第20話 平原の整理
「蔵森さんと話をした。さすが文化祭。それなりの恩恵あり。感謝。てとこ?それだけで喜ぶとか大丈夫?タケちゃん。」
俺の心の声を全部代弁しながら、キレ気味の戸村がうるさい。現在廊下側の席になった俺は彼女の可愛い姿を見かける機会が増えて満足していた。それなりの俺なりの片想いの過ごし方がいたく戸村は気に入らないらしい。イベントが済むと静けさを取り戻したようでいて、終了後には確実にカップルが増える。新しく増えたカップルを見るにつけ戸村はイライラして俺にあたるようになった。
「俺はまだ幸せな方」
そう戸村に言い返してみる。あの冬の日、蔵森さんと伊藤を見て自分の淡い思いを諦めた。蔵森さんに告白するとか付き合うとかそんな未来を捨てた。多分回り道をしても結局あの二人の未来が繋がっているような気がしたからだ。
捨てたけど、アイドルを見るように、彼女を見たって罪にはならないはずだ。そしてゆるゆるとこの想いが消えるのを待てばいい。でも、きっと彼女とは、一緒に文集委員をしたしトラブルにちょっとだけ巻き込まれたし、山口さんや戸村のおかげで、きっと彼女は少しは俺のことを覚えていてくれる。だからきっと幸せな方だ。
ただ、あれから時々ミイラ男と彼女が話しているの見かけるようになった。そして自問自答する。彼女が伊藤ではない奴と付き合っても見守れるのかと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます