第61話番外編 戸村には3分以内に (33話と34話の間くらい)

 最近、戸村は動画をあげるSNS投稿にお熱だ。お料理動画が流れてくるのをフォローして眺めているうちにハマりかつ自分もと始めたらしい。


「清潔感が大事!」とか

「写真映え!が命」だとか

「できるだけ毎日あげる」

「公式感が欲しい」

「動画を組み合わせて90秒」

「キャッチーな絵が欲しいねー」


そんな事を熱く語ってくるなぁと思ってたら、


「タケちゃんちょっとそこの衝立ついたての位置変えよっかー。あっ蟹ちゃんライトくれる?安田ちゃんそこ盛り付けなってないよー。ヨシコ映るなよー。」


ここは某県立A1高校家庭科室。クッキング同好会。


 会長は時々カマ口調になる戸村凌(とむらりょう)。科学部副部長で理科室で実験器具を使ったクッキングをこよなく愛するその果てにこの同好会を結成してしまったらしい。


 家庭科の先生が面白がって許可を出してしまったからいつかは部活動認定を目指すと戸村は言ってたけど、その前に俺達は卒業じゃないだろうか。


 そして、今日はいつもの90秒動画作りと新しい今後の展望があるとかで、本来は吹奏楽部でバチを握って叩きたいカニちゃんと戸村への好意から参加してる科学部後輩の安田ちゃん、衝立を貸した書道部部長のヨシコさんと戸村に引きずられた俺、平原健が同好会会員として集められているわけだ。


「皆様、まずは動画作りご参加ありがとうございます!我が同好会のアカウントは現在フォロワー数300人であります!パチパチここ拍手よ!もー食べてばかりいないで!そして、重大発表であります。えーますますの発展を目指してかの有名な動画投稿サイトへの進出を決めました!」 


「「「「へ?」」」」


撮影後、本日の作品を皆んなで摘んでいると寝耳に水だ。


「これ以上撮影増やすのか?あー俺吹部の合奏の時間だー、またねー」


「私、カエルの餌の時間が!」


「んー暗くなると墨汁が、」


ん?そそくさと他3名が消え、家庭科室には洗い物と俺と戸村が残された。




 








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