第52話 番外編 初詣をつける(蟹ちゃんと戸村くん)

「おい、戸村、本当にこの神社で合ってるんだろうな。」


新年早々蟹ちゃんに睨まれるとは。


「合ってるよ。人混み凄いから見つけるの無理じゃない?電車から一緒にすれば良かったじゃん。俺、さりげなく待ち合わせの時間を聞き出すの本当に苦労したんだから。」


「電車から一緒だとバレるじゃないか!」


「ここで見つけたってバレるかもじゃん。」


「こんだけ人いるから大丈夫さ。田舎の駅で会うのとはわけが違う。大体そのために、」


「私がいるから」


ヨシコまでいる。


「なんでヨシコ…」


「ヨシコが来たいと言ったから3人できたのだ。そうすれば、バレたとしても、あらー偶然ー。ね、ヨシコ。」


「ここのお札や絵馬の字が素敵なのよー。パワースポットだし。蟹が一緒に来たら買ってくれるっていうし。平原くんと蔵森さんカップルも観たいじゃん。」


そうですかー。思わずカクッと力がぬけて頭が下がる。


「来たぞ、隠れろ」


蟹ちゃんの声で駅の柱の影に隠れた。目の前を白い綺麗なコートを着た蔵森ちゃんと蔵森ちゃんに連行されるように手を引かれて歩くタケちゃんが通って行った。


「つけるぞ!」


蟹ちゃんの指示が入り3人で参拝客の波に乗る感じで2人の後をつけていった。


「これだけ混んでんだから肩を抱くとか腰を抱くとか。」


恋人同士の密着を願う蟹ちゃんに、


「意外と女子はそれ、歩きづらいのよー。でも恋人繋ぎしてんじゃん。」


話が合うヨシコ。


「てかヨシコ肩とか腰とか!歩いた事あんの?」


思わず聞くと、


「あら、やだー。ナイショ」


余裕の笑みを浮かべられてしまった。

 

「あれ、もしかして蟹ちゃんとヨシコって…。俺って邪魔?」


もしかしての可能性にびっくりしてると


「「私にも(俺にも)選ぶ権利くらいある!!」」


と血相を変えてハモられた。


「おーい。はぐれるよー」


と前を指差すと慌てて尾行に戻る2人はお似合いかもしれなかった。

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