第27話 夏休み終わり
8月末から授業が始まった。そして体育の授業やこのロングホームルームも体育祭一色だ。
「タケちゃん、何に出る?」
「一年の時はバスケだったな。あと何がある?戸村はどうする?」
男子はバスケットボール、ソフトボール、フットサル、から一種目選択し、あとリレーと大縄跳びと綱引きと玉入れは男女混合で出場人数を満たせば良い事になっている。
「タケちゃん、バスケだったらドリブルはしちゃダメだよ。シュートは入るけどドリブルは壊滅的にダメだから。ソフトは?フットサルはどう?俺はソフト。」
「壊滅的…。ソフトは守備はなんとかなるけど、バットに球当たらないんだよね。フットサルは走ってるだけで終わっちゃう。」
「ソフトにしとこっか。あとは大縄跳びはどう?」
「昨年、メガネが飛んだ。コンタクト入れないと大縄跳びは無理かな。綱引き…。玉入れは身長的に女子より有利か?」
「タケちゃんコンタクト持ってるの?」
「1日使い捨てタイプの。作ってみたんだけど、面倒なんだ。」
高校になって視力低下が著しく裸眼で生活できなくなり体育もメガネ装着でこなしていた。が、昨年、メガネが飛んで壊れた時に母に体育の時はコンタクトにしなさいと作られた。しかしコンタクトを外すのが未だに苦手だ。メガネの方が楽で良い。
「タケちゃんのコンタクト。タケちゃんのコンタクト。イケる?メガネ男子はメガネ男子の魅力が。いや、イケる?」
戸村が謎の呪文みたいに呟いていたが、結局運動部でない男子は戦力外だからクラスの大意に沿って動くしかなく、俺はソフトボールと玉入れに名前が入れられていた。戸村はソフトボールと大縄跳び。戸村の出身小学校は大縄跳びガチ勢だったらしく、回すのも上手いよ〜と自慢してたからな。
それはそうと夏休みが明けてからあまり蔵森さんを見かけない。廊下を歩いているのとか見かけるのが楽しみだったのになんのすれ違いだろうか。また、最近のSNSのプロフィールが、
『ずるい私へのテルル 窒素 バリウム ツリウム。』
今回は元素記号に直してみるとTeNBaTm 天罰。
となっている。凄く気になる。何があったんだろう。
「なあ、戸村、最近蔵森さん何かあったのかな?」
そう戸村に聞く事しか出来なかった。
「ん?どうした?俺にはいつもの蔵森ちゃんだけどな。挨拶もするしー。」
「夏休み明けから、らしき後ろ姿を一回みかけたぐらいで、学校来てるのかなって。」
「あれ?もしかして、タケちゃん避けられてる?」
軽くからかったつもりだろう戸村の言葉が刺さった。そうか、俺は、避けられているのか。納得できる。
戸村はありゃりゃという顔をして何かいいかけたが、予鈴が鳴ったので席へ戻り、俺は雑然とする廊下へと視線を向けた。
避けられている。やっぱり今更だが、俺が気持ち悪くなったんだろうか。心当たりは大有りだ。
次の授業の地理の先生の姿を目にして思考をようやく切り替えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます