第56話 番外編 2つのパフェが意味するもの
「ごめん。パフェ、先に食べてて良かったのに。溶けてない?」
「写真撮り終えた所なの。まだ大丈夫。」
声をかけると笑顔に戻ってほっとした。蔵森さんの苺パフェと俺のチョコパフェがテーブルに鎮座していた。
パフェを食べ終えて、コーヒーを飲んで雑談をしていると、また戸村からメッセージが来ていた。それはかき氷と科学部の後輩達の写真で、楽しそうだ。
「あの。今日は何かあったんですか?」
顔をあげると蔵森さんが真剣な顔をしていた。
「ごめん、心配かけて。かき氷を戸村が、科学部に作りに行っていて、どこにかき氷機があるのかとか聞いてきただけだから。無事済んだみたいだし」
送られてきた写真を蔵森さんにも見せた。
「あっ、楽しそう。これ、理科室2ですね。なんだか懐かしい。」
そう言ってから蔵森さんはペコリと頭を下げた。
「ごめんなさい。私が付き合わせちゃって。本当はこっちに行くべきだったんですよね。」
あれ?なんか方向が。
「今日は蔵森さんと前から約束してたし、今度の行き先も決めるって」
ちょっと慌てた。蔵森さんがなんだかまた寂しそうになっている。
「ごめんなさい。なんだか私、ダメダメです。友達と私どっちが大事なの?とか聞くような人間にはなるまいと思ってたのに。なんか。」
「いや、断然、蔵森さんのが大事だから。だから今日は一緒にいるんだし。」
戸村なんかポイである。はじめからミュートにしておくべきだった。いや、違う。
「蔵森さん、さっきの写真、くれる?」
「さっき?」
「パフェの写真。」
次回は博物館を朝から堪能しよう、そんな話をして手を繋いで駅まで歩く。最初は大いに慌てた手繋ぎだが大分慣れてきた。隣を見ると蔵森さんもこっちを見上げて繋いだ手を見てニコッと微笑んでくれる。お互いの家の近くの駅まで一緒に電車に乗って帰る。そんな時間も愛おしい。戸村はさっきの2つ並んだパフェの写真と『デート中』の一言ですっかり大人しくなった。最初から知らせておくべきだったなとちょっと後悔した。
いや、この日に科学部と戸村達が平和にかき氷を食べただけでは無かったわけで。でもそれは別の話なわけで……。
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