第15話・競技大会
わたしとベルサザは、大公殿下の命で、競技大会の司会進行兼、裏方スタッフとなってくれている、宮殿の使用人の方々の指揮を任されていた。提案者直々に、皆を差配してくれた方が、スムーズに進行するだろうとの大公さまからのご意見があってのことだ。
わたしとしては前世の記憶から、血気盛んなキャピュレット家や、モンタギュー家の若者の無駄な情熱を、他のことに向けられたらどうかと言って、「競技大会」をお勧めしていた。大公さまは長年、両家の確執に頭を悩ませ続けていたので、取りあえずやってみて、それでも改善されないようなら、他の方法を考えようということになっていた。
それで大公さまから両家の当主達に「競技大会」への参加を呼びかけたら、両家とも快く参加を申し出てくれたそうだ。若者達の暴走には実は当主達も手を焼いていたようである。
わたしの祖父の代までは、お互いの家を憎しと思っていたらしいが、叔父達世代は、父のように態度が軟化している人が多いらしい。
現にキャピュレット家当主である叔父は、モンタギュー家とはこれ以上、衝突することを避けたいと思っている節があるのだけど、祖父と同じ世代の年寄り連中が、何だかんだと昔話を持ち出してきては、何も知らない若人達に、「モンタギュー家は敵だ」と、言い含めるものだから辟易していた。その影響を尤も強く受けたのがティボルトだったりもする。
この競技大会への参加も、その裏では年寄り連中が、「相手の家を負かしてやれ」と、若者をけしかけてのことらしい。
わたしとしては参加してもらうことに意義があるのであって、そこで互いの家を反目し合うだけではなく、競技を通して仲間達との団結と、相手チームへの関心を持ってもらえたならと思っている。
今すぐには両家の不仲の改善は無理だとしても、若者達には今一度、自分達が年寄り連中から一方的に与えられる情報を鵜呑みにして良いのか、この競技大会をきっかけに、考え直す機会となって欲しいと願っている。
今回競技大会なんて初めての試みなので、スタッフの皆さんも支度や用意にバタバタしていた。皆がわたしやベルサザに確認にやってくる。ベルサザも競技大会なんてよく知らないので、最終的にはわたしに聞くことになる。
「おい、ロザリー、この3色の太いリボンみたいなのってどうするんだ?」
「ハチマキよ。額に巻くの。赤色はモンタギュー家チーム、白色はキャピュレット家チーム、青色は騎士団チームの人達に渡してね」
「つまりこのハチマキってのを、額に巻くことで、その者がどのチームに属する者か分かるってことか?」
「さすが飲み込みの早いベルね。その通りよ。皆が一目見て分かるようにしているの」
ハチマキを使用人スタッフに渡した後、ベルが聞いてきた。そこへ別の使用人スタッフが報告に来た。
「ロザラインさま。用意が調いました」
「そう、じゃあ、始めましょう。まずは大公さまのご挨拶からね」
わたしがベルサザと共に宮殿前広場に姿を見せると、すでに額にハチマキをした3チームが出そろっていた。皆、今回が初めての競技大会ともあって緊張しているようだ。顔が引き締まって見えた。
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