第26話 戸村身体張る
それから事の次第を聞いた科学部部員が入れ替わり立ち替わり音楽室へ行き、かなりヨシコがイライラしていると戸村が楽しそうにしていた。おかげで科学部の方が進まない。書道部は午前中仕舞いだから科学部は各自弁当を挟んで仕切り直して午後会議を行うはめになった。
結局今日は蔵森さんと話すことはできなかったなと、昨日はまさしくラッキーデーってやつだったんだなと思いながら、夕方、戸村と理科室を閉めた。
「あのさ、書道部の奴らがタケちゃんは蔵森ちゃんのカレシだって言いだしてさー。あの噂まだ残ってたんだね。俺と蔵森ちゃんは否定しなかったんだけど一年の安田ちゃんがさ、ガチ否定しちゃって変な空気になっちゃったんだよね〜。さっきまで安田ちゃんいるから黙ってたけどさ。」
安田ちゃんとは安田美香と言って一年の生物班で、書道パフォーマンスを見たいと戸村にくっついていったのは知っていた。
「ガチ否定って?」
地味に傷つく。
「平原部長はずっと片想いしてる人がいるって有名なんですよ。彼女さんがいるはずないじゃ無いですかー。て。俺も、その片想いの相手が当の蔵森ちゃんだとは言えなくってさー。その片想いの相手はこの俺ですって身体張ってきたんだけど、正解だったかしらん?」
いつのまにか俺の片想いが後輩にバレているのも驚きだが、相手も知らないくせに大口をたたく安田さんにはさらに驚いた。いや、それより
「大丈夫か?男同士もウワサになる時代だぞ。」
「あ、ダメ?タケちゃんもその辺気にする方?安田ちゃんはやめてください気持ち悪い冗談になりませんとか言うし、ヨシコは山口さんに言いつけるぞ戸村の馬鹿とか言うし、本当にいろいろ失ってるのよ俺。」
俺も失った気がするが、
「はいはい。変な空気を水に流せたのか逆に油を注いだのか分からないけど、アイスタピオカでも
「蟹ちゃんにも何かお礼させたるー。」
戸村は蟹ちゃんへの八つ当たりSNSを送っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます