第2話 静かに悩む

 俺は悩んでいた。


 文集委員の終わりに各クラスに1つのメモリースティックと参考に渡された昨年度の文集等は俺が預かったままで、仕事を進めなければいけないのに彼女に話しかける事が出来ないからだ。数日1人静かに悩んだ挙句に仕方なく俺の親友の戸村に相談した。


「あの蔵森さんと文集委員の話しなきゃいけないんだけど、どうすれば良いと思う?」


戸村は高校で出来た友人だ。名前の順で席が前後な上に部活が同じ科学部で気があった。

戸村はチラッと蔵森さんをみやったあと、


「あれじゃー話しかけられないわな。てか蔵森さんってお前、厄介な子だって言うじゃないか」


気の毒そうに応えた。

蔵森さんにはクラスの男子2人が潰されていた。1人はずっと隣の席だったから(うちのクラスは3ヶ月に一回しか席替えをしない)すっかり慣れ親しんだ気で下の名前で呼んだら、


「気持ち悪いからやめて」


と言われ


「あの人は嫌いだから」


と公言されていた。もう1人はSNSを追加したら拒否され、軽くスルーされてしまったらしい。それからの彼女の態度が冷たいとかそいつはボヤいていて、その二件からクラスの男子たちは彼女に積極的には関わらないようにしていた。そして彼女の側に居るのは柔道部の女子と生徒会の女子と強者揃いでホント近寄れなかった。


「委員会の時の感触は噂ほど拒否が強い感じはしなかったんだけど」


ため息とともに吐き出すと、戸村は辺りを気にしながら


「優しそうな感じが罠だって山村と森下が男子SNSで回してたじゃん」


と言った。ちなみに山村が嫌いと言われた方で、森下がSNSを拒否られた方だ。そして男子SNSとはうちのクラスの男子のみで構成されたグループで女子には秘密の存在だ。うちのクラスは美女と野獣クラスとか女子に比べて残念な顔の男子が多いとか言われている。昼休みに他クラスの男子達がわざわざうちのクラスで女子を眺めながらご飯を食べるぐらいで、肩身の狭い俺たち男子は男子SNSで結束してうさを晴らしていた。


「うーん。どうしよう。」


頭抱えて机に突っ伏した俺に戸村がさらにトドメをさしてきた。


「しかも教室で蔵森さんと話なんかしたら、お前いろんな人に殺されるぞ」


思わず顔をあげて


「話しただけでそこまでいく?いろんな人って」


「俺以外の男子とあのボディーガード女子たち。だが、大丈夫だ。俺に案がある、」


したり顔で頷く戸村に俺はすがりつくことにしたのだった。

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