コバルトとヨウ素

柴チョコ雅

第1話 出会い

 冬の冷たい空気を吸って咳こみながら自覚した想いを告げる事は無いであろう、きっと。



 彼女との出会いは高校に入って同じクラスでたまたま同じ文集委員とやらになった、それだ。席は近くならないし、委員会活動も始まらないから話すこともなかった。時折俺の方が勝手にあの子と同じ委員会なんだよなって眺めてただけだ。

文化祭も体育祭も済んでの10月になって初めて委員会の集まりがあった。


 先に委員会に来てた俺に


「平原さん早くに来てたんですね。よろしくお願いします。」


と隣に座りながら彼女が言い、


「あー、よろしくね。」


と俺が返したのが初めての会話だった。


 周りを見渡すとどのクラスも男子同士か女子同士みたいな同性コンビで男女2人組は俺たちぐらいでなんかちょっと浮いていてこれは仲良い振りでもしないとやりきれない気がして思わず席を心持ち近づけて座り直してしまった。


 委員会の長や書記などの役は3年生を除き、クラス毎にくじ引きで決めると言われ、


「どうする?」


と聞くと彼女は


「私くじ運ないけど、それで良ければ行きます!」


なんてニコっとしながら言う。


「まじか!俺いくわ〜」


くじ運あるほうでは無いけど、無いって言い切る人にまかせるほどでもないから。当たらずに帰って彼女に 


「回避してきたから」


って言うと


「ありがとうございます!」


とぴょこんとお辞儀する。その動きで揺れるポニーテールが栗鼠の尻尾みたいで可愛かった。

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