第13話 置物イケメン
それから戸村の情報活動が盛んになり、程なくして俺のもとに届いた話では蔵森さんはかなり嫌な女に仕上がっていた。
蔵森さんと伊藤はピアノのコンビを組んでいたが、方向性の違いからコンビを解消した。ピアノに縛られたくなくて陸上を始めた伊藤に一人ではコンクールに出場する能力が無い蔵森さんはコンビ復活とできれば付き合いたいとしつこく迫った。追い払いたくて伊藤は彼女を切らさないようにしている。それにヤキモチを焼いた蔵森さんは自分に好意を寄せている梅田を使って伊藤に嫌がらせをしたり委員が一緒になった俺を彼氏みたいに伊藤に見せつけたりしている。
「タケちゃん、残念だね。彼氏じゃなくて彼氏みたいになってるし、蔵森さんが好きなのは伊藤って話になってる。」
「いや、戸村、残念がる所がズレてる。それよりなんか蔵森さん嫌な女になってないか?」
今日は部活が暇な時で無しにして帰ろうかと戸村に持ちかけた所、逆に部室に連れ込まれてこの報告だった。
最近お気に入りの
「フォーカルジストニアは絶対秘密なんだろうね。なんかそんな感じ。伊藤とやら足早くてピアノ上手くてなんか顔もシュッとした感じで、話しやすいとかモテ要素たっぷりでさー」
なんかふくれっ面をしている。
「まあ、そういう奴っているよね。王子様的な。」
と相槌を打つと
「タケちゃんは平気なの?なんか伊藤がカッコ良い奴で、タケちゃんメッチャ小者扱いで」
と随分ふてくされた顔で言ってきた。
「いや、俺、しがない文化部男子だし」
言っててちょっと落ち込むが、女子に注目されることなど覚えもなく育ってきた。SNSを個人的にやり合った女子など蔵森さんしかいないし。それも委員会が同じだから許された世界である。
「タケちゃんはしがなくなんかない!数学班存続の危機を救ったのはタケちゃんの能力だし。背だって高いし、剣道で培った威圧感ある正しい姿勢も相まって物静かな置物イケメン枠だから!」
「置物?」
聞いたことのない枠である。剣道は中学まで近くの道場に週1で通ってたぐらいだ。高校は授業でちょっとするぐらいで、威圧感は心外だ。突っ込むとしまったーという顔を戸村がした。
「ググってやる」
と低い声で脅すと
「戸村造語なので、w○kiも把握してません。」
と目をそらす。
「黙って何もしなければイケメンってこと。だってタケちゃん女子と上手いこと話せないし走ると遅いし」
図星だ。が、売れ残りの置物が頭に浮かんでがっくりと席に座った。
兎にも角にも俺と噂になったって蔵森さんには少しも良いことなんかなくって俺は女の子がだまして付き合うような裏がなければ付き合いもしないなんか情け無い男子で、彼女に申し訳なかった。
☆ ☆ ☆
※
ググる。w○ki。察して下さい。
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