてくる日溜まりがあった
そこら辺にある木の根本に座り込んだ
「ごめんねぇ みんな節操なくて」
「あ、うん。ちょっとビックリしたけど」
「まぁ気にしないでね。みんな悪気はない子達だからさ」
「うん。大丈夫だよ」
鳥の歌声を聞きながらチャドは微笑んだ。その髪はいつの間にか黒っぽく見えていた
「チャドの髪って不思議よね。なんか綺麗」
クレアはチャドの髪を触った。チャドはなにも動じず平然としてる。それを見ていたシノアも反対側からチャドの頭を触る
「あら、クレアの髪みたいな肌触りね」
「そお?シノアみたいな感じもするよ?」
2人は何度も確かめるように髪を撫でる
チャドはボォ~と鳥達を眺めていた
「でもよく来てくれたね♪迷わなかった?」
「うん。すぐにわかったよ」
「疲れてない?お腹は空いてない?」
「ありがとう。平気だよ」
話ながら撫でているものだから自然に二人ともワシャワシャしていた。チャドは気にもしてもいない
ピ~! ピ~!
「あ、鳥がなんか危ないよって言ってる?!」
クレアがそう呟くと同時に森の奥から猪のような動物が飛び出してきた
クレアとシノアはチャドの頭をワシャワシャしてて気をとられていたせいで若干反応が遅れてしまった
チャドはワシャワシャされたまま
右手を口元で広げて
ふぅ~
と、息を手のひらに吹き掛けた。するとそこから勢いよく風が吹きだしクレア達目掛け突進してきた動物をフワッと浮かせた
風はそのまま高く持ち上げ、そしてそのまま地面に叩きつけた。甲高い悲鳴みたいな声をあげ、動物はそのまま今来た道を逃げ帰っていった
「、、、今のチャドがやったの?」
「、、掌から風が吹いたように見えたけど」
「、、、うん。僕がやったよ」
チャドは下に目をやり落ち込んでるようだった。ワシャワシャされてた二人の手はピタリと止まっておりそのまま動かないでいた
怖がらせちゃったかな?などど考えながら下を見ていた目線をあげるとそこにはなんと
まん丸な目玉が4つあった
「すっ、すっごぉぉぉぉい!!♪」
「風がつくれるのっ?!興味深いわっ!!」
そう言いながら二人の手はワシャワシャしはじめた。興奮してるもんだからもぉ...ワシャワシャも止まらない
「なんで教えてくれなかったの?!」
「いや、言うタイミングが無かったっていうか、、」
「もう一回やってみてよ!」
チャドは笑顔で頷き、左の手のひらを口元でひらき
ふぅ~
と、軽く息を吹きかけた。
息を吹きかけられた左の手のひらから風が吹き出し、その風は3人を取り囲むかのように舞いだした
その風の中にいるクレア達は不思議と風を感じず、暖かい絹にくるまれている感覚に陥った
すると鳥達がその風に乗り優雅に周りを羽ばたきながら歌い出した
「すごい、、、神秘的ね」
「なんか..さっきの風とはまるで別物みたい」
「え?」
「今吹いてる風は黄色っぽく見えるの。でもさっきの風はなんか赤色っぽく見えた」
「そうねぇ、言いたい事はわかるわ。そんな風に感じるわね」
2人はそう言いながら舞い飛ぶ鳥達を眺めていた
その横でチャドは悲しげな儚い笑顔でいる
3人はしばし その光景を楽しんだ
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