第25話 戸村ついていく

 書道部の開始が、9時から。科学部の集まりも9時からだ。今日は学校完全閉鎖前の確認と夏休み中の8月25日に開催される『小中学生科学体験』なる催しの打ち合わせが活動目的だ。やっぱり最初に音楽室に顔出して、いるぞアピールをして打ち合わせをしてその後また、顔出すかとぶつぶつ呟きながら8時半に理科室を開ける。忘れるといけないので55分にスマホのタイマーをセットしてパソコンを立ち上げる。


「タケちゃん。会いたかった。」


と戸村が現れた。 

 

「3日前に課外で会っただろ。」


と返せば


「つれない。冷たい。」


口を尖らせながら、戸村も自分用のパソコンを立ち上げる。


「あ、あと10分ほどしたら、俺音楽室行ってくる。今日、ちょいちょい音楽室に行くから抜けてる間頼むね。」


画面を眺めながら、声をかけると、


「はいはーい」

 

と返事をくれる。持つべきものは友人であり頼れる副部長だ。


「はい。なんで、音楽室?タケちゃん?」


あ、やっぱり俺が音楽室なんて聞き返しますよね。


「蟹ちゃんに頼まれた。書道部が墨汁撒かまかないように監視してって。」


昨日の出来事を、蔵森さんの部分は省いて(蔵森さんの名前を出すと戸村の関心がそっちに行ってしまいそうであえて)説明すると、


「俺ついてく。」


という。


「いや、副部長は25日の話まとめていて。」


「ヨシコの元にタケちゃんを1人で差し出せない。蟹ちゃんひどい。」


ヨシコ誰それ?あ、ポニテぽっちゃりヨシコ書道部部長。と心の中でつぶやいていると、


「大丈夫、物理と化学と生物のリーダー達にまとめてもらってあと頼めば大丈夫だから。

もう、来てるかも。来てなかったらSNS回すから。ちょっと待ってて。1人でいかないで。」


それからの行動が早い戸村に押されて気がつくと戸村連れで音楽室に向かっていた。


 音楽室はすでにビニールシートが敷かれており蔵森さんは筆を運ぶのを手伝っていた。目が合うと心なしか微笑んでくれたような。


「戸村でーす。吹奏楽部に頼まれました。」


戸村が元気良く声をあげる。頼まれたのは俺だけどね。俺はぺこりと頭を下げるだけにする。ヨシコの一瞥いちべつが戸村をすぎ俺に向かい何故か睨まにらまれた。隅の方に立つ俺と違って戸村はあちこち見て回って時折書道部を手伝う。さすが柔道部自否認マネージャー。(柔道部からは公認されてるが、受け入れると忙しくなるといって逃げているらしい。)気が済んだのか俺の元に戻ると、


「蔵森ちゃんいるじゃん。良かったじゃん。」


と肘でつついてくる。はいはいとうなづくと満足そうに戸村もうなづいた。

それから30分ほど練習をみて、


「抜き打ちで来ます。」


「来なくていいから」


応酬おうしゅうを戸村とヨシコさんがして俺は蔵森さんに向けてお辞儀をして一旦科学部に戻ることにした。












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