第51話 番外編 初詣
大学生になって同じ方面に通っているとはいえ、お互い講義の時間が様々だ。慌ただしい朝は無理をしない事にして帰りを合わせるようにしている。だから朝、駅で
ここはA1高校に行くローカル線に乗り換える駅だ。3月まで着ていた制服が目に入る。3年生が高校の自習室へと元旦返上で勉強するために向かっているのだろうなと自分の受験期を思い出したりして奏音を待つ。高校生の時はバス通学であまりこの駅は利用しなかったけど、俺は一度だけ奏音をこの駅で見送った事がある。あの時の彼女とのとりとめもない会話も俺の中では大切な宝物だ。
五分もすると綺麗な白いコートをきた奏音が走ってきた。
「待たしちゃってごめんなさい。」
「たいして待ってないよ」
この時間に着くバスに乗ると言ってたからその前に着く電車に乗ってきただけだ。
「
「うーん。久しぶりにこの駅に来たかったというか、ここで待ち合わせしてみたかったというか。」
高校生の頃の夢のリベンジというか。でもお化粧をしてアクセサリーをつけてお洒落をして綺麗になった奏音と会えるというか付き合えるようになったというのも凄い幸せな事でしかもこれは、初詣に行くデートの待ち合わせだ。
「あ、また何か頭の中だけで沢山お喋りしてますね。」
小悪魔的な笑みを奏音は浮かべるとさっと俺の手を取って握り
「久しぶりにA1高校のセーラー服女子を見たかったとか?まだ私持ってますよ。今度着ましょうか?」
と俺を見上げる。それは観たいかも。って言ったらどうなるのだろう?それより
「手冷たいね。カイロ貸そうか?」
奏音の手の冷たさが気になった。俺の体温を奪う勢いだ。奏音と繋いでない方の手でポケットからカイロを出そうとすると奏音は
「ジャーン。こっちの手には着けてあります。」
とコートと同じく白い手袋をつけた右手を見せてきた。
「こっちは健さんに暖めてもらうために家に置いてきちゃいましたー。だから繋いでてくださいね。」
そしてニコニコと俺の手を引っ張って歩き出した。二の句を失ってオロオロとついていくばかりの俺を振り返って随分楽しそうだ。無事俺は初詣をこなせるんだろうか。
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